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「ものづくりの愛おしさを同世代へ」 18歳のデザイナー 渡辺こころが挑む、産地の物語を伝える服作り

GAKU、ここのがっこう出身

Image by: FASHIONSNAP

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 きっかけは、編集部宛に届いた1通のメール。差出人は、18歳のデザイナー 渡辺こころ。「服が生み出す思いや物語を大切に、日本各地の産地や職人さんと共に服づくりを行っています」「ファッション業界が直面する環境、社会課題に向き合いながら、サステナビリティは素材や作り方だけでなく、伝え方を通しても表現できるのではと考えています」──自らの言葉で綴られた真摯な想いとその並外れた行動力に惹かれ、彼女に会うことにした。

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 14歳で“ポジティブな不登校”を選択し、オンラインの高校とクリエイションスクール「GAKU」や「ここのがっこう(coconogacco)」に通いながら独学で服作りを学ぶ彼女は、17歳で自身のブランド「アメ(Ame)」を設立。サステナブルなジーンズを作るために自ら岡山・児島の工場に飛び込み、現場で手を動かしながら服作りとその背景を学ぶその視点は、等身大の純粋さとまっすぐさに貫かれつつも、冷静で鋭く本質を突いてもいる。ピュアな行動力と想像力をもって模索し世に問いかける、若きデザイナーの挑戦とその背景を訊ねた。

■渡辺こころ(わたなべ こころ)
2007年生まれ、埼玉県出身。オンラインの学校と並行して10代のためのクリエイションの学び舎「GAKU」や「ここのがっこう(coconogacco)」などで写真やファッション、サステナビリティについて学ぶ。2025年に自身のブランド「アメ(Ame)」を設立。服が生み出す思いや物語を大切に、日本各地の産地や職人とともに服づくりを行っている。
Instagram:@ame_official_acc@nuigurumitokokoro

「自分じゃない気がして」 14歳で選んだ“ポジティブな不登校”

── 現在はオンラインの学校と並行して「GAKU」に通われているそうですね。まずは、現在に至るまでの経緯を教えてください。

 中学2年生の4月に不登校になったんです。でも、私の場合は一般的な不登校とは少し違って、もっとポジティブな理由でした。それで、自分に合う場所は絶対にどこかにあるはずだと思ってずっと調べている中で、GAKUを見つけて。中学校卒業後は通信制の高校に通っていたのですが、高校1年生でカナダへ留学し、帰国後「自分のやりたいこと」を模索していた時期にGAKUに通い始めました。

渡辺こころ

── 「ポジティブな理由の不登校」とは?

 幼いころから、母がやっている「フォークメイド(folk made)」という子ども服ブランドの仕事を手伝っていて、それが自分の中ですごく大きな影響を持っていました。学校よりもそちらの方に向く気持ちが大きかったんです。

 中学校に入ると制服や校則があり、学校にいるときの自分が自分じゃない気がして、違和感が大きくなってしまって。「大切にしている気持ちを失うくらいなら、早く大人のようになりたい」と思い、「新しいことをしよう」と学校に行かない決断をしました。

── その選択に対して、ご両親は応援してくれましたか?

 父は「自分のやりたいことをやれ」というタイプだったのですが、母は高校や大学に行ってほしいと望んでいたので、最初はだいぶ揉めましたね。2年くらいかけて理解してもらいました。

── 実際にGAKUに通い始めて、いかがでしたか?

 日常が大きく変わりました。一番最初は写真の授業を受けたのですが、それをきっかけに外に出るようになり、そこで出会ったクリエイティブで面白い発想を持った同世代の子たちにとても刺激を受けました。その後、サステナビリティとファッションについての授業を受けたことで、元々興味があった「サステナビリティ」というものがより自分の生活の中心になっていって。ファッションを学ぶならと、ここのがっこうのプライマリーコースにも半年間並行して通いました。

「私がさらに服を作ってはいけない」 葛藤の先に見つけた“伝える”という方法

── そして、2025年に17歳で自身のブランドを設立。かなり早いスタートですが、資金面や運営を含め、どのように一歩を踏み出したのでしょうか?

 私は元々、どこかに属するタイプの人間ではないと早い時期から自覚していたので、「やりたいことを形にするには若いうちから始めなければ」という焦りもありました。今はイタリアン・バールでのアルバイト収入と貯蓄をもとに、無理のない範囲で製作・活動を行っています。限られた資金の中で取り組んでいるからこそ、一つひとつの商品に丁寧に向き合うことができていると感じています。

「Ame」のファーストコレクション

Image by: Ame


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── 服作りを通して、どんなことを実現したいと考えていますか?

 アメでは、長く大切に着続けてもらうことを一番に考えて、ものづくりを行っています。ただ服を作るだけではなく、日本の産地や工場の方の手間や思いといった背景やストーリーを深く知った上で、人々に伝えられるデザイナーになりたいです。また服を作るだけでなく、完成した服が売られていく過程や、服になる前の原料からデザインしていくということも、すごく面白いなと思っています。

── 「産地や職人の背景も含めて伝えたい」と思うようになったのはなぜですか?

 環境問題やサステナビリティに関する情報を多く目にする中で、「私がさらにプラスして何かを作ってはいけないんじゃないか」という思いがありました。でも、日本でものづくりをしている方々の物語やその服に宿る思いを私がブランドを通して伝えていけるようになれば、一着の服を長く大切に着るきっかけを作れる。それが結果として、環境負荷を減らすだけでなく、産地が抱える職人さんの継承問題などをより広く知ってもらうことにも繋がるのではないかと考えたんです。

ブランド名の「Ame」には、「a(ひとつの)」、「many(たくさんの)」「each(それぞれの)」という意味が込められている。

岡山のデニム工場に直談判、自ら手を動かし学んだ職人の手間と物語

── 昨年12月には、岡山・児島の縫製工場 ナイスコーポレーションとのコラボレーションジーンズ「Ame Jeans」を発売しました。

 ジーンズを作りたいと思ったときに、まずは「国産ジーンズ発祥の地である岡山の児島だ」と。そして、環境に配慮したものづくりがしたくて調べていたら、B Corp認証を受けた縫製工場であるナイスコーポレーションさんが出てきました。ホームページを見た瞬間に「これだ」と思い連絡をしたら、工場見学に行かせてもらえることになって。そこで改めてお話をしたところ、すぐに井筒社長が「じゃあやりますか」と言ってくださったんです。小ロットにもかかわらず、私がやろうとしていることを面白がってくれて、製作が始まりました。

ナイスコーポレーションと製作した「Ame JEANS」(3万3000円)。インディゴとブラックの2色を展開。

── 製作するなかで印象的だったことは?

 アメはまだ小さくて知名度もないので、あまり価格が高いと手に取ってもらえないのではという不安がありました。それを相談した際、社長の弟さんが「実際に岡山に来て自分で作業をしたら、その分値段を下げられるよ」と提案してくださって。予算の相談にも親身に乗っていただき、昨年12月に岡山に行って、仕上げ工程の作業を一緒にやらせてもらいました。

 実際にパッチを縫ったりリベットを打ったりしてみると、まっすぐ縫うだけでも段差があってすごく難しい。自分で体験してはじめてわかる職人さんの手間や思いを感じることができましたし、目の前でジーンズが完成していく工程を見ることで、アイテムへの愛着がどんどん深まっていきました。

ナイスコーポレーションでの作業の様子

Image by: Ame

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── ものづくりの工程を実際に見て体験したことで、その背景への理解や愛着が生まれたんですね。

 デニムの染め工場の方からも、江戸時代の埋め立てから始まった児島の綿花栽培とデニム作りの歴史や、そこに流れるものづくりのDNAについて伺いました。こうした各産地の物語を服を通して伝えることができたら、自分が日本で生まれた意味にもつながるんじゃないかと感じています。

── 完成したジーンズのデザインのポイントや、こだわった点を教えてください。

 「母のブランドの服を着てくれている子どもたちが、大人になっても着られるようなものを作りたい」という思いから、若い世代にも好まれるデザインを目指しました。長く愛用してもらえることはもちろん、環境に優しい製造工程にもこだわっています。今回ジーンズを生産した倉敷市は、非常に厳しい基準で排水管理やろ過を行っている地域ですし、製作過程で出る残布は工場でリサイクルに回しました。パッチも一般的なレザーではなく、環境負荷の少ない紙パッチを採用し、焼印でブランドロゴを入れています。

フロントにはレーザー加工でブランドロゴのマークをあしらった。

洗濯もできる特殊な素材の紙パッチを採用。

── 他にはどんなアイテムを展開していますか?

 これは「テディハグカーディガン(Teddy Hug Cardigan)」という名前の、コットンナイロン素材の無縫製ニットです。一枚の生地を裁断して縫い合わせるのではなく、編みながら立体的に作っていくため、生地の無駄が出ないようになっています。縫い目がないので、チクチクしにくいのも特徴です。糸のふわふわ感を出すためにサンプルを何回か作って、とても気持ちのいい肌触りに仕上げました。

「Teddy Hug Cardigan」(2万3100円)

── このカーディガンを作ろうと思った理由は?

 ブランドのラインナップに羽織りものを加えたかったこともありますが、単純に私がニットとぬいぐるみがすごく好きで。テディベアを抱きしめているときのような包み込まれる感じを表現しました。

「同世代の若い人たちに、ものづくりの愛おしさを感じてほしい」

── 最初に編集部にお送りいただいたメールの中に、「サステナビリティは素材や作り方だけではなく、伝え方も大事だと思う」と書かれていたのが印象的でした。なぜそう思われたのでしょうか?

 最近は、「服に愛着を持つ」ということよりも、値段の安さやサイクルの速さがトレンドになっていると感じます。もちろん、それを求めている人の気持ちも分かりますし、それによって生まれる価値もあると思います。でも、最後に残るのはやっぱり愛着があるものだと思うし、早いサイクルではない服の作り方や考え方がもっと主流になってほしいなという気持ちもあります。

 もちろん、私も環境のためだけに服を作っているわけではありません。買い物をするとき、服を選ぶことはもちろん、店員さんと話す時間も、購買体験の一部だと思うんです。そういう瞬間を提供できたら、服の素晴らしさや、実際に手掛けている工場の職人さんたちのことももっと知ってもらえる。そういったことをずっと地道に続けていくことが、ゆくゆくは作り手の継承問題など、表面には見えていない課題を少しずつ変えていくことにつながるんじゃないかと考えています。

── 渡辺さんは、特にどんな人たちに届け、伝えたいと考えていますか? また、これまでの活動の中で実際に届いているという実感はありますか?

 届けたい対象はさまざまですが、その中でも特に若い世代の方々に届いてほしいという思いが強いです。若い方たちがアメの服を通して、ものづくりの愛おしさのようなものを感じてもらえたら嬉しいです。実感という点では、以前Ame Jeansについて発信した際、私と同世代の若い方たちが「岡山」という産地に興味を持ってくださったのが印象的でした。

 ただ、今はまだ活動規模が小さく、少量生産で一つひとつを大切に作り続けることを目指しているため、実際に届けられる範囲とのバランスは日々模索している部分です。アメは一般的なファッションブランドが行っているような、半期に1回のシーズンやセールといった仕組みとは異なる形で展開していることもあり、その中でお客さまに手に取っていただける機会をどう増やすかというのは、簡単ではない課題だと感じています。

── 現在、アメの商品はどのように販売していますか?

 今は自社ECサイトをメインに販売していますが、買う人にとってより愛着が生まれるのは“現場”だと思うので、今後は母のブランドの卸先さんを回って全国でポップアップをできたらと考えています。12月に京都のオルタナティブスペース「コーエン(koen)」でポップアップを開催した際も、植物や食などファッション以外の分野の方たちとつながることができ、大きな刺激を受けました。

── お話を伺っていると、渡辺さんにとって「服」は単なるファッションアイテム以上の役割を持っているように感じます。

 そうですね。アメも、これからずっと服のブランドとして認知されることになるかは分からないなと思っていて。私自身、写真もやりたいし、ダンスもやりたいし、GAKUのような教育も面白いなと思ったりと、ファッションにとどまらずいろいろなことに興味があります。だから、さまざまな文化を詰め込んでこのブランドで表現していきたいですし、“人の心を癒せるセラピー”のようなプロジェクトにしていけたらという思いもあります。

── 最後に、デザイナーやブランドとして、そして渡辺さん自身の今後の目標を教えてください。

 まずはアメを続けていきたいです。今回協力してくださった児島の方たちとつながれたのも、「服」という存在があったから。だから、今後も色々な素敵なご縁に巡り会えるように、服作りを頑張りたいです。そして、いつかは海外にも自分の服を届けたいなと思っています。

最終更新日:

folk made & Ame OPEN CREATION DAY
folk madeとAmeの制作過程を体験できる、人がつながる空間として展開するイベント。1階ではドリンクとクッキーを提供し、自由に過ごせるスペースを用意。2階では子どもたちがfolk madeの服を着用し、フィッティングモデルとして参加してもらうオープンシューティングを実施する。会場ではAmeの商品も販売。「Ame Jeans」は関東では初展開する。

日時:2026年5月10日(土)14:00〜17:00
場所:クリエイティブスタジオ「CONTRAST」
所在地:東京都渋谷区富ケ谷1丁目49-4-1F & B1F
入場料:子ども(U-12) 無料、大人 1000円(ドリンク&クッキー付き)

FASHIONSNAP 編集記者

佐々木エリカ

Erika Sasaki

埼玉県出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、国内大手アパレルメーカー、ケリング傘下ブランドのMDなどを経験した後、2023年にレコオーランドに入社。現在はウィメンズファッションをメインに担当。ファッションやカルチャーへの熱量と同様にジェンダーや社会問題にまつわるトピックにも関心があるため、その接点を見出し、思考や議論のきっかけとなるような発信をしていけたらと願っている。

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