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装う喜びを取り戻す──2027年春夏ウィメンズトレンド【キーワード・総括】

文・小湊千恵美

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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 2027年春夏ウィメンズの4大ファッションウィークは、主要メゾンにおけるクリエイティブディレクターの交代が一巡し、新体制の方向性が見えてくるシーズンとなった。映し出されたのは、時代とファッションの「今」を反映したクリエイションだ。日常着(リアルクローズ)の再定義、気候変動に適応する衣服の在り方、そしてファッション元来の役割である装飾性と個性の回復。ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリのランウェイから浮かび上がった潮流を、3つの視点から紐解く。

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1. 新時代の日常着

 世界的なインフレや消費の減速、混迷する国際情勢など、先行きの見えにくい時代を背景に、ファッションは改めて現実へと目を向けている。焦点が当たったのは、日々の暮らしに根ざした価値あるリアルクローズだ。しかし、それらは単に上質で"普通"な服ではない。一時のトレンドだった「クワイエット・ラグジュアリー」からの脱却を感じさせる、色や装飾、意外性のあるスタイリングを通じて個性を楽しむ服へと広がっている。

リアリズムへの関心

 「プラダ(PRADA)」は、自由と独立を象徴するアイテムとしてスカートに着目し、全ルックを通してその可能性を掘り下げた。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」はTシャツやジーンズに高度なクチュール技術を取り入れ、「ミュウミュウ(MIU MIU)」はクラシックとスポーツ要素を掛け合わせるなど、衣服の機能や着こなしの前提を組み替えた。「セリーヌ(CELINE)」は、日常に溶け込むシンプルなスタイルに極太のベルトなどの遊びを加えて提案。日常着を技術や美意識から捉え直すアプローチには、リアリズムへの強い関心が表れている。

PRADA

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BALENCIAGA

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CELINE

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MIU MIU

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着慣れた服への愛着

 「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」のテーマ「When royal life and everyday life become one(贅沢で優雅な生活と日常がひとつになるとき)」からも時代のムードが感じられ、大衆的なデニム素材と過剰な造形を対比させた。日常着を代表するジーンズの創造性豊かな表現は、今シーズンのトピックのひとつでもある。「ザ ロウ(THE ROW)」は上質なデイリーウェアにアンティーク調のレースやリボンを合わせた。多くのブランドがシワ加工やヴィンテージライクな素材、柄などを取り入れており、着慣れた服の時間の経過や愛着を感じさせる。

COMME des GARÇONS

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THE ROW

Image by: THE ROW

 装いと暮らしの土台を見つめ直し、着心地や動きやすさといった安心感とともに、見慣れた服の価値を再発見すること。今シーズン、多くのブランドが再定義したリアルクローズには、新しい時代への希望が託されているようだ。

2. 気候変動に応える、エアリーな軽さ

 2027年春夏は、ひときわ軽やかなシーズンとなった。今年、欧州を襲った記録的な熱波も記憶に新しく、気候変動によって世界の気温が上昇するなか、衣服はより一層、薄く軽やかに変容している。

空気をはらむ極薄素材

 「ディオール(Dior)」は、レースやシルクモスリン、オーガンザなど「フルー」のアトリエで用いられる素材に、「タイユール」の技術を用いて、空気をはらむ超軽量の仕立てを実現。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は身体の動きに着目し、極薄のシアー素材を構築的に組み立てることで未来の衣服を描いた。「エルメス(HERMÈS)」は「トランスペアレンシー」と「ライトネス」をキーワードに、シルクメッシュや透かし編みのニット、モジュール式の構造を取り入れ、涼やかでエレガントな装いを提案した。

Dior

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LOUIS VUITTON

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HERMÈS

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CHANEL

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 「シャネル(CHANEL)」は、素肌に寄り添うジャージーのボディウェアから、1年をかけて開発したという軽量で伸縮性のある新素材「スモッキング・ツイード」のスーツまで、身体を解放する自由さが息づいている。「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は、肌と布との「間」を探求。「バーバリー(BURBERRY)」はシグネチャーのトレンチコートを、刺繍を施したシアー素材で仕立てた。「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のドレスやスカートに用いたフリンジといった、動きのあるディテールも特徴だ。

ISSEY MIYAKE

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BURBERRY

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BOTTEGA VENETA

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ランジェリーと肌の関係

  シアー素材とも好相性のブラやブラトップが、さまざまな形で登場。「クロエ(Chloé)」はロマンティックなランジェリーをハーネスに再構成した。「フェンディ(FENDI)」は「身体」を基点としたコレクションで、テーラードからレースのブラを覗かせる。「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」の紐状の糸を手で織り身体を包むドレスなど、プリミティブな表現からは現代を生き抜く強さとフェミニニティを感じさせた。

Chloé

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FENDI

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Yohji Yamamoto

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3. ルールを脱ぎ捨て、装う喜びを取り戻す

 既存の着こなしのルールや枠組みを解体し、あえて不調和な要素を組み合わせる。今シーズンは、異なる色や柄、素材、テイストを重ねることで、ひとつのスタイルに収まらない多面的な個性を表現する提案が目立った。整然とまとめることよりも、直感に従う奔放さが、意外性と高揚感をもたらす。そこには、装う喜びと自己表現の自由を取り戻そうとする姿勢が表れている。

なりたい自分になれる

 ミラノで架空のブティックを舞台に多様な人物像を描いた「グッチ(GUCCI)」は、「なりたい自分になれる」という、ファッションへの欲望に立ち返った。ミニマリズムの厳格さをあえて崩した「ジル サンダー(JIL SANDER)」は、ひねりを効かせたテーラリングといった不完全さの中に美を見出している。

GUCCI

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JIL SANDER

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 「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は、グラマーという概念を現実の営みに重ねる。ルーズなプロポーションと、カジュアルウェアに施したビジュー装飾の意外性が、パーソナルな高揚感を呼び起こした。服を着ることを「身体的かつ感情的な体験」と捉え直した「ロエベ(LOEWE)」は、実用的な衣服をベースに、仕草や所作の痕跡を残す。

DRIES VAN NOTEN

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LOEWE

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境界を越える服

 「トム フォード(TOM FORD)」はメゾンに息づく「誘惑」を、さらに危険な領域へと押し進めたという。肌を見せながらも、他者の視線に身を委ねない官能性が光る。「アーデム(ERDEM)」は、ランジェリーとテーラード、実用性と装飾性といったあらゆる境界線を越えることで、危うくもドラマチックなスタイルを完成させた。

TOM FORD

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ERDEM

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ファッションの高揚感と豊かさへ

 2027年春夏コレクションに通底するのは、生きた身体と一人ひとりのアイデンティティを主役に据える視点だ。ルールに縛られないリアルクローズと軽やかな素材、豊かな装飾は、新鮮さと高揚感をもたらす。服が日常に寄り添い、装う喜びを生み出す力にこそ、ラグジュアリーファッションの豊かさがあることを改めて感じさせるシーズンとなった。

FOCUS: クリエイティブディレクター交代劇、再び?

 2025年に新体制でデビューしたマチュー・ブレイジーのシャネル、ジョナサン・アンダーソンのディオール、マイケル・ライダーのセリーヌ、ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスのロエベ、そしてジュリアン・クロスナーのドリス・ヴァン・ノッテン。各メゾンは1年を経て、ヘリテージと新たな感性が結合し、それぞれの方向性を築いている。グッチは今回、デムナによるヴィジョンを本格的に提示するシーズンとなった。

 一方、サンローランは就任10年を迎えたアンソニー・ヴァカレロがゴールドカラーのコレクションを発表し、その数日後に退任が発表となった。カルバン・クライン コレクションのヴェロニカ・レオーニ、そしてマックイーンのショーン・マクギアーも、コレクション発表後に退任が明らかに。さらに、バレンシアガに就任してからまだ1年余りのピエールパオロ・ピッチョーリや、クロエのシェミナ・カマリにも退任の噂が浮上しており、クリエイティブディレクターの去就は引き続き業界の関心を集めている。

SAINT LAURENT

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2027年春夏ウィメンズコレクション・トレンド特集

最終更新日:

文・小湊千恵美

Chiemi Kominato

FASHIONSNAP ファッションディレクター

山梨県出身。文化服装学院卒業後、アパレルデザイン会社で企画、生産、デザイナーのアシスタントを経験。出産を経て、育児中にウェブデザインを学びFASHIONSNAPに参加。レコオーランドの社員1人目となる。編集記者、編集長を経て、2018年よりラグジュアリー領域/海外コレクションを統括するファッションディレクターに就任。年間60日以上が出張で海外を飛び回る日々だが、気力と体力には自信あり。

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