フランチェスコ・ラガッツィ
Image by: FASHIONSNAP
イタリアで生まれアメリカで育ったフランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)によって、2015年に設立された「パーム・エンジェス(Palm Angels)」。故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)」をはじめ、「ヘロン・プレストン(HERON PRESTON)」や「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)」と共に、ニューガーズグループ(New Guards Group)の一員として“ラグジュアリー・ストリート”を黎明期から牽引してきたブランドだ。
ストリートに軸足を置きながらも、2017年からは地元ミラノにてランウェイ形式でコレクションを発表するようになり、2023-24年秋冬コレクションには念願のパリコレデビュー(ウィメンズシーズン)を飾った。そんな同シーズンのアイテムをいち早く展開するポップアップショップが、東京・銀座の複合施設「ギンザシックス(GINZA SIX)」にオープンするにあたり、フランチェスコ・ラガッツィが1年ぶりに来日。同ポップアップでお披露目となったF1チームとのコラボの裏側から、パリコレデビューの意図や“ラグジュアリー・ストリート”の未来、収束するスニーカーブームまで、幅広く語ってもらった。(文:Riku Ogawa)
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ーまずは、今回のポップアップで展開しているアイテムについてお伺いできればと思います。
最新の2023-24年秋冬コレクションを代表するモノグラムのアイテムを中心に、AI技術を駆使したプリントTシャツやパンツ、ブランドイニシャルの“PA”の“A”を天地逆転させた新ロゴを落とし込んだトップス、あとはアイコニックなパームツリーのデザインを用いたポップアップ限定のアイテムを数多くそろえている。それに、フォーミュラ1(F1)にインスパイアされたレーシングコレクションでは、「マネーグラム・ハースF1チーム」というチームとコラボしているね。
ー“A”を天地逆転させたロゴが目を引きますが、今回のためだけのデザインか、それとも今後ブランドロゴに置き換わるものでしょうか?
ブランドロゴにはならないと思うけど、これからも登場するはずだね。イニシャルという分かりやすい観点だけでなく、逆さになっていることが1つの物事を違う角度から捉えるブランドの本質を表しているようで気に入っているんだ。
ー「マネーグラム・ハースF1チーム」とのコラボについて触れる前に、そもそもF1とは繋がりがあったのでしょうか?
小さい頃から好きで、よく現地観戦もしていたよ。なんなら2日前にも観に行ったし、今月には日本では鈴鹿サーキットがあるよね。ブランドとしてスポーツチームとコラボするのは「ハースF1」が初めてで、光栄だよ。
「マネーグラム・ハースF1チーム」とのコラボアイテム
Image by: FASHIONSNAP
ーでは、数あるチームの中から「ハースF1」とのコラボに至った経緯を教えてください。
俺は小さい頃から余暇をアメリカで過ごしてきたこともあって、イタリア人だけど昔からアメリカのカルチャーに影響を受けてきた。だから、「パーム・エンジェルス」はイタリアのブランドだけど、アメリカとイタリアのカルチャーの見識を組み合わせたものが反映されている。一方「ハースF1」も、アメリカのチームだけど「フェラーリ(Ferrari)」が技術パートナーで、イタリアの魂が宿っている。このように、“アメリカ×イタリア”が両者の共通言語だったんだ。
さらに、「ハースF1」は設立から7年と若いチームなのに、「メルセデスAMG F1」をはじめとする歴史ある強豪と競い合っている。「パーム・エンジェルス」も立ち上げから8年とシーンでは新人だけど、大きなブランドや組織と鎬を削っている。この置かれている境遇にも近いものを感じたのさ。
「ハースF1」とのコラボアイテム
Image by: Palm Angels
ースポーツチームとのコラボが初めてとのことですが、未経験がゆえに苦慮した点などはありましたか?
いつもと違う顧客やファッションとは全く別の世界と接することは分かっていたことだし、特にはないかな。とにかく、「パーム・エンジェルス」のこれまでの顧客だけに刺さるものではなく、F1が好きな人には「パーム・エンジェルス」を通してファッションを好きになってもらい、ファッションが好きな人にはF1の魅力が伝わればいいと思って製作したよ。
ーポップアップでも取り扱っている2023-24年秋冬コレクションは、発表の場を拠点のミラノからパリに変更していましたが、この意図は?
パリに「パーム・エンジェルス」の店舗をオープンしたのと、結局ファッションの中心地だからさ。でも何より大事なのは、ミラノ生まれの我々がパリという異国の地で発表するという挑戦だ。どこでショーを開催するかだけでも、ブランドの態度や姿勢は違ってくるからね。それに、コレクションの内容もパリに住む人々のライフスタイルと、ブランドの核をミックスしたようなものを意識した。発表まで正直ストレスもあったけど、いつも前進するためには茨の道を選ぶべきだと思っているから、ブランド、会社、自分にとって大きなステップアップになったと感じているよ。
ー少し話の間口を広げると、ニューガーズグループ(New Guards Group)の立ち上げ当初(2015年)から同社を代表するブランドとして活躍されてきましたが、これまでを振り返るといかがですか?
ニューガーズグループは、新しいブランドや才能を育てるインキュベーターとしての役割に優れていて、自分自身だけが持つ色や物語に忠実となってブランドを作り上げていくことが重要とされている。だからこそ、ヴァージルは「オフ-ホワイト」で、僕は「パーム・エンジェルス」でうまいこと成功を収めることができたんだと思うよ。
ー「パーム・エンジェルス」は、設立当初から“ラグジュアリー・ストリート”にカテゴライズされてきましたが、その立ち位置を狙っていたのでしょうか?
そうだね、最初から狙っていたよ。
ー“ラグジュアリー・ストリート”という概念やワードは、日本では「パーム・エンジェルス」や「オフーホワイト」の存在から広く知られるようになったのですが、アメリカやイタリアではいかがでしたか?
概念自体はずっと前から存在していたんじゃないかな。というのも、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)と昔から交流があるんだけど、彼は長年“ラグジュアリー・ストリート”を体現する人物だったと思うし、俺は「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」はそういったブランドのひとつだと考えていた。いま彼が「ルイ・ヴィトン」を率いるデザイナーになって成功しているのは、俺から見たら必然だよ。
ー2010年代のファッションシーンを振り返ると、“ラグジュアリー・ストリート”が大きなムーブメントでしたが、現在は一過性のスタイルから定番として定着したと思います。渦中の人物として、これからの未来をどう予測しますか?
ファレルの「ルイ・ヴィトン」が、“ラグジュアリー・ストリート”の未来そのものに近いよ。新しい顧客を得るだけではなく、以前からの顧客にも継続してファンでいてもらえるように進化するのが大切。そして、常に時代は進み、ファッションは好みやトレンドが目まぐるしく変わり、テレビや音楽といったカルチャーも変化する中で、最も重要なことは情報をインプットすること。それをブランドに落とし込みアップデートさせることができれば、“ラグジュアリー・ストリート”は生き続けるんじゃないかな。
ー“ラグジュアリーブランドがストリートスタイルの服を模範すること”に対しては、どういった印象を持っていますか?
“ラグジュアリー・ストリート”がトレンドになる以前のラグジュアリーブランドは、ロゴが大きく乗ったアイテムなんてほとんど販売していなかったし、今じゃTシャツやスニーカーまで定番でそろえるようになった。これは、単に売り上げのためだ。情報としてストリートを仕入れたブランドと、リアルなストリートで生きてきたブランドでは、根本が違うと言いたいね。
ースニーカーといえば、日本では今夏急速にブームが収束したと話題になっています。
どこもそうだよ。レアスニーカーをなんとか手に入れようとする盛り上がりなんて、数年前からすっかり落ち着いている。まぁ、ブームが収束したというよりも、選択肢が増えたのかもしれない。みんなが同じ情報を基に動くことに飽きて、それぞれが違う情報を追うようになったんだと思う。俺は街ゆく人の足元を眺めるのが好きなんだけど、ここ銀座でもみんなスニーカーは履いているものの、レアモデルを履いている人は全然見かけない。もちろんスニーカー自体がなくなることはないけれど、「ナイキ(Nike)」と「アディダス(adidas)」は販売量を減らしているし、大勢の人が有名ではないブランドでも買うようになったことが大きいはず。
ー最後に、今後「パーム・エンジェルス」が控えているコラボや、展望などがあればお願いします。
これからも「モンクレール(MONCLER)」との協業は継続していくし、新作を11月に発売するよ。あとは、アクセサリーとウィメンズにはまだポテンシャルがあると感じていて、これからもっと力を入れていく予定さ。
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