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ヴァカレロが10年の集大成で描いた「サンローラン」の黄金時代

文・大杉真心

Image by: SAINT LAUREN

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 エッフェル塔がゴールドにきらめく中で発表された「サンローラン(SAINT LAURENT)」が2027年夏ウィメンズコレクション。クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)の就任10周年と、ブランドを象徴するタキシードルック「ル・スモーキング」の誕生60周年が重なる節目。全59ルックのうち49ルックを全身ゴールド、残る10ルックをオールブラックで構成した。現時点でブランドからの公式発表はないが、一部メディアではヴァカレロの退任説が飛び交う中で迎えた節目のショーとなり、大きな注目を集めた。

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ゴールドで照らすメゾンの歴史

 エッフェル塔を望むトロカデロ噴水(Fontaine du Trocadéro)には、巨大なゴールドのシャンデリアが宙に浮かぶように吊るされ、夜の闇を幻想的に照らし出した。ゲストには黒またはダークトーンのドレスコードが設けられ、客席は黒一色に染まった。6月に発表された2027年春夏メンズコレクションは、全身をゴールドで彩ったラスト3ルックで幕を閉じており、今季はその伏線を回収するかのように、コレクション全体をゴールドで包み込んだ。

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 ヴァカレロはショーノートで、「ゴールドほど光を放ち、そして光を映し出すものはない」と記し、「光は、手にすることのできないものだと知っているからこそ、いっそう鮮やかに輝く。時に、残るものよりも、過ぎ去っていくもののほうが多くの光を残す」と綴った。ゴールドは、ムッシュ イヴ・サンローラン自身が愛した色でもある。「私はゴールドが好き。魔法のような色だから」「女性を映し出すとき、それは太陽の色になる」と語っていたように、メゾンにとって長い歴史を持つ象徴的な色だ。

”反復”の強さ

 ヴァカレロが得意とするのが、同じ要素を繰り返すことで印象を強める“反復”の手法だ。これまでは、パワーショルダーのジャケットやペンシルスカートなど、限られたシルエットを何ルックにもわたって繰り返し、ブランドイメージを鮮烈に刻んできた。今回は、反復する対象をシルエットではなく、ゴールドという一つの色へと置き換えた。

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 ひと口にゴールドといっても、その色味は一色ではない。深みのあるゴールド、ビザンチン・ゴールド、淡いゴールド、マットなゴールド、スモーキーなゴールドまで、少しずつ異なる色調が重なり合う。そこに素材や質感、輝きの変化が加わることで、サハリエンヌ(サファリルック)やトレンチコート、ブルゾンといったサンローランを象徴するワードローブに、新たな表情を与えている。

ゴールドの日常着

 序盤を飾ったのは、ゴールドのコットンやトワルを用いたデイウェアだ。メタリック加工のコットンや、シワ加工を施したトワルなどで、パーカやブルゾン、ベルト付きのサファリジャケット、トレンチを仕立てた。スリットスカートやカーゴスカートを合わせ、ミリタリーやスポーツウェアの要素を織り交ぜている。

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 首元には、アブサン、アンバー、コニャック、サフラン、ルビーなど、色の異なるシルクモスリンのラヴァリエールが映え、ゴールド一色のスタイリングにアクセントになった。重厚感のある見た目に反して、素材は薄く軽やか。ウエストにゴムを用いるなど、現代的な着心地への配慮も込められている。

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重なり合うゴールドの質感

 中盤に入ると、ゴールドは素材によって表情を変えていく。真珠のような光沢を持つメタル素材には、クロコダイルやパイソンを思わせるプリーツを施し、キャミソールやボディスーツ、ラップスカートへ。淡いゴールドのギピュールレースにはスパンコールを重ね、金箔を施したシリコンではブルゾンやトレンチ、セットアップを仕立てた。さらにヒョウ柄のラメで仕立てたサハリエンヌドレスやブルゾンが、ワイルドな色気を感じさせる。

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 後半は、ブロケードやジャカードを用いた装飾的なルックが続く。ビザンチン調の色彩や花刺しゅう、ジュエルをあしらったガロンを重ね、オフィサーカラーのコートやボディスーツ、ポロ、ドレスなどを華やかに彩る。プリーツ、金箔、刺しゅうと、ゴールドの表現は次第に密度を増していった。

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ラストを飾るスモーキングの黒

 ショー終盤、ゴールドは一転してブラックへと移り変わる。60周年を迎えた「ル・スモーキング」を想起させる、ジュエルボタンとタフタのリボンをあしらったブラックベルベットのパーカやブルゾンのセットアップに続き、軽やかなブラックオーガンザのドレープドレスが登場した。

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 アシンメトリーなシルエットや、大胆に背中を開けたデザイン、ストールを配したスタイルなど、自由な構築性を備えたドレスには、ヴァカレロのベルギーのルーツが投影されているという。躍動感あふれる黒のルックが、ショーのフィナーレを飾った。

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 興味深いのは、「ル・スモーキング」60周年の節目でありながら、その象徴である黒のパンツスーツをそのまま登場させなかったことだ。ブラックベルベットのパーカやブルゾン、スカートへと置き換えながら、スモーキングが築いた“黒”のコードを現代のワードローブへと引き継いだ。さらに、ショーが全59ルックで構成されていたことにも想像が膨らむ。黒やダークトーンをまとった観客までをひとつの演出と捉えるなら、ヴァカレロは彼らを"60番目のルック"として数えたのではないか。公式に語られた解釈ではないが、「ル・スモーキング」60周年という節目を思うと、そんな読み方もしたくなる。

ゴールドアクセサリーと蛇のヒール

 アクセサリーにもゴールドへのこだわりが貫かれた。宝石をあしらったフィリグリー(金銀線細工)のイヤリングや、ゴールドプレートとスネークレザーを組み合わせた「ドヴィマ」、うねる蛇をかたどったヒールなどが登場。ブランドらしい官能美を表現しながら、彫刻のような存在感を放った。

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 ランウェイには登場しなかったが、翌日の展示会には、アルミ缶を思わせる遊び心のあるバッグや、2002年に誕生したアイコンバッグ「モンバサ」のホーンハンドルをゴールドに置き換えたモデルなども並んでいた。

ファッション史に刻まれる集大成

 創業者イヴ・サンローランが築き、メゾンが長年打ち出してきたスタイルの強さと、そのレガシーを現代的な感覚で輝かせるヴァカレロの手腕を改めて実感するショーだった。就任から10年の集大成ともいえる今回のコレクションは、これがヴァカレロにとって最後のショーとなるか否かにかかわらず、ファッション史に残るショーとして長く語り継がれていくだろう。

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SAINT LAURENT 27年春夏ウィメンズ

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SAINT LAURENT -Women's- 2027年春夏コレクション

2027 SPRING SUMMERファッションショー

最終更新日:

文・大杉真心

Mami Osugi

ファッションジャーナリスト

文化女子大学(現文化学園大学)でファッションジャーナリズムを専攻、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学ぶ。「WWD JAPAN」記者として海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当。2019年、フェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家を取材。2021年8月に独立後、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。2022年から文化学園大学と文化服装学院の非常勤講師を務める。

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