服は、時代を越えて一人の女性の人生を語る——マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)が手掛けた「シャネル(CHANEL)」の2027年春夏コレクションは、創設者ガブリエル・シャネルの生涯と重ね、多様なアイデンティティを3つの章で描き出した。ファッションを通じてガブリエルが追い求めた自由の精神が、革新的な素材やアトリエのサヴォアフェールによって蘇る。そしてショー会場の演出としてグラン・パレに浮かんだ95羽の鳥たちが象徴するように、未来へ向かって羽ばたいた。
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「かつて子どもだった頃の私は、今も私とともにいます。私は幼い自分が思い描いたことを成し遂げ、美意識に応えてきました。私の厳格な基準は、その頃の自分自身から受け継いだものです。そして、私が喜ばせることができたのもまた、ほかならぬその存在なのです。これほど私に近い存在はいません。幼い私は、今の私によってすべてを得ており、私もまた、自分の時代に何かをもたらすことができたのは、あの頃の自分のおかげだと思っています」——ガブリエル・シャネル
「コインに裏と表があるように、女性は異なるアプローチでその時々の自身を表現しているのではないでしょうか。このアプローチは、シュルレアリスムの表現形態である「優美な屍骸(しかばね)」にもなぞらえられ、さまざまなアイデンティティが連鎖されていきます。ひとりの女性の内に秘められた多様な女性像が、それぞれの自己を表現しているように感じられます。今回のコレクションは、ガブリエルという一人の女性が、やがてシャネルとなっていく物語です」——マチュー・ブレイジー

デビューから3シーズン目 対話が続く
マチューがシャネルを手掛けて3シーズン目となるコレクションのタイトルは「対話―Part Three―ひとつの存在に宿る異なる表情」。対話は、マチューのファーストシーズンから続いているテーマだ。今シーズン着目したのは、一人の女性の中にある複数のアイデンティティ。それらが時代とともに変化し響き合う姿を、過去・現在・未来の三章で描いた。若き日のガブリエルがシャネル・ウーマンとなっていく物語を、スタイルの変遷に重ねている。





第一章:コルセットを自由な装いに
第一章は、デザイナーとなる前のガブリエルに焦点を当てた。コルセットや大きなスカートが女性の身体を拘束していた時代を背景に、コルセットを思わせるラインやペプラム、ひだ飾りを現代の服に取り込んだ。しかしファーストルックのジャージー素材のドレスのように、肌に吸い付くほどのしなやかさで、身体を締め付けない構造が特徴。コルセット姿でジャケットのフロントを開けて着るなど、既存のルールを崩して着ていたガブリエルになぞらえたルックも。過去のシルエットを自由な装いへと読み替えた。






第二章:男性服を着ていたガブリエルの姿
第二章では、ガブリエルが自身のスタイルを確立していく過程を、テーラリングやマスキュリンなアイテム、ドロップウエストのドレスなどを通して表現。構築的なパターン、断ち切りのディテール、レイヤードの組み合わせによって、シルエットが変化していく。複数の服を重ねたように見える一着のドレスといった、トロンプルイユの仕掛けも。



シャツは今シーズンも、「シャルべ(CHARVET)」とコラボレーション。ショート丈のボザムシャツは、メンズライクなセットアップに合わせた。


第三章:革新的なテキスタイルと遊び心
第三章は、メゾンのコードを未来へとつなぐ。ガブリエルが生み出したノーカラージャケットのポケットやボタン、ブレードといったデザインを引き継ぎながら、1年をかけて開発したという軽量で伸縮性のある新素材、スモッキング・ツイードに置き換えた。構築的な見た目と、身体の動きを妨げない着心地を両立させている。







またジャケットの裏地には、ガブリエルやマチューなどを模したトランプカードの刺繍を施すなど、秘められた遊び心を感じさせる。
歴史的なバッグから最新の3Dプリントまで
バッグやシューズ、ジュエリーにも、過去と未来を結ぶ意匠が見て取れた。ショーのファーストルックとラストルックは同一モデルで、いずれも実際にガブリエルが所有していた「2.55」バッグを持って登場し、今回のコンセプトを象徴。また「2.55」バッグはさまざまな素材とデザインに進化し、第三章では最先端の3Dプリント素材に置き換わった。





鳥や空がモチーフとなり、ボタンや刺繍といったディテールのほか、雲や鳥かご型のミノディエールに。シューズにもふんだんに刺繍が施された。
自由の精神、女性たちの未来へ
マチューのデビューから3シーズンにわたり続けてきた「対話」というテーマは今季、さらに円熟して深まった。ラストで再び原点へと戻るショーの構成は、二人の対話が過去と現在を結び、さらに先へと続いていくことを示す。歴史の重みを引き受けながらも、一層軽やかに、新しいシャネル像を形作った。ガブリエルが生涯をかけて追い求めた自由は、マチューの応答を通じて、今とこれからを生きる女性たちの装いへと、確かに引き継がれている。
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