
TOYOTAやNTTドコモ、ZOZOといった日本を代表するナショナルクライアントのプロジェクトからアーティストのプロデュース、さらにはパク・ソジュン(Park Seo-Jun)と共同会社設立によるウイスキープロジェクトまで。多岐にわたる事業展開で、自らを「エンタメ総合商社」と標榜する企業 スターベース(STARBASE)。一般的な広告代理店とは一線を画し、グローバルなエンターテインメント・カルチャーを活用して「面白い」を創り出し、枠にとらわれない新たなビジネスを生み出している。そんな同社の日髙良太郎CEOに、スターベースの成り立ちから、独自のエンタメマーケティングの哲学、そしてグローバルを見据えた今後の野望までを訊いた。
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日髙良太郎
1980年宮崎県生まれ。渋谷のレコード店「VIEWレコード」に勤務したのち、2007年に独立。音楽制作やアグリゲーションを手掛ける「onepeace」を設立し、NujabesやJustin Bieber、BTSをはじめとするトップアーティストの楽曲制作に携わる。2017年には「onepeace」からエンターテインメント事業を分社化し、「STARBASE」を始動。菅田将暉やディズニー、パラリンピック開会式などの音楽企画・制作に加え、クリエイティブディレクターとして、TOYOTAやNTTドコモなどの企業のブランディング等、様々なエンタメプロジェクトを手掛けてきた。現在は、The Weekndやパク・ソジュンらとのコンテンツIPや事業開発等、グローバルマーケットに向けて、エンターテインメント領域を横断したプロジェクトを多数展開している。
STARBASE
エンターテインメントを活用した企業ブランディングやライブイベント制作、音楽・映像コンテンツの制作・配信を手がけるエンタメ総合商社。「オープンイノベーション型共創」により、国内外の企業やパートナーと共に、「楽しい」を価値に変える新規事業やブランド戦略を創出している。
エンタメ総合商社スターベースとは?
──スターベースは事業が多岐にわたり、「結局、何屋さんなのだろう?」と思う人も多いと思います。まずは、スターベースとは何者なのか教えてください。
元々、インディーの音楽制作から始まりました。インディーはメジャーレーベルとは違い、ドラマの主題歌といったタイアップで曲を売るチャンスがなかなか巡ってきません。そのような環境下で「どうやって音楽を届けるか」を考え抜いた結果、ファッションやアートと組み合わせるアプローチを取るようになりました。インディーだからこそ生まれたこの工夫が、現在の弊社の基盤である「ミックスカルチャー」へと繋がっています。
──そこから現在の「エンタメ総合商社」という立ち位置には、どのように行き着いたのでしょうか?
エンタメは、本質的には「人が楽しむ」ことだと考えています。そうすると自然と人が集まってきて、そこにタッチポイントが生まれる。僕らは音楽を作って音楽マーケットの中だけでマネタイズするのではなく、そのエンタメが持つ人が集まるという特性を、広告や商品開発、ファンダム作りといった別のジャンルで使えば、新しいビジネスになるんじゃないかと考えたんです。
既存の広告代理店や大手レコード会社にはない独自の立ち位置で、エンターテインメントを扱うプロフェッショナルとして、エンタメを活用したビジネスを創出する際の「ハブ」でありたい。私たちのそのヴィジョンと事業領域を体現する言葉として、「エンタメ総合商社」という概念に行き着きました。

Image by: FASHIONSNAP
──既存の広告代理店とは、決定的に何が違うと考えていますか?
広告代理店がやっていることを「広告マーケティング」、自分たちがやっていることを「エンタメマーケティング」と定義づけています。代理店はクライアントから予算を預かり、タダで配るものや無料で来てもらうイベントを作ってきましたよね。でも僕らは元々、自分たちで手金を出してライブを作ったり、音楽に課金してもらったりと、常にお客さんにお金を払っていただくマネタイズを前提にコンテンツを作ってきました。そこが根本的な違いだと考えています。エンターテインメントとは、対価を払ってでも手に入れたいと思われる価値がなければ、無償で提供したところで誰からも求められませんから。
──作るコンテンツの定義が根底から違うんですね。
そうですね。だから我々は、クライアントの担当者が喜ぶものを作るのではなく、クライアントが届けたい先の人たちが喜ぶものを狙って作ります。クライアントのメディア枠を売るためではなく、本当にファンが熱狂するものを作れるかが大きな違いだと思います。KPIについても、従来の広告的なKPIに沿ってコンテンツを作ろうとすると、どうしても中身が歪んでしまうことがあります。だから僕らは事前に決まりきったKPIを設定しないことが多い。写真家の小浪次郎さんにお願いした、リニア中央新幹線の開業に向けて始動したプロモーション「LINEAN PROJECT」のように、SNSの数字などを一つの指標として定めることはありますが、それも、鉄道ファンを巻き込んだファンコミュニティを作り上げるため、という本質的な目的に沿うことを大前提としています。
──トップアーティストとのリレーションは、どのように築いているのですか?
無理にコネクションを作りにいくことはほとんどなく、自然な流れでオーガニックに繋がっていくことが多いですね。例えば、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)がファイナルファンタジーでおなじみの世界的アーティスト天野喜孝さんのファンでもあったことから、ザ・ウィークエンドの物語性と、天野喜孝の幻想的な世界観が融合したら面白いんじゃないかと思い、かねてより親交のあった天野さんに相談しました。そして生まれたのが、9月11日に発売した日本独自企画盤「AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION」の4作品。すべての特別アートワークを天野さんに手掛けてもらいました。
クリエイティブの源泉は「感受性」と「一次情報」
──人々が本当に面白いと思う“ゼロイチ”を生み出すために、組織として大切にしていることはありますか?
現在、子会社も入れて60人ほどのスタッフがいますが、プロジェクトは基本的にセッションで作ります。クリエイティブディレクターから出ることもあれば、マーケティングの担当からアイデアが出ることもある。みんなでガヤガヤと話し合いながらパッケージにしていくスキームは、昔、洋楽制作でライターやプロデューサーが集まってセッションで作っていたスタイルがベースになっています。
また、インプットの質も重視していて、最近はクリエイティブチームに1週間ほどヨーロッパ(コペンハーゲンやアムステルダムなど)に行ってもらいました。それと言うのも、今韓国で流行っているものにも、必ず元ネタがあるんです。例えば、韓国で大流行して数百億円でバイアウトされたベーカリーショップも、実はロンドンの街中にあったお店のデコレーションが元ネタだったりします。表面的な流行をチェイスするのではなく、元ネタである一次情報に触れる方がクリエイティブのアイデアは格段に上がります。それに、日本はマーケットも人口も大きい。我々が東京から直接仕掛けるべきだと考えています。
あと、ものづくりにおいて僕がよく言うのは「感性より感受性を大事にしてほしい」ということです。自分が何を感じるかではなく、人が何を感じているかを感じ取れるか。誰かが喜ぶものを狙って作れなければ、ビジネスにはなりません。

Image by: FASHIONSNAP
──地方創生や、日本のローカルな資産を活かしたプロジェクトも手掛けられていますね。
大前提として、我々は「エンタメを使って外貨を稼ぐ」というミッションを掲げています。国内でお金を回しているだけでは、国は豊かになりませんからね。日本各地には、グローバル基準で見ても非常にクオリティが高いのに、まだまだ過小評価されているものがたくさんあります。その代表例が、宮崎県の「百年の孤独」で知られる黒木本店の尾鈴山蒸留所と、韓国俳優 パク・ソジュンさんを掛け合わせたウイスキープロジェクトです。世界的スターである彼ですが、元々日本のウイスキーが好きで、尾鈴山蒸留所のクオリティに惚れ込んでくれました。この組み合わせなら絶対に世界で戦えるし、地方に産業や雇用も生み出せると確信して仕掛けた結果、シリアルナンバー入りの1万本限定クラフトブレンデッドウイスキー「26 Twenty-Six」は即時完売という大きな反響を呼びました。
ゆくゆくは、47都道府県すべてでこうしたビジネスを作れたらいいなと思っています。最近では、岐阜県の木曽檜の廃材を活用したサステナブルライフスタイルブランド「ミートツリー(meet tree)」のビジネスも始めています。補助金をもらうような形ではなく、エンタメの力で本当の地方創生ができればと考えています。

パク・ソジュンとウイスキー「26 Twenty-Six」
Image by: STARBASE
──日髙さん自身温泉好きだと聞きましたが、そういった観光資源も武器になると。
そうですね。例えば大分県の別府温泉は、世界に存在する温泉の泉質11種類のうち、10種類が揃っている世界的にも特別な場所なんです。今、腸内環境と温泉の泉質のリンクに着目していて、個人に最適化されたパーソナライズ型の湯治宿を作ろうと考えています。結局、富裕層が行き着くのは健康ですから、そこに世界のVIPを呼んで、外貨を落としてもらう仕組みが作れるのではないかなと。
この間、ザ・ウィークエンドと話していて「結局、日本が最後のユートピアだよね」という話になりました。安全で、食事が美味しく、文化も深い。だからこそ、海外の真似をするのではなく、日本特有の文化やローカルな資産をエンタメの力で磨き上げること。それが結果的に、最強のグローバル戦略になると思っています。
カルチャーと結びついたアイドル輩出を
──IP事業として、新たに「アンニュイ・ボーイズ・プロジェクト(ENNUI BOYS PROJECT)」というボーイズグループのプロデュースも進められています。
弊社には、過去に多くのボーイズグループやアーティストの音楽制作、プロデュースを手掛けてきた知見があります。現在、アイドル市場はレッドオーシャンと言われていますが、見渡してみても、我々が本当にやりたいミックスカルチャーを体現するようなグループが見当たらないんです。だったら、自分たちでゼロから作ってしまおうと。
かつてのSMAPやOne Directionのように、王道のポップスでありながらカルチャーと深く結びついた存在を目指しています。ファッションや広告のトップクリエイターともタッグを組み、ただK-POPを追従するのとは違う、僕らだからこそできる新しいボーイズグループのコングロマリットを作りたいですね。
──最後に、中長期的なヴィジョンを教えてください。
今後は、東京をベースにしたグローバルエンターテイメントカンパニーとしてのポジションを確立し、まずは最初の目標として企業価値1000億円をクリアしていきたい。ただ、それはスターベースという箱単体の価値というより、ウイスキーやボーイズグループなど、僕らが創り出したIPやプロジェクトの価値の総和として目指していければいいなと。
そして何より推し進めたいことは「楽しいか、楽しくないか」という独自のKPIで社会を動かすことです。エンタメを使って何か面白いことをやりたいなら、まずはスターベースに相談しよう。そう言ってもらえるような、オープンな共創のハブであり続けたいですね。
最終更新日:
◾️STARBASE:公式サイト
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