
2027年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

2027年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
山本耀司が手掛ける「ヨウジヤマモト プールオム(Yohji Yamamoto POUR HOMME)」の2027年春夏コレクションは、西洋の古典主義に対する静かなる反逆の暗示とともに、その特異な世界観を露わにした。ショーのインビテーションは、ブランドの象徴である黒の生地で覆われ、それを捲ると、ギターを弾き、本を読む4人の人物が描かれた西洋画が現れる。しかし、その中の一人の左腕には和彫りの刺青が刻まれているという違和感。1981年のパリデビュー以来、西洋の服飾史という強固なシステムに対して、東洋の美学とアウトサイダーとしての視点から揺さぶり続けてきた山本耀司自身のスタンスそのものを明示しているかのようだ。
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今季のコレクションにおいて目を引くのは、伝統的なテーラリングの緻密な解体と再構築である。ハトメがあしらわれたスリーブは、袖、肩、身頃が異なるパーツで構成されており、衣服の構造そのものを視覚的に露わにする。肩先が立ち上がったセットインスリーブや、肩のラインを強調するオフホワイトのリネンジャケットなど、身体と布の間に生まれる「間」を意識した独自のシルエットは健在だ。一方で、あえて袖に大きなたゆみを持たせたジャケットや、裾にギャザーを寄せたショーツなど、重力に従って落ちる布のドレープが、ブランド特有の退廃的なエレガンスを醸し出している。全体を通して春夏らしい薄手の素材が多用されるなかで、空気を孕むような軽やかさと、仕立ての重厚さが絶妙なバランスで共存していた。


服が経年変化によって朽ちていく過程の美しさ、いわゆる襤褸の美学が随所に散りばめられている点も見逃せない。オパール加工によって表面が溶け落ちたかのようなベロアのジャケットやパンツ、あえて長く垂らされたままの刺繍糸、そしてコーティングが施されたグランジテイストのニットは、永遠の完成を拒絶する未完の美を主張する。際立ったのは重層的でアブストラクトなペインティングで、カットソーにプリントされた吠えるライオンの上に緻密な刺繍が重ねられ、鳥のモチーフが描かれるなど、アニミズム的な力強さと繊細な手仕事が交錯している。


ディテールに宿る反骨精神も今季の魅力である。半袖のジャケットには過剰なまでのボタンがあしらわれ、パンツの裾には2本のストラップで締め上げる。首元で光る十字のネックレスや、武骨でありながらも透け感のあるブルーのレースの前掛けなど、宗教性や労働者の衣服の要素がミックスされ、重層的なストーリーを紡ぎ出している。足元にはボクサーシューズやアッパーを大胆にくり抜いたスニーカーが合わせられ、日除け付きの麦わら帽子が、どこかノスタルジックで放浪者のような佇まいを完成させていた。


ショーのラストルックとして登場したのは、クリスタルが煌めくチェーンを激しく振り回す、顔を隠した女性の姿であった。その女性が、「Yohji Yamamoto by RIEFE」を手掛ける「リーフェ ジュエリー (RIEFE JEWELLERY) 」の春井里絵だと後にわかるが、破壊的でありながらも美しい余韻を残す演出は、既成概念を壊し続ける山本耀司のミューズを具現化したかのようである。時代がどれほど移り変わろうとも、表層的な波に迎合することなく、己の哲学を貫き通す「ヨウジヤマモト プールオム」。不完全なるものへの愛と、西洋的洗練に対する反逆の精神は色褪せることなく、見る者の心を強く打つのだ。

春井里絵
最終更新日:
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