2014年に青木明子が立ち上げたウィメンズブランド。ファッションを生きる行為そのものとして捉え、それを纏う人の生き方や姿勢が感じられる装いを提案している。2020年からは、オンタイムで販売する新レーベル「ヌーン(noon)」をスタート。アキコアオキの服に袖を通したことがない人や、ファッションが身近ではない人も楽しめるよう、オンタイムで着用できるアイテムを販売している。
AKIKOAOKIのコレクション
1986年東京都生まれ。2009年女子美術大学ファッション造形学科卒業後、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズでファッションを学ぶ。帰国後、コレクションブランドでアシスタントを経て、2014年にウィメンズブランド「アキコアオキ」をスタート。同年10月、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOにて2015年春夏コレクションを発表。2018年2月、LVMH Young Fashion Designers Prizeショートリストに選出され、同年11月に毎日ファッション大賞 新人賞・資生堂激励賞などを受賞。
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目次
- BRAND CONCEPT -
「纏う人の生き方や姿勢が感じられる装いの提案」
青木明子がデザイナーを務めるウィメンズブランド「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」。2015年春夏に発表したデビューコレクション以降、ランウェイショーやインスタレーションを重ね、独自の切り口で捉えた女性観を表現してきた。「LVMHプライズ」のセミファイナリストや「毎日ファッション大賞」の新人賞・資生堂奨励賞に選出されるなど、国内だけでなく海外からも高い評価を得ているブランドだ。
デザイナーの青木は、ファッションを"生きる行為そのもの"と捉えており、それを纏う人の生き方や姿勢が感じられる装いをブランドを通して提案している。ファッションは時代の流れや社会を色濃く反映するものだからこそ、"時代性"について真摯に向き合い、そこで得た気づきやキーワードをインスピレーション源にコレクションを組み立てている。
- CHARACTERISTIC ITEM -
ブランドを代表するデザインは「ボリュームショルダー」と「ユニフォーム的要素」
様々な形で展開されているボリュームショルダー。コレクションの中でも特に目を引くシルエットで、毎シーズン人気が高いアイテムだという。ステレオタイプな"フェミニン"という括りでは収まりきらない独特なバランスは、「現実に対するアプローチの派生としてファンタジーを作っていきたい」というデザイナーの想いが表現されている。
また、ブランドがシーズンを越えて大切にしているキーワードとして挙げる「ユニフォーム」。シャツやジャケットなどの普遍的なアイテムをベースに、フォルムや構造を再構築してデザインに落とし込んでいる。幼稚舎から高校まで一貫校で制服が決められていた経験を持つデザイナーだからこそ、現代のムードを取り入れた新しいユニフォームの定義を提案し続けている。
- DETAIL -
「脱構築的なストラクチャー」で生まれる新たなシルエット
ブランドは、ジャケットやコートのように一定のフォーマットを持つアイテムに対し、袖の付け方や切り替え位置などを意識的に崩し、新たなシルエットを生み出すことを得意としている。
2018年春夏コレクションでは、ブラカップを型どったパーツの位置を意図的に下にずらしたコートを発表。これまで正しくて美しいとされてきた体のプロポーションを崩し、ブランドが提案する新しい"女性の美しさ"をパターンやディテールから感じることができる1着だ。
2018年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP
また、デザイナー自身がジャケットのラペルに対して、礼服としての"重たさ"を感じていたことがきっかけとなり、襟の切り替え線をデザインに取り入れたラペルを提案。2020年秋冬コレクションをはじめ過去のコレクションでも度々発表されており、まさにブランドの象徴的なディティールとなっている。
2020秋冬コレクション
Image by: AKIKOAOKI
- OTHER LABEL -
オンタイムで販売を行うレーベル「ヌーン」
ブランドは、オンタイムで販売する新レーベル「ヌーン(noon)」を2020年7月からスタートした。ヌーンでは、アキコアオキの服に袖を通したことがない人や、ファッションが身近ではない人も楽しめるよう、オンタイムで着用できるアイテムを販売。アキコアオキで人気があったアーカイヴを用いて、生産時に余剰となった生地をアップサイクルしたワンピースやバッグを扱っている。
「ヌーン」で発売されている中で特に人気のアイテムが「ヘルプ ミー トゥー ワーク バッグ(help me to work bag)」だ。シンプルなデザインとA4書類が収納できる便利なサイズ感で実用性があり、発売と同時に売り切れが続いている。
help me to work bag/front
Image by: AKIKOAOKI
また2021年7月17日には、スニーカーソールを搭載したシューズ「レギュレイテッド グラヴィティ(Regulated Gravity)」の受注販売をスタートした。ブランドにとって初となるシューズは、オーソドックスなローファーをベースに製作。「ヒールやソールが厚手の靴はデザインが可愛くても、どうしてもその重さで足が疲れてしまったり、長時間歩いたりすることに不向きな部分がある。個人的に心で履きたい靴と実際にデイリーに履ける靴というものに差が生まれてしまうのが、制作のきっかけとなっています」とデザイナーは話す。
ヌーンは、本ラインでは難しい取り組みに挑戦する場として、今後も定期的にアイテムの企画・販売を行っていく予定だ。
Regulated Gravity
Image by: AKIKOAOKI
- COLLABORATION -
印象的なコラボレーションは、DDDホテルへのユニフォームデザイン提供
デザイナーは、2019年に日本橋馬喰町に誕生したアートや食など様々な分野のクリエイターが集う新ホテル「ディーディーディーホテル(DDD HOTEL)」のユニフォームデザインを手掛けたことが、ブランドにとって印象的なコラボレーションだったと話す。「ユニフォームは、それぞれの作業内容に合わせた機能性が必要になってくる。それをどうやって落とし込むのが良いか考えながらデザインしました」とデザイナーは振り返る。
またフロントスタッフのユニフォームには、デザイナーのジェンダーに対する意識が見て取れる。「フロントスタッフに男性と女性の両者がいる設定だったので、衣服から連想されるセクシャリティーの在り方に対し、"軽やかさ"を意識しながらデザインしました。男性のユニフォームにはエプロンスカートを、女性はトラウザーの丈を短くしたデザインを取り入れています」と話す。
- HISTORY -
2018年秋冬で行ったインスタレーションが重要歴史
ブランドが重要歴史として挙げるのは、モデル自身が鏡を見ながら服を替えたり重ね着する演出で話題となった2018年秋冬コレクション。メンズライクなディティールを取り入れ、ネクタイやスーツといったユニフォームを再構築したアイテムを展開した。
デザイナーは、「ポリティカル・コレクトネスといった平等や多様性が強調される時代性から距離をとり、"非多様性"に着目して、集団ではなく一人の人間像にフォーカスを絞った」と振り返る。ユニフォームの無個性さを利用し、その中で人間本来が持つ個性と身体性を表現したコレクションとなった。
- 2022AW COLLECTION -
現実から紐づいた"ズレ"を提案した、2022年秋冬コレクション
2022年秋冬コレクションは、シュルレアリズムを着想元に、現実から紐づいた “ズレ” を提案。誰もが知っているアイテムのシャツや、時間の蓄積を感じるヒストリカルコスチュームをベースに、身体と衣服の間に独自の空間を意識した”シェイプ”が特徴となっている。「分かりやすさを求められる現代においてもう一度『服』に立ち戻り、ざっくりとしたフォルムを描きたかった」とデザイナーは振り返る。
- FAVORITE LOOK -
「日常的な環境」と「非日常的な環境」を俯瞰で捉えた2022年秋冬のルック
2022年秋冬のルックは「日常的な環境」と「非日常的な環境」の2つを混ぜて俯瞰で見たときの印象をつくることを意識したという。
1920年代は衣類の内側に着用し、ドレスを支える役目だったはずのスカートボーンやコルセットを、そのまま外側に剥き出しに着たような表現が特徴のルック「今期の”シュルレアリズム”というテーマと相性が良いと思い作りました」とデザイナーはコメントしている。
よく見ると身体の比率が少しおかしく、モデルの身長が通常より高く設定されたルック。「パッと見た時はそこまで刺激物ではないけれど、何かぼんやりと、でも確かな違和感を感じると思います。そういう表現をしたかったルックです」
- FAVORITE ITEM -
ドレープやシェイプを意識したアイテムがデザイナーのお気に入り
Image by: AKIKOAOKI
デザイナーは、前と後ろの印象が異なるコートを今シーズンのお気に入りアイテムとして挙げている。前から見るとマスキュリンな印象だが、後ろは女性の身体の特徴をシェイプで構築しているという。また、肩から袖に向かって自然なドレープが入る袖は、着用した時の美しさを意識した仕上がりとなっている。
今シーズンのアイテムの中でも目を引くシャツドレス。私たちが「シャツ」として認識している衣服を元に、ドレープでシェイプをつくりながらシャツドレスとして提案したという。「均整のとれた古典的なドレーピングではなく、また女性の身体を誇張するわけでもなく、現実や身体を歪めるような印象を目指しました」とデザイナーはコメント。布地の心地よい流れと軽やかな動きが共存する存在感抜群の1着だ。
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主要年表
【2021年】
ファッションにフィーチャーした新刊「文學界8月号」にエッセイを寄稿。
【2020年】
オンタイムで販売する新レーベル「ヌーン(noon)」をスタート。ファッションが身近ではない人も楽しめるよう、オンタイムで着用できるアイテムを販売。
【2019年】
ジェトロ(日本貿易振興機構)初の特別事業として、パリのショールーム「トゥモロー」に出展。英高級百貨店をはじめ有名セレクトショップなどのバイヤーから高い評価を得た。
日本橋馬喰町に開業したホテル「ディーディーディーホテル(DDD HOTEL)」のユニフォームデザインを担当する他、インテリア小物や呉服を展開している川島織物セルコンとコラボレーションした織物を使ったエッグチェアをフリッツ・ハンセン(Fritz Hansen)青山本店で展示。
【2018年】
2018年度「第36回毎日ファッション大賞」の新人賞・資生堂奨励賞を受賞。また、アジアで最も権威のあるファッションカンファレンス「FASHION ASIA HONG KONG 2018」の優勝デザイナー10組に選出される他、若手育成プログラムの一環として日本メンズファッション協会が設立した「第14回ベストデビュタント賞」を受賞した。
また、若手ファッションクリエーターの育成・支援を目的としたファッションコンテスト「LVMH Young Fashion Designers Prize」のファイナリストに選出され、海外からも注目を集めた。
【2017年】
「Amazon Fashion Week TOKYO 2017 A/W」にパルコがサポートするプロジェクト「ファッション ポート ニュー イースト(FASHION PORT NEW EAST)」を通じて参加。「Primitive」をテーマに2度目の単独ショーを発表した。
【2016年】
宮下公園を舞台に初の単独ショーとなる2017春夏コレクションを披露。肩や腰、スリーブなど女性のシェイプに着目し、「90年代後半のメタル的な空気感」をアイテムで表現した。
また、ブランド初のZINE「イム ヌ・ラムール(Hymne l'amour.)」を100冊限定で発売。新進気鋭のフォトグラファーのタカコノエル(Takako Noel)が撮り下ろした2016年秋冬コレクションのビジュアルを掲載した。
【2015年】
坂部三樹郎、山縣良和がプロデュースする若手デザイナーを集めたプロジェクト「東京ニューエイジ」の1ブランドとして2016年春夏コレクションを披露。
【2014年】
「アキコアオキ」を立ち上げる。2015年春夏にデビューコレクションを発表。
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