
ショーに見とれ、次の会場へ急ぎ、フラッシュと人だかりを見つけてはとりあえずiPhoneで追いかける——。ときめきに緊張、時には全力疾走で、今季のミラノも色いろな感情で心拍数は上がりっぱなし。記事や画面越しでは伝えきれない会場の熱気から、取材の合間のこぼれ話、ホッとひと息ついた時間まで。現地を駆け巡った編集部が、2027年春夏ミラノ・ファッションウィークを10のエピソードで振り返ります。
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episode 1. 今季のミラノを貫いた、さまざまな官能性のかたち
今季のミラノで特に印象に残ったのは、ブランドごとに異なる「センシュアリティ(官能性)」の表現。「ディーゼル(DIESEL)」では、かなり刺激的で度肝を抜くショー演出に会場が沸き(詳しくはショーレポートで)、「フェンディ(FENDI)」では、反射や視界の歪みを生むセットによって、見る側と見られる側の関係を意識させられることに。どちらもアプローチは違えど、ショー演出で異なる官能性の形が提示され、ファッションウィーク序盤のハイライトに。
ランウェイルックで気になったのが、ランジェリーの存在。ここ数シーズン続く「ランジェリーコア」は、ブラやスリップ、レースなど、下着の要素を普段の装いに取り入れるトレンドとして、マーケットにも浸透してきましたが、今季のミラノではその提案がさらに多彩に。服の下からのぞかせるだけでなく、ブラそのものをトップスとして着たり、形や素材を変えてスタイリングの主役にしたり。下着を見せる大胆さに加えて、どんな形で、何と合わせて着るか。ランジェリーが、ワードローブの一部として扱われているように感じます。
ただし、「肌を見せる=官能的」というわけでもありません。「グッチ(GUCCI)」では、シャツのボタンを外して露出を調整したり、華奢なインナーとボリューミーなアウターでバランスをとったり。「マルニ(MARNI)」は、服の内側の構造を表に見せたり、カットアウトやプロポーションの変化で遊んだり。どこかユーモラスで、気負わず着られそうなところが魅力的でした。










Image by: GUCCI
見せるか隠すか、どう身につけるかを、着る人に委ねる——そんな多様かつ主体性のある官能性の表現が印象に残りました。
episode 2. プラダのスカートにときめきが止まらない
「プラダ(PRADA)」では、全63ルックがスカートルックだったことも話題に。もはやミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)のユニフォームでもあるスカートですが、「スカートの魔術師」の称号を与えたいほど、プラダの提案は、シーズンを考えるうえでも外せないものでした。
丈や形だけでなく、素材、装飾、重ね方まで変えて見せた63ルック。同じアイテムが続くのに、見飽きるどころか、次はどんなスカート? と前のめりになってしまうほど。大胆な色や装飾、実験的なプロポーションといったデザインと、そして何よりも「着たい!」と思わせるリアル目線が両立していたことが、見る人をときめかせた理由なのでしょう。
展示会でもメディア陣が「自分ならどれを着たいか」と話していたのも、まさにその感覚。ということで、私的に気になったスカートTOP3を選んでみました。あなたはどのスカートが好き?



プラダらしい配色のグレー x 黒のプリーツスカートはどんなスタイルにも合いそうなクローゼットに入れておきたい一着。
Image by: PRADA
episode 3. ミラノの若手で気になる「INSTITUTION」
毎シーズン、海外のPRエージェンシーからも怒涛のショー案内メールが届くのですが、今回は珍しく個人宛に「多分好きだと思うよ!」とのメッセージが。(前日だったので、おそらくシートの空き状況でSOSの意味とも理解)それをきっかけに足を運んだのが「INSTITUTION」です。
デザイナーのガリブ・ガサノフ(Galib Gassanoff)は、同じくミラノでコレクションを発表する「アクト ナンバーワン(ACT N°1)」の共同創設者のひとり。2016年にルカ・リン(Luca Lin)とブランドを立ち上げ、2023年に離脱した後、2024年に「INSTITUTION」を発表しました。新しいブランドではありますが、服づくりの経験を重ねてきたデザイナーによる、次なる挑戦でもあります。今年のLVMHプライズもファイナリストに選出されました。(ACT N°1はセミファイナリストに)
今回の会場は教会。装飾に囲まれた厳かな空間で披露したのは、正方形の布を出発点に、袖やケープ、ドレープへと展開したコレクション。平面の布が身体を通すことで立体になり、歩くとその形が変わっていく。建築を思わせるボリュームがありながら、動きを妨げない柔らかさもあり、教会の空気も相まって、さらに神聖なムードを漂わせていました。
大手メゾンばかりが注目されがちですが、こういった新しい出合いと発見があるのが、現地取材の醍醐味です。
episode 4. ショーのあともプラダ。「Prada Galleria」を巡る
ミラノ中心地のアーケード、ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレⅡ世にあるプラダ本店。買い物欲を刺激してくれるブティックですが、「Prada Galleria」としてリニューアルしたと聞いて早速訪問。

Image by: PRADA
ウィメンズ館の上のフロアの常設展示「Pradashere」(事前予約制)では、1913年の創業からプラダ家所有の品々やアーカイヴから、アート、建築、映画、カルチャー、スポーツとの数十年に及ぶ関わりまで紹介し、懐かしい過去のキャンペーンなどを通じて、ブランドの軌跡をたどることができます。(写真の中に金城武の姿も発見!) 服だけでなく、プラダが関わってきた世界の広さにも改めて驚かされます。
新作コレクションが発表されたあと、その発想が生まれたクリエイティブの根源に触れられるのも嬉しい点。実際、2004年の展覧会「Waist Down: Skirts by Miuccia Prada」に関する展示は、今回の「The Skirt」コレクションを考察する上でも、一つのヒントとなってくれました。
ガレリア内のプラダ本店は、中央の広場を挟んで対角線上にメンズ館(Uomo)とウィメンズ館(Donna)が出店しているのですが、今回のリニューアルでなんと店舗が地下通路でつながり、地上に出なくても行き来できるように! しかも、その名は「Passaggio Segreto=秘密の通路」。名前からしてちょっとわくわくしませんか? 通路にもブランドの歴史を紹介する展示があり、見るものが尽きません。
プラダグループ傘下のカフェ「マルケージ1824( Marchesi 1824)」、完全予約制のサロン空間「The Studio」、プラダ財団の展示施設「Osservatorio」など、計8フロアからなる、まるでプラダのテーマパーク。買い物のつもりで入っても、それだけでは終われなさそうです。

Image by: PRADA

Image by: PRADA
常設展示「Pradashere」
episode 5. 「ザラ×バイージ&グァダニーノ」に気分ぶち上がり!
ショーの合間に訪れたイベントで、思わずテンションが上がったのが「BAISI GUADAGNINO for Zara Home」の2日間限定ポップアップ。「君の名前で僕を呼んで」や「チャレンジャーズ」で知られる映画監督のルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino)と、同氏とさまざまな作品でタッグを組むプロダクションデザイナー兼建築家のステファノ・バイージ(Stefano Baisi)が手掛けた「ザラ ホーム(ZARA HOME)」とのコラボレーションです。
会場はミラノの「La Pelota」。2人がデザインした、家具や照明、テーブルウェア、テキスタイル、アパレルがシネマティックなインスタレーションの中に並び、その数、200点以上。ザラ ホームのコラボレーションとしても最大規模というだけあって、見応えたっぷりです。受注販売を含め全て購入可で、価格帯は2290円〜197万9900円。







Image by: ZARA
そしてホームコレクションがメインと思いきや、当初の構想にはなかったものの2人の思いつきで製作されたというアパレルコレクションがかなり秀逸! メンズスーツを起点にしたボリューミーなシルエットのアウター類や、フォーマルルックからデイリーアイテムまで、センスの塊である2人のコレクションをザラ価格で買えるとなると、物欲にも拍車が。お披露目のレセプションはクローズ10分前に滑り込んだのですが、あまりの可愛さに翌日、試着も兼ねて再訪問してしまうほどでした。
パリでは、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)とのコレクション「Re{form}」も話題になり、ますますザラの勢いが止まりません。どちらも日本のオンラインストアで購入できるので是非チェックしてみて。
発売にあたり短編ムービーも公開。だいぶお金がかかってます。
episode 6. ジル サンダーにミケーレ、マルニにベロッティ。客席で見つけた交流
ショー会場のフロントロウで気になるのは、セレブリティだけではありません。「あの人も来てるんだ!」と目が向いたのが、他のブランドを手掛けるデザイナーたちでした。
「ジル サンダー(JIL SANDER)」には、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)の姿が。そして「マルニ(MARNI)」の会場には、そのジル サンダーを手掛けるシモーネ・ベロッティ(Simone Bellotti)が来場していました。普段はそれぞれのショーの最後に登場する人が、別のブランドでは観客として座っている。その光景が、なんだか新鮮です。
現役デザイナーとしてどんなところを見て、何を感じているのだろう——。デザイナー同士の横のつながりを垣間見られるのも、この業界に身を置く人間としては、現地取材ならではのときめきポイントです。
今シーズン、デザイナー間の交流が見れたのは、初日にガレリアで「VOGUE WORLD: Milano」が開催されたことも大きな理由に。アレッサンドロ・ミケーレ(VALENTINO)、ドナテラ・ヴェルサーチェ、ピエールパオロ・ピッチョーリ(BALENCIAGA)、デムナ(GUCCI)、ミウッチャ・プラダ、ラフ・シモンズ(PRADA)、ピーター・ミュリエ(VERSACE)、ドメニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナ(Dolce&Gabbana)がフロントロウに並ぶ光景は、一瞬AI動画かと思ったほど。何を話していたのか気になります。
episode 7. J.LOとの再会から、話題のホットカップルまで
もちろん、セレブリティからも目が離せません。プラダでは、ユマ・サーマン(Uma Thurman)と娘のマヤ・ホーク(Maya Hawke)がそろって来場。親子で一緒にショーを見に来ているという光景がなんとも微笑ましい!
「イタリアの宝石」の異名を持つイタリアの大女優モニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)のお姿はフェンディで発見。最近は娘のディーバ・カッセル(Deva Cassel)がファッション界で活躍中ですが、60歳を超えても溢れる色気は、銀幕からそのまま出てきたかのような佇まいです。


そして、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)は「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」のショーに来場。J.LOをファッションウィーク中に生で見るのは、「ヴェルサーチェ」2020年春夏コレクションのフィナーレに伝説のジャングルドレスで登場して以来、2度目。2000年代を彷彿とさせるキャスケット姿は、アメリカのポップミュージックシーンど真ん中を通ってきた筆者にとって、思わずテンションが上がりました!
終盤に話題をさらったのは、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」でランウェイと客席での2ショットを披露したビッグカップル。フロントロウに座るブランドアンバサダーのジェイコブ・エロルディ(Jacob Elordi)の目線の先には、ラストルックに登場した交際中のモデル ケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)が。フィナーレでは、周囲の観客らが2人を同じ画面に収めようと必死でした。筆者もその1人。
episode 8. 厳重な警備の中心にいた超重要人物
そんな大物セレブたち以上に、今シーズン印象に残った人物が。ケリング傘下のブランドのショーに来場していた、同社CEOのルカ・デメオ(Luca de Meo)です。
複数の警備スタッフに囲まれ移動する姿を見て、思わず「ゴッドファーザー」のテーマ曲が脳内に流れ、「政府の要人?」と思ったほど。どの傘下ブランドのショー会場でも、誰よりも手厚くアテンドされ、グッチのショー会場では同ブランドのCEOであるフランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)ですらこの様子。
デメオは自動車業界で長年経験を積み、2025年9月にケリングのCEOに就任。妻のサルマ・ハエック(Salma Hayek)とともに華やかな姿を見せるフランソワ・アンリ・ピノー会長とはまた違うオーラで、緊張感がありました。
episode 9. 長年の取材で鍛えられた、セキュリティを華麗にかわす術
昨今、ショーに招待されるセレブリティ人気の過熱とともに、華やかであるはずのランウェイはショー前後、戦場と化します。セレブの姿を抑えたいメディア VS それを止めたいセキュリティ陣。両者の溝は、ここ数深まるばかり。理不尽な対応につい愚痴をこぼしたくなりますが、これも我々の仕事のひとつ。屈強なセキュリティに突き飛ばされながらも、冷静かつしたたかに、ベストショットを狙います。特に序盤の「プラダ」と終盤の「ボッテガ・ヴェネタ」は、ミラノ2強。今回、Metaグラスを使ったPOV視点で、コレクション取材で鍛えられた華麗なる(?)セキュリティかわし術の一部始終をご覧あれ。(2倍速▶︎▶︎)
episode 10. なんだかんだ「和」しか勝たん
そんな殺伐としたミラノファッションウィーク期間中、心を癒してくれたのは2つの「和」でした。ひとつは、毎シーズンお馴染み、宿泊ホテルの近くにある日本食レストラン「SAGAMI」のうどん。そしてもうひとつが、中盤に訪れた「セッチュウ(SETCHU)」のアトリエです。
ミラノを拠点とするセッチュウでは、昨年ローンチされたフレグランスとシルバージュエリーのコレクションを紹介するオープンデーを開催。メンズ・ファッションウィーク期間中のショー会場としてもお馴染みの自社アトリエを、デザイナーの桑田悟史さんが直々に案内してくれました。製作中の別注品から、コレクションのスケッチや生地のスワッチ、サヴィル・ロウで培った伝統的な仕立てへのこだわりまで。服が生まれる現場を見ながら話を聞くと、セッチュウのものづくりがぐっと身近に感じられると同時に、その一着に注がれる技術と情熱には、背筋が伸びる思いもしました。
玄米茶や柚子、鮎釣りの記憶、畳、檜風呂など、日本の風景を思わせるフレグランスも、どこかほっとする香り。さらに、1週間前に迎え入れたばかりというイタリア語で「銀」を意味する、愛犬「アルジェンタ」もお出迎えしてくれました。毎日、桑田さんの自転車に乗ってアトリエへ通うそうで、そのキャリーバッグもお手製。仕立てへのこだわりは、愛犬の通勤バッグにまで。忙しない滞在中、思わず頬が緩む貴重なひとときでした。






もちろん美食の国イタリアなので毎度イタリアンにも舌鼓を打つのですが、後半戦に差し掛かると「うどん」のだしが心と身体に染みわたるのです。
最終更新日:
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