
Image by: PRADA
ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が手掛ける「プラダ(PRADA)」が、ミラノファッションウィーク初日に2027年春夏ウィメンズコレクションを発表した。テーマは「THE SKIRT」。その名の通り、全63ルックを「スカート」という一つのアイテムを軸に構成した。
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自由と独立の象徴としてのスカート
スカートは、プラダにとって特別な存在だ。スカートを自由と独立を象徴する服として捉え、ミウッチャにとっての"ユニフォーム"でもある。関係性を遡ると2004年には、建築キュレーターの太田佳代子とともに、展覧会「Waist Down: Skirts by Miuccia Prada」を企画。100着のスカートを身体やランウェイから切り離して、彫刻的なオブジェとして見せ、東京を皮切りに世界各都市を巡回した。長年にわたってスカートの造形やその意味を探ってきたとも言える。

Image by: PRADA
今シーズン、ミウッチャとラフが改めて向き合ったのは、誰もが知る普遍的な衣服を、一つの形に固定せず、どこまで変化させられるのかという実験であり、問いだった。スカートは単体で形として成立する一方、合わせるアイテムによって異なる表情を見せる。スカートという一つの造形に対象を絞り、その限られた枠組みの中で表現の幅を広げていった。
コレクションの中心となったのは、プラダが得意とする膝丈のスカート。身体に巻き付け、大ぶりのベルクロで留めるラップスカートをはじめ、プリーツやクリノリンの概念を取り入れたもの、カットオフや布を重ねてボリュームを持たせたものなど、その表情はルックごとに変化する。腰位置をずらしたり、留め方をあえて崩したりすることで、整いすぎないシルエットに仕上げた。


機能を装飾へ、構造を表へ
ここで重要になるのが、機能を別の意味へと置き換えるプラダらしいアプローチだ。工業製品にも広く用いられるベルクロ(ショーの招待状もベルクロだった)は、スカートのサイズやシルエットを調整するという機能を残しながら、コントラストカラーに切り替え、クリスタル刺繍の土台というデザイン要素へと変化。大きく拡張されたスナップボタンはジュエリーのように配され、通常は衣服の内側でシルエットを支えるクリノリンの構造をあえて表に出し、透けるシェルのようにスカート全体を覆うことで、内側のプリーツや装飾を見せた。



ラップ、プリーツ、クリスタル刺繍、カットオフといった複数の技法を一着の中で交差させることで、スカートは繰り返し再構築されていく。着方によってシルエットや見え方が変わるデザインも多く、均整の取れた完成形を提示するのではなく、ずらす、重ねる、開くといった動作によって、馴染みのあるスカートの造形を更新していく。
素材の選択にも同様の反転が見られる。コットンを多用しながら、ラテックスやRe-Nylon、シレ加工を施したマットな素材といったインダストリアルな要素を投入。工業的な素材をクラシックなプリーツへと仕立てる一方、コットンはレザーやスエードを思わせる風合いに加工された。クリスタルで再解釈したギピュールレースや、フローラルプリントをコットンやシンセティック素材で表現したスカートも登場する。


鮮やかな花柄と異なるプリントを重ねたり、プリントの上に光沢のある異素材のパネルを重ねたりと、異なる柄や質感をあえて共存させる。"新しさ"を奇抜なフォルムに求めるのではなく、「この素材はこう使うもの」「このパーツはここにあるもの」といった素材やディテールにまつわる既成概念を少しずつずらすことで、新たな見え方を生み出している。


一つの服から広がる可能性
スカート単体だけでなく、何と組み合わせるかによってもその印象は変化する。ブラトップやチューブトップ、シャツ、タートルネック、シンプルなニットなど、上半身は比較的ミニマル。装飾やボリュームを腰から下に集中させることで、スカートそのものの存在感を際立たせた。一方で、オーバーサイズのレザージャケットではタフに、ナイロンアウターでは軽快にと、同じ膝丈のスカートも合わせる服によって見え方を大きく変える。セーターやシャツ、ブラトップなど、周囲のアイテムとの関係によって、一つのスカートに異なる解釈が生まれていく。





ミウッチャとラフが今回設定したのは、「スカート」という極めて限定的なルールだった。しかし、一つのアイテムに絞り込むことは、決して表現を狭めるということではない。むしろ形、素材、機能、装飾、着方、スタイリングを一つずつ組み替えることで、見慣れた衣服の中に新たな可能性を引き出していった。
「既知のものの中にこそ、無数の可能性が存在する」。 まったく新しい何かを生み出すのではなく、すでに知っている一つの服を繰り返し見直すこと。厳格な制約から自由な変化を導き出すという、一見矛盾する方法によって、プラダはスカートという普遍的な衣服を改めて問い直した。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight
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