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「見せる」も「隠す」も自分で選ぶ フェンディが描く身体の自由

2027年春夏コレクション

文・今井祐衣

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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 「フェンディ(FENDI)」が、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)の2シーズン目となる2027年春夏コレクションを発表した。出発点となったのは「身体」と、それに最も近い衣服であるランジェリー。「見せること」と「隠すこと」、そのどちらも自ら選択する身体を提示した。

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「見えない」ランウェイから始まった身体の問い

 会場では、客席とランウェイの間は、反射するPU素材で隔てられ、1970年代の陽気なディスコミュージックとともにショーが始まった。モデルの姿はその表面越しにぼんやりと現れ、音響が反響すると素材そのものが振動。映し出された身体の輪郭はさらに歪み、通常なら一着一着を明瞭に見せるファッションショーで、キウリはあえて「見る」ことを難しくした。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 着想源となったのは、イタリア人アーティストのルチアーノ・ファブロ(Luciano Fabro)による作品「Cubo di specchi(ミラーキューブ)」。鏡の中ではモデルだけではなく、自分自身や周囲の観客の姿までが幾重にも重なる。鏡は自分だけを確認するためのものではなく、他者との関係のなかで自らを認識するための装置へと置き換えられていた。

 こうした「他者との関係」は、今季の出発点である身体の捉え方にも表れている。キウリが引用したのは、E.E.カミングス(E.E. Cummings)の「I like my body when it is with your body(あなたと一緒にいる時の、自分の身体が好き)」という一節。この言葉は招待状にも記され、キウリは現代の身体を、強さと脆さ、マスキュリンとフェミニンといった異なる要素を併せ持つものとして捉えた。

ランジェリーは、誰のために見せるのか

 そこから導かれたのが、ランジェリーだった。本来は服の内側に隠されるブラレットやショーツ、スリップが表へと現れ、レースや刺繍、シアーな素材が身体を覆いながら、その一部を露わにする。ドレッシングガウンも室内着という役割から離れ、街を歩く服へと姿を変えた。

 ただし、ここでのランジェリーは肌を露出するためだけのものではない。あるルックではブラレットやショーツを大胆に見せ、別のルックではレースやファーの奥からわずかに覗かせる。肌を見せる部分と覆う部分を一つのルックの中に共存させ、単なる露出とは異なる、内面から滲み出るような官能性があった。

ラファエラ・カッラが象徴する女性像

 その思想を象徴する人物が、今季を語る上でキーパーソンとなったラファエラ・カッラ(Raffaella Carrà)だ。1970年代のイタリアで、大胆なステージ衣装と身体表現によって国民的な人気を得た歌手でありショーガール。当時としては大胆な肌の露出や身体を使ったパフォーマンスを、大衆的なエンターテインメントとして発信した。そのセクシュアリティは、誰かに見られることだけを目的としたものではなく、自らの身体や欲望を主体的に表現する姿勢とも結びついていた。

 薄いレースやシルクには、フェンディを象徴するボリュームのあるファーを重ねた。光沢とマット、軽さと重さ、シルクとアニマルプリント、ベルベットとパーチメント、パンクとブルジョワ。一見相反する要素を共存させることで、一つのルックの中に多様なパーソナリティを浮かび上がらせている。

 こうしたアプローチは、女性のワードローブだけではない。メンズモデルも胸元が大きく開いたシャツにパンツを合わせ、その上からボリュームのあるファーを羽織る。男性的、女性的とされてきた要素を分けるのではなく、ジェンダーにとらわれない着こなしを提示した。

見えにくさも意図的な演出に

 印象的だったのは、「身体」をテーマに掲げながら、その姿をあえて明瞭には見せなかったことだ。PU素材の表面ではモデルの像が揺らぎ、そこに観客の姿も重なっていく。ランウェイを見るはずだった視線の先に、自分自身や周囲の人々まで入り込む。だが、その見えにくさもまた、他者と自己の関係性を示唆した今回のテーマの一部だったのだろう。

 見せることも、隠すことも自分で決める。服が身体を定義するのではなく、身体が服との関係を選ぶ。ランジェリー、鏡、そしてカッラの人物像を重ねながら、キウリが今季のフェンディで探ったのは、誰かの視線によって決められるものではない、自らの意思による身体のあり方だった。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

最終更新日:

文・今井祐衣

Yuui Imai

FASHIONSNAP

千葉県出身。中央大学総合政策学部卒業後、スウェーデンに渡りストックホルム大学ファッション社会学修士課程修了。2015年にレコオーランドに入社。語学とコミュニケーションスキルを生かし、来日デザイナーのインタビューや海外コレクションを担当する一方、広告プランナーとして営業~制作もこなす。北欧と長野をこよなく愛し、LagomでHyggeなムーミン谷のような暮らしに憧れている。

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