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「プラモデルのように」革ジャンにスタッズを打ち続ける 野性爆弾 くっきー!の創作の原点

聞き手&文橋本知佳子

Image by: FASHIONSNAP

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 ストリートで目にする機会はすっかり減ってしまった、スタッズが打ち込まれたパンキッシュなレザージャケット。服好き、ヴィンテージ好きとしても知られ、アーティスト「COOKIE!」名義でも国内外で発表の場を広げているお笑いコンビ「野性爆弾」のくっきー!は、そんなパンクファッションの代名詞であるスタッズレザージャケット(鋲ジャン)を、高校時代から無心で作り続けてきた。鋲(スタッズ)をひとつひとつ手で取り付ける作業はさながら瞑想のようなものだそうで、作り終えるのは手の痛みの限界が来た時。作ったジャケットを着ることはほぼなく、プラモデルのようにコレクションするという。一体何が、彼を鋲ジャン作りに駆り立て続けるのか。話を聞くべく、とあるカフェの一室に構える秘密基地のようなアトリエを訪ねた。

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くっきー!のアトリエにて

パンクロッカーのDIY精神から生まれる人間味

⎯⎯ 鋲ジャンを作り始めたのは30年以上前だそうですね。最初の1着を作ったときのことを覚えていますか?

 高校生の時にパンクブームの影響でパンクにハマって、だんだん古い時代に遡るようにのめり込んでいきました。自分で鋲ジャンを作ったのは、海外のパンクバンドはみんな自分で鋲ジャンを作っていたから、その真似事でした。背面に絵を描いて、襟にちょっとだけ鋲を打って。当時は鋲がパンクショップでしか手に入らなくて、値段も高かった。あまりたくさんは買えなかったので、ちょっとしか打てなかった。それが最初でしたね。

 ただ、作るものまで真似をしては周りと同じものを着ているだけになってしまう。なので自分なりに、「他人と被らないようにしよう」という意識は当時からありました。鋲を打つ場所は基本的には襟なので、背中に自分で絵を描くことで個性を出していました。

⎯⎯ YouTubeでも鋲ジャン作りの様子を度々配信されています。デザインの構成や鋲の配置はどのように決めていますか?

 個人的なクセがありますね。感覚的なものなんですが、左右対称が好きじゃないんですよ。どこかずらしたいというか、機械的になるのが嫌で。だから片方をびちびちに埋めたら、逆側は縁取るだけとか、そういうバランスにするようにしています。人間の顔にも左右差があるので、左右対称にするとAIみたいな人間味のない顔になるそうです。鋲ジャンも同じで、均一だと機械で作られたみたいになってしまう。それはつまらないと思うんです。

「これも片側にビタビタに鋲を打ったからもう片方はシンプルにしています」

「半面リバーシブルというか、二面性というか。顔が左右で別々のキャラクターみたいなね」

⎯⎯ ベースになるジャケットにはこだわりがありますか。

 型はアメジャン(アメリカ型)より、ロンジャン(ロンドン型)のほうがシルエットやジッパーの入り方が好きですね。でもジャケット自体は安物の中古で十分ですよ。

*アメジャンは身幅や腕幅が広く、着丈が短めなのに対して、ロンジャンは全体的にタイトで体にフィットするスリムなシルエットが特徴で、着丈はやや長め。アメジャンは、裾にバックル付きの大きなベルトや背面のアクションプリーツが見られるが、ロンジャンは前側のバックルベルトがなく、サイズ調整はサイドのアジャスターベルトで行う。

⎯⎯ ヴィンテージバイクやデニムなどはお好きだと思いますが、ヴィンテージレザーには興味はないんですか?

 自分が着るために買うレザーアイテムは新品が多くて、中古で買うのは鋲ジャン用だけです。基本的にヴィンテージの洋服で興味があるのは「リーバイス(Levi’s®)」のパンツとカバーオールくらいで、革ジャンのヴィンテージはあまり興味がないですね。全部ヴィンテージにすると、なんか小汚い感じになるじゃないですか。若い子がきれいな顔と髪型で上下ヴィンテージを合わせるならいいと思いますけど、このツラだとちょっとね(笑)。


⎯⎯ 制作スタイルについても教えてください。

 制作中はほぼ無心ですよ。1つの鋲を打ちながら、次の鋲を打つ位置を探しているんです。だから別のことを考える時間がない。なんの感覚もないまま、気づいたら時間が経っていて、面が埋まっています。

⎯⎯ ストレス発散になりますか。

 いや、正直ツラいです。指も痛いし、時間はあっという間に過ぎていって勿体無いなと思うし。でもやり出したら止まらなくなってしまう。始めたら、自分が納得できる状態まで持っていかないと気が済まないんです。ヤバイですよね。

⎯⎯ それでも作り続ける原動力はどこに?

 作りたいと思うからですね。鋲ジャンは基本的に好きなバンドや人物をテーマに作るので、まだ作ったことのないバンドで作りたいとか、おもろいものを作りたいという欲求や直感でしょうか。

⎯⎯ 作り始める時、完成形のイメージは頭の中にあるんですか?

 全然ないですよ。なんとなく思いつきで、「今日はここを全部鋲で埋めよう」と思ったら埋め始めて、そうしたら「次はこっちに缶バッジをつけよう」「ここの色は赤にしよう」って、思いつきの連続です。

⎯⎯ 完成する瞬間はいつ訪れるんですか?

 指の限界じゃないですかね(笑)。鋲を打つ時って両手を使って鉄を曲げて打っていくので、両手が痛くなるんです。何時間も作業していると感覚が麻痺して指が動かなくなる。そうなったらもう終わりです。1着の制作日数は、簡単なものなら1日、全面にギチギチに打つ場合は3日くらいです。

⎯⎯ 2024年に出演いただいたベストバイ企画では3Mの両面テープで作ったギター用のクッションが登場しました。鋲ジャン作りでも、3Mの両面テープやポスカなど、身の周りにある材料を使用しているのは、パンクの「DIY精神」からですか?

 そうですね。鋲ジャンも元々鞄の底鋲が使われていたし、使えるものを使う、身近なものを工夫してこうしたらかっこいいんじゃないかという発想ですよね。そのうち切ってきた竹とかも使えたら面白いですよね。竹ジャン、バンブージャンパー、作りたいですよ。

現在はAmazonで購入した「コニカル」の鋲を使用している。

若いパンクスが増えてほしい、おすすめの曲も紹介

⎯⎯ 自身で制作した鋲ジャンの展覧会「鋲じゃん展」を今年3月に表参道で開催。8月8日から大阪に巡回します。大阪展のために作った新作の注目ポイントを教えてください。

 ベースにしてるのは安い革ジャンなんですけど、赤のレザーの襟を青く塗ったところ。大阪なので、背中には上沼恵美子さんの若い頃の絵を描きました。勝手に「えみじゃん」と呼んでいます。


⎯⎯ ちょっと羽織ってみてもらえますか?

 羽織ると背中見えなくなりますよ?

えみじゃんは会期中にオークション販売される

⎯⎯ 青が効いていて、正面からもとてもかっこいいですね。お似合いです。

 今やこんな格好のやつあんまいないですけどね。昔はおったんですけどね。寂しい時代になりましたよ。1976年にパンクが始まった*として、50年が経って、徐々にパンク人口も減っていっています。プライベートでパンクバンドをやっているんですが、僕らでもパンク業界では結構若手扱いされます。若いパンクスが生まれていないというのは肌で感じていますが、僕らが生まれた頃に始まり、僕らが第二、第三世代くらいで、そこで止まっている感じがする。流れを止めたの俺らやんってね。

*1976年に発表されたイングランドのパンクバンド「ザ・ダムド(The Damned)」のデビューシングル「ニュー・ローズ(New Rose)」がパンクの始まりとされる説がある。

⎯⎯ 若い世代にパンクが届きにくい理由は何だと思いますか。

 まず汚い。ゴリゴリのパンクの人ってボロボロの服を着るので、綺麗ではないですよね。あと、女子が憧れないジャンルとして扱われているんじゃないかな。女子が憧れないから男子にもモテないジャンルとして定着してしまっている部分があると思うんです。今の16〜18歳の子からしたら、パンクの人を見るのは侍を見るような感覚なんじゃないですかね。もっと若いパンクスが増えてほしいですが、若い子はもう聴く音楽がちゃうでしょう。STARTO ENTERTAINMENTさんでパンクバンドを作ってほしいくらいです。


⎯⎯ パンクバンドはサブスクに配信しているイメージがあまりなく、新しい接点が持ちにくい印象です。

 でもね、最近ちょこちょこ昔のパンクの人がサブスクを解禁し始めている気がしますよ。カラオケにも配信されている曲があって驚きました。

⎯⎯ パンクを通っていない若い世代にも聞いてほしい3曲を教えてください。

 ザ・スター・クラブ(THE STAR CLUB)の「ブラック・ガード・エンジェル(BLACKGUARD ANGEL)」、ライダーズ(THE RYDERS)の「アイブ・ゴット・ザ・エナジー(I'VE GOT THE ENERGY)」、ラフィン・ノーズ(LAUGHIN' NOSE)の「ゲット・ザ・グローリー(GET THE GLORY.)」じゃないですかね。

⎯⎯ 好きなファッションのルーツに音楽がある人は多いと思いますが、くっきー!さんはずっとパンク一筋ですか?

 音楽はそうですね。服装は、だいぶ落ち着きましたけど、「大人なパンク」という感じですかね。50歳にもなってこんな鋲ジャンを着て街を歩いていたら、さすがに奇人扱いされますよ。タイトなブラックジーンズやパラシュートパンツをスラックスに変えたりと、大人になりました。

⎯⎯ くっきー!さんにとって、そもそも「パンク」とはどんな存在ですか?

 なんやろ。難しいですね。「お知り合いにならしてもろてありがとうございます」って感じじゃないですか。パンクを知らなかったら、今の自分の方向性もなかったと思うんです。仕事をもらえている要素の中に、パンクは確実に入ってきますね。「キン肉マン」とか「北斗の拳」とか「(疾風伝説)特攻の拓」とか、いろんな要素があるんですが、パンクもそのうちのひとつです。

 かといって、わざわざ「パンクっぽくしよう」と思って何かをしているわけではないですけどね。「人と違うことがしたい」とか「破壊的である」とか反骨の精神とか、そういうパンクの精神のようなものは自然と出ているのかも知れませんね。何にしたって、ツレ周りが誰もやっていないことをやりたいという衝動がまず最初にあるというか。

プラモデルのように飾る鋲ジャン 最高傑作は?

⎯⎯ ご自身の最高傑作と思う一着を教えてください。

 最高傑作は今一番手前にかけているこれかなあ。一番前に置いてるし。あとは時東ぁみさんを背中に描いた「ぁみジャン」も気に入っています。見ますか?

写真中央

⎯⎯ ぜひお願いします!

「名前は時東ぁみさん自身に書いてもらいました。自分の名前なのにバランスが絶妙に悪いんですけど」

 打ち立てはまだ鋲がパキパキすぎるんですが、時間が経つと色がくすんでいってかっこよさが増すんです。

⎯⎯ 完成した作品を実際に着て外出することはありますか?

 なかなかないですよ(笑)。プラモデルと一緒で、作って置いておきたいという感覚なんです。着て歩くことより、作りたいという意欲のほうが強い。プラモデルを持って歩かないのと同じです。

⎯⎯ 鋲ジャンは形としては服ですが、ファッションよりもアートに近い感覚なのでしょうか。普段のアーティスト活動で制作する絵画作品と制作時の感覚の違いはありますか?

 工程は違えど、感覚は同じですね。

⎯⎯ ファッションとアートはどのような差があると思いますか?

 ファッションもアートなんじゃないですか?「着るアート」とか言ったらカッコ悪すぎるし恥ずいけど。気に入っている服は家でも飾っていますし、あまり境界を意識したことはないです。

⎯⎯ 鋲ジャン作りに興味を持った読者にアドバイスをするとしたら?

 作りたがる奴なんているんですかね。でも確かに、先日アイドルグループのINIの池﨑(理人)くんがYouTubeを見て「自分も作りたい」と言ってましたね。ごく稀にいますね、そういう変わり者も(笑)。

 でも、想像以上に苦痛を伴うので本当におすすめしないですけどね。途中でやめたくなっても革ジャンに穴が空いてしまうので後戻りもできないし。通気性は良くなりますけど。そもそも、おしゃれだからやろうという感覚にはならないんじゃないですかね。作っていてもわけわからんですもん。

⎯⎯ 自分で鋲ジャン作りに挑戦する時、「ダサくないか」という不安が発生しそうです。くっきー!さんは、かっこいいとダサいの違いはどこにあると思いますか?

 あまり考えたことないけど、これまで他人が作った鋲ジャンをみて「かっこわる」と思ったことはないです。「えみじゃん」はある種「ハズし」ですが、基本的には鋲ジャンは好きなバンドをモチーフに作るものです。なので、例えパンクバンドでも鋲ジャンを着なそうなバンドを選んでいるとちょっと違うのかな。いっそのこと「えみじゃん」くらい飛ばしてたら面白いと思うんですけど……。でも基本的に鋲ジャンを作ろうなんて思う人は、みんなこだわっているからそんなことしないですけどね。逆に俺の鋲ジャンを見て「ダッセー」と思うやつもいっぱいいると思うんで、人それぞれです。だから気にする必要ないですし、人に見せる前提で作らなくていいと思いますよ。

2024年のベストバイにも登場してくれたお買い物好きのくっきー!さんは、今年も勢いよくお買い物を続けている。2026年の下半期に狙っているのは、ヴィンテージの「ジョージコックス(GEORGE COX)」or「ロボット(ROBOT)」のラバーソール。

photography: Kiyo

最終更新日:

◾️鋲じゃん展 by くっきー! in 大阪
期間:2026年8月8日(土)~8月11日(火・祝)
会場:LOKKI GALLERY
所在地:大阪府大阪市西区南堀江1-1-12 平和ビル3階
営業時間:11:00~19:00 ※最終入場時間は閉館15分前
料金:前売・当日共 グッズ付き入場券 一般1000円、学生以下500円、未就学児無料 ※チケットは前売・当日共に全チケット日時指定。※予定枚数がなくなり次第販売終了
チケット販売サイト

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くっきー!

「えみじゃん」はオークションで販売もしますが、オークションに参加するしないは別にどちらでも良いので、まずはえみじゃん、いや「(大阪の)ヌシジャン」を拝みに来てほしいです。ビリケンとか食い倒れ人形とか、大阪はパンクが熱い街でもあるので、数ある大阪の観光名所のひとつにヌシジャンを加えたいですね。

聞き手&文・橋本知佳子

Chikako Hashimoto

FASHIONSNAP 編集記者

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、武蔵野美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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