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上海で珈琲いかがでしょう|コラム連載 - ニイハオ、ザイチェン vol.8

上海滞在生活の日々を綴るコラム連載「ニイハオ、ザイチェン」。東コレデザイナー、海外での企画生産を経てアパレルメーカーのアジア展開を担当する佐藤秀昭氏の視点から中国でいま起こっていることをお届けする。第8回は、スターバックスコーヒーをはじめ、黒船コーヒーチェーン企業の中国進出が相次ぎ、SNSからコーヒーの香りが漂ってきそうなほどたくさんの投稿が溢れるなど、上海で最もホットなトレンドだというコーヒー事情をレポート。

(文・佐藤秀昭)

 日本に戻り、「上海で何が流行っていた?」と聞かれたら、「コーヒーが空前絶後のブームだったよ。」と答えることを決めている。

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 子曰く、「中国には5000年の茶の歴史あり。」

女性が先生を務めるセミナーの様子

中国語教室で開催された「中国茶の歴史」セミナー

 先生の教えでは、もともと中国には外来のコーヒーを飲む習慣はなかったそうだ。だが現在、上海では日々至る所で新装開店のコーヒーショップの看板を見かける。その店舗数は7000を超え、東京やロンドン、ニューヨークを超えて世界一となった。背景には21世紀になってからのスターバックス、ティム・ホートンズ、コスタコーヒーなどの黒船コーヒーチェーン企業の中国進出があり、その文化は流行に敏感な若者を中心に徐々に伝播したとのことだ。ネットの流行語である「早C晚A (朝はコーヒー、夜はアルコール)」はそんな若者のライフスタイルの変化を表している。

◇ ◇ ◇

 スターバックスが本社のあるシアトルに次ぎ、「スターバックス リザーブ® ロースタリー」を上海にオープンしたことからも、この街を重要な拠点だと考えていたことが分かる。世界で5番目にオープンした東京・中目黒の「スターバックス リザーブ® ロースタリー」と同規模の店舗にはコーヒーのスモーキーな香りと魔力に惹かれ、次々とお客さんが吸い込まれていく。

円柱形のデザインに仕上げられたスターバックス リザーブ® ロースタリーの外観

 南京西路にあるコロセウムのような店舗の入り口をくぐった1階では、バターのいい香りがする焼き立ての黄金色のパンが整然と並ぶ。また、漢字が書かれた中国オリジナルのタンブラーやマグカップに加え、Tシャツやバッグなどの小物も多く販売されている。

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スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部
スターバックス リザーブ® ロースタリーの内部

 そして、この店のアイコンである銅色の焙煎ロースターはコーヒーにまつわる言葉の簡体字で埋め尽くされ2階までを貫く。その中で焙煎された豆はガシャガシャと同じリズムで機械音を奏で、レーンに乗ってバリスタまで運ばれる。30メートルほどある長い木製のカウンターではコーヒー以外に窒素入りの中国茶も提供され、店の奥にはカクテルなどを提供するバーも設置されていた。なお、この店のカフェラテは1杯900円ほどと非常に高額な嗜好品である。

 スターバックスの店舗数は日本の1700に対して中国では5500、東京の380に対して上海では900を超えているそうだ。それだけ多くの店舗数があれども、この店で感じられる世界観は超絶怒涛だと感じた。

◇ ◇ ◇

 一方、近年は中国のコーヒーチェーンも急成長している。それらの多くは「場所」も提供する外資系コーヒーチェーンとは一線を画し、小さな店舗で一杯のコーヒーを300円程度で販売する業態が中心だ。

 創設5年に満たない「ラッキンコーヒー(Luckin coffee)」はすでに国内でスターバックスの店舗数を上回り、中国最大のコーヒーブランドとなった。また、テイクアウトとデリバリーを中心に拡大した「マナーコーヒー(Manner Coffee)」、コーヒーが苦手な層に向けてフルーツコーヒーを打ち出す「ナウワコーヒー(Nowwa Coffee)」も着々とその店舗数を伸ばしている。

Luckin coffeeのロゴ看板が際立つ外観

Luckin coffee

Manner Coffeeの外観

Manner Coffee

Nowwa Coffeeのロゴが入ったカップ

Nowwa Coffee

 そのような群雄割拠の上海コーヒー戦線の中、今年2月25日に上海の中心である静安区に、アメリカの西海岸から「ブルーボトルコーヒー」が中国に初進出した。開店初日には1杯850円のカフェラテを求めて、かつて製粉所の従業員宿舎だった赤レンガの施設をリノベーションした店舗に300人ほどの行列が出来たそうだ。

 僕が訪れた3月初旬での行列は10人ほどだった。店前に広がるきれいに刈り込まれた芝生、天井が高く開放感のある吹き抜け、アンティークの家具の並ぶ白い店内はコーヒーの香りとクリーンな雰囲気に満ちあふれていた。一杯ごとに淹れられた華やかな果実味を感じるシングルオリジンのコーヒーと、香水にしたいくらいいい香りのふわふわのワッフルはとても美味しかった。来店されていたお客さんは若い男女が多く、コーヒーやケーキを楽しみながら店内外の写真を撮っていた。中国のSNSには、そのコーヒーの香りが漂ってきそうなほどたくさんの投稿が溢れている。

ブルーボトルコーヒーの店舗の様子
ブルーボトルコーヒーの店舗の様子
ブルーボトルコーヒーの店舗の様子
ブルーボトルコーヒーの店舗の様子
ブルーボトルコーヒーの店舗の様子

◇ ◇ ◇

 なお、日系企業では以前紹介した友人がバリスタとして腕を振るう福岡発インダストリアルコーヒーショップである「NO COFFEE」や、コーヒーチェーンとしても「ドトール」「コメダ珈琲」などが上海にも進出しており人気を博している。僕も足を運ぶことが多い。

NO COFFEEの店舗
NO COFFEEの店舗
NO COFFEEの店舗
NO COFFEEの店舗
NO COFFEEの店舗
NO COFFEEの店舗
NO COFFEEの店舗
NO COFFEEの店舗

 柔らかいホイップクリームと、なめらかなクレープ生地の層を薄く何層にも丁寧に重ねた「ドトール」のミルクレープ。「はじめましてキラー」と名付けさせてもらっている破壊的なボリュームで逆に平和を世界にもたらす「コメダ珈琲」のみそカツサンド。

ドトールのミルクレープ

ドトールのミルクレープ

コメダ珈琲のみそカツサンド

コメダ珈琲のみそカツサンド

 ブルーマウンテンのアロマの香りが脳内にアルファ波を発生させリラックス効果をもたらすように、慣れ親しんだ味に再会すると、ふと今いる場所を忘れてほっと安らいでしまう。コーヒーの湯気の向こう側にニッポンがぼんやりと浮かぶ。近く訪れる旅立ちの日、上海と東京はどんな空の色をしているのだろうと思う。

小沢健二「エル・フラゴ(ザ・炎)」/ドラマ「珈琲いかがでしょう」主題歌

佐藤 秀昭

Hideaki Sato

群馬県桐生市出身。早稲田大学第一文学部卒業。在学中に、友人とブランド「トウキョウリッパー(TOKYO RIPPER)」を設立し、卒業と同年に東京コレクションにデビュー。ブランド休止後、下町のOEMメーカー、雇われ社長、繊維商社のM&A部門を経て、現在はレディースアパレルメーカーの海外事業本部に勤務。主に中国、アジアでの自社ブランド展開に従事。家族と猫を日本に残し、2021年9月からしばらくの間、上海長期出張中。

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