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控えめながら愛らしい腕時計 ティファニーの「クラシックスクエア」【連載:sushiのB面コラム】

クラシックスクエアのイラスト
クラシックスクエアのイラスト

控えめながら愛らしい腕時計 ティファニーの「クラシックスクエア」【連載:sushiのB面コラム】

クラシックスクエアのイラスト

ファッションライターsushiが独自の視点で、定番アイテムの裏に隠れた“B面的名品”を紹介するコラム連載「sushiのB面コラム」。第11回はドレスコードが厳しい就職活動を共に戦った相棒、ティファニーの腕時計「クラシックスクエア」の魅力を綴る。

 ファッションには2通りの楽しみ方があると思う。一つは、年齢や性別を気にせず、アイテムの文脈を自由に解釈する(場合によっては無視する)という楽しみ方。もう一つは、縛りがある中でいかにファッション表現ができるかを試みるという楽しみ方だ。

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 僕はもっぱら前者の方を好むが、社会生活に身を置いていれば、縛りの下で服を着ることを求められることはしばしばある。大事な客との商談や冠婚葬祭などがそれだ。さすがに葬の部分で自我を出す勇気はないが、それ以外の場ではTPOやドレスコードというルールがあっても、その縛りの中でいかにファッションを楽しむか、という事に心血を注ぐのもファッションの醍醐味である。特にメンズファッションはフォーマルのルールも細かく、遊べる余白が少ないのだが、その中でも余白が残されている部分だと思うのが「腕時計」というカテゴリーだ。

 細かい話をすれば、フォーマルの度合いが強い場ではシルバー系統の色のケースで薄型のドレスウォッチ、とか、ストラップはブラックのエキゾチックレザーが良い、など色々あると思うが、ドレスの本場イギリスでは紳士はアクセサリーを付けないものとされ、腕時計は装飾品として捉えられていた。そういう意味では控えめであることが良しとされているのだが、そもそも腕時計が装飾品として捉えられているのなら、ある程度の範囲内であれば遊びを加えても構わないという事にならないだろうか?というのが個人的な解釈なのだが、過大解釈だろうか。

 僕にとって人生で最初の明確なドレスコードとの戦いは就職活動だった。スーツは黒、靴はストレートチップで、鞄は面接時に倒れないように自立するもの、ネクタイは無地かレジメンタルで無難に…...など、今思い出してもげんなりするような「とにかく悪目立ちするな」という守りのドレスコード。そんな状況下でも(そんなことをしている場合ではないのだが)なるべく自分の好きなものを、お洒落なものを身に着けたいという想いで当時購入し、今でもとても気に入っている腕時計がある。それが「ティファニー(Tiffany & Co.)」のクラシックスクエアというモデルだ。

 宝石商として世に名を馳せ今もなおジュエリー界において重要な役割を果たしているティファニーだが、実はウォッチメーカーとしてもその歴史は長い。ティファニーが世界三大時計メーカーの一角である「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」と契約を結び、アメリカで初めてパテック社製時計を販売する企業になったのが1847年。一流ダイヤモンドリテーラーとして定着するきっかけとなった、1848年のヨーロッパからの宝石買い付けよりも前にさかのぼるのだ。米国の要人たちに愛されるブランドとなった後も、ブロードウェイ550番地のアトラスクロックと呼ばれる公共時計をはじめ、ニューヨーク市内計400機にわたる公共時計の整備をするなど、実はその発展の歴史において、ティファニーと時計は密接な関係にある。

 ティファニーの時計にも長年名作として愛される定番モデルのアトラスや、現在は廃番になったがレクタンギュラーの文字盤を90度倒したデザインが独創的なイーストウエストなど、いくつか著名なモデルがあるが、今回紹介したいクラシックスクエアは少々古いモデル。ケースはスクエアとレクタンギュラーのものがあり、文字盤の種類も複数存在する。

 僕が所有しているのはレクタンギュラーでアラビア数字の文字盤のもの。このデザインバランスがなんとも絶妙で、ステンレスで小ぶりのミニマルなケースは程よく禁欲的なルックスながら、ぽってりとした数字はどこか愛らしく、控えめではあるが目を引く可愛らしさがある。個人的には「ジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)」のレベルソと、アンティークの「「ロレックス(ROLEX)」のオイスターパーペチュアル(バブルバック)のアラビア文字版モデルが合わさったような、なんともちょうどいい塩梅のデザインが他にはない良さだ。

着用イラスト

* * *

 僕がこの時計に出会ったのは就職活動が始まるという頃で、まともな腕時計を持っていなかった。が、就職活動ではスマートフォンが使えないグループワークなどで細やかに時間を確認しないといけないため時計はマストとのことで、ちょうどいい物を探していた時期だった。「ちょうどいい」と言いつつ、曲がりなりにも服好きの端くれである手前、間に合わせのものは買いたいとは思えず、しばらく色々なものを探して回った結果、最終的に自分が欲しい!と思った時計は、実はティファニーではなく「カルティエ(Cartier)」のタンク ルイ カルティエ ウォッチだったのが正直なところだった。しかしながら、学生の身分でカルティエに手を出す様な金銭的な余裕は当然なく、頭を悩ませていたところに、たまたま中古で手頃な値段で発見したのがティファニーのクラシックスクエアだった。

 確かに、初めにこれだ!と思った時計ではないが、非常に好みのデザインであったし、ティファニーのウォッチメーカーとしての歴史を考えても「これはいい時計だ」と素直に思えたので、カルティエは一旦忘れて、就職して立派に稼げるようになるまではこのクラシックスクエアに相棒になってもらおうという事で購入を決めたのをよく覚えている。

 実際に手にしてみると、そのデザインはよく自分の好みにハマっており、控えめなサイズ感もいい意味で悪目立ちしない。守りに入らなければならない就職活動のドレスコードの中で、少し周りと違うお気に入りの時計がいつも手元にあるというのはモチベーションに繋がり、少々憂鬱だった就活用のスーツを着るときの気分を底上げしてくれる存在だった。

 クラシックスクエアを購入した当時は、「今はこの時計で頑張って、将来は理想のモノを買おう」と生意気ながらに思っていたのに、今では社会人になってからも様々な大事な場面を共にしてきた相棒になっており、別の時計を買うモチベーションがイマイチ湧いてこなくなった。機構の複雑さやステータス的な意味ではもっと高級な時計は世の中にも存在はするが、僕の中でティファニーのクラシックスクエアは第三者的な価値観では測れない良さが生まれている、思い入れの深い一本だ。

>>次回は11月30日(水)に公開予定

15歳で不登校になるものの、ファッションとの出会いで人生が変貌し社会復帰。2018年に大学を卒業後、不動産デベロッパーに入社。商業施設の開発に携わる傍、副業制度を利用し2020年よりフリーランスのファッションライターとしても活動。noteマガジン「落ちていた寿司」でも執筆活動中。

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