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一枚990円なのに超名品 「ギルダン」のタンクトップ【連載:sushiのB面コラム】

タンクトップのイラスト
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一枚990円なのに超名品 「ギルダン」のタンクトップ【連載:sushiのB面コラム】

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ファッションライターsushiが独自の視点で、定番アイテムの裏に隠れた“B面的名品”について語るコラム連載「sushiのB面コラム」。第30回で取り上げるのは、Tシャツの定番としても知られる「ギルダン(GILDAN)のタンクトップ。世に溢れるさまざまなタンクトップの中でも際立つ、ギルダンを名品たらしめる要素とは。

 37、36、38、38、36、36、37⎯⎯さて、これは何の数字の並びであるかご存じだろうか。そう、この記事を執筆している本日から今後一週間の名古屋の予想最高気温である。バカなのか。今年の夏、さすがに暑すぎる。もちろん暑いのは毎年の事であり、筆者とて知恵がないわけではないので、夏とかいう“ちょっとワイルドな見た目を良しとし、しつこくて声のデカい男”みたいな季節と仲良くやろうと、なんとか試みるわけだが、こういう奴は基本的にこちらの話を全く聞いていないようなタイプなので会話ができるハズはなく、結局こっちが合わせてやらないといけない羽目になるのだ。こういう男は絶対にモテないだろう。声のデカい奴は得意ではない。なんにせよ今年の夏は何らかの対策を打たなければ“やられる”という危機を感じさせる暑さだ。心からご勘弁願いたい。

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 そんな今年の夏への対策もとい適応についてだが、筆者は一身上の都合で、これまではどれだけ薄着になっても「ヘインズ(Hanes)」のビーフィーTシャツ(6.1oz)一枚までが限界だったのだが、1年半ほど前からジム通いを始めた都合で、最近はジム限定で渋々タンクトップを着用するようになった。上半身のトレーニングの際に、袖が割と邪魔になるのである。そしてタンクトップを着用するようになってから、トレーニングがしやすくなったこと以外に大きなメリットがあることに気が付いた。タンクトップは袖がない分、Tシャツよりも涼しいのだ。当たり前かもしれないが、個人的にこれには目から鱗であった。

 という訳で、今回は筆者が愛用している「ギルダン(GILDAN)」の6.0ozウルトラコットンタンクトップを紹介したい。

* * *

 ギルダンのブランド名はおそらく見たことがある人がほとんどなはず。高校のクラスTシャツとか、バンドのグッズ、スポーツクラブチームのパーカ、企業の販促用ユニフォーム等々、知らずに手に取っている人も多いだろう。ギルダンのプロダクトは想像以上に生活の中にあふれている。それもそのはずで、ギルダン商品の販売枚数は年間7億着以上に上り、数ある著名なTシャツブランドの中でも世界トップシェアのブランドである。Tシャツ大国であるアメリカ国内においても約70%と圧倒的なシェアを誇り、同社が掲げるブランドスローガン「Part of Your Life」は、そんなギルダンのアパレルブランドとしての在り方を良く表現していると言える。プレーンで安価、流通性が高く機能的で普遍的。1984年の創業時からみんなが求める“普通”を実直に提供し続けるインダストリアルブランドだ。

 そんなギルダン社のプロダクトは、プリント市場に向けたものが大きな割合を占め、同社といえば上で挙げた通り、プリントモノのプロダクトのボディとなるTシャツやスウェットのイメージが強い。一方で、個人的にここ一年ほど自分の中で大ヒット中なのが同社のタンクトップで、これがとにかくあらゆる面で“丁度良い”、隠れた名品なのだ。

 以前のコラムでも語ったが、僕は肌の上に直接着用するTシャツなどの肌着類に対して、サイズ感やオンス数などのクオリティ面に加えて、日常着として着回すに耐えうるギア性や価格設定など、強いこだわりがある。ジムでタンクトップ一枚になる以上、ヒヤヒヤするのでボディラインは拾わないでほしいし、少しくらい汗をかいても不快にならない程度のシャリ感のある生地であってほしい。雑に扱う前提なので気負いせず買い換えられる価格帯でないと意味がないし、いつでも買える気軽さが欲しい⎯⎯こんなわがままな要望にも余すことなく応えてくれるのがギルダンである。

タンクトップのイラスト

 ギルダンのタンクトップは、アメリカ企画らしいゆとりのあるボックスシルエット。ドライな質感のコットン生地は肌触りも涼し気で、洗濯機でグルングルンした後に乾燥機でカリカリに乾かしても質感が損なわれないのが良い。

 また、個人的にタンクトップは、一枚で外に出られるTシャツと肌着の中間的な要素もあると考えていて、脇や首元の開き具合の設計について、よりシビアな基準をクリアしていることを求めてしまう。あまりに開きすぎていればだらしないし、逆に詰まりすぎていてはリラックス感が損なわれる。ギルダンのタンクトップはこのサイズ設定が絶妙で、リラックス感を確保しつつも、普通に過ごす分には肌が見えすぎることがない程度のバランス感で、見知らぬ人にだらしない部分を晒す可能性も低く、安心感がある。必要な時にアマゾンで注文すれば次の日には届く。極めつけは一枚900円弱という価格破壊ぶりであり、日常着=ギアとしての申し分なさを高いレベルで実現する逸品と言える。

 個人的にこのタンクトップを名品たらしめるポイントだと思うのが、肌に直接触れる肌着としての設計性の高さにある。特に配慮が感じられるのが、脇に縫い目がない丸胴仕様と、首元タグを簡単に取り外せるティアウェイ仕様である点。幼少期から肌着のタグが体に触れるのが大の苦手で、今でもありとあらゆる肌着のタグを切除している自分にとっては本当にありがたい設計で、ただ単にタフでコストパフォーマンスが高いだけではない、タンクトップとしての“肌着性の高さ”にこそ真価が潜んでいる、そんなプロダクトなのである。

* * *

 このタンクトップを発見してから、これまで愛用してきたヘインズのビーフィーに加えて、このギルダンもワードローブのレギュラーメンバーとなった。今ではその快適さに取り憑かれてしまっており、ジムのみならず部屋着に昇格し、ちょっと外に出るくらいならそのまま出てしまう。夏に関してはもうギルダンのタンクトップ無しでは生きていけない体になってしまった。

 先日、知人数名とコテージを借りて遊びに行った際も、夜のリラックスウェアとしてこのタンクトップを持参した。昼間のBBQからこの格好で呑んでいると、知人の一人から「髪も伸びて筋トレで体もごつくなって、タンクトップとか着るようにもなって、雰囲気ワイルドになったな、声デカそうな見た目になった」と言われてしまった。こういう男は絶対にモテないだろう。

>>次回は8月31日(土)に公開予定

15歳で不登校になるものの、ファッションとの出会いで人生が変貌し社会復帰。2018年に大学を卒業後、不動産デベロッパーに入社。商業施設の開発に携わる傍、副業制度を利用し2020年よりフリーランスのファッションライターとしても活動。noteマガジン「落ちていた寿司」でも執筆活動中。

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