今年のお買い物を振り返る「2022年ベストバイ」。21人目は本企画の常連で、記念すべき10年連続の出演となった繊研新聞社 編集委員の小笠原拓郎さん。今年9月のパリコレ出張でロストバゲージしていまい、「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」の3ピースなど総額数百万円の服や靴が行方不明になってしまったそうです。ロストバゲージで紛失しなかった、そして着るものが無くなったパリで買い足したものなど、小笠原さんが今年買って良かったモノ8点を紹介します。
目次
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FUMITO GANRYU ダウンジャケットとパッデッドブルゾン
FASHIONSNAP(以下、F):丸龍文人が手掛ける「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」のダウン。ジップアップタイプとテーラードジャケットのようにボタンで留めるタイプの2種ですね。一見セット売りにも見えますが、別売りだったんですね。
小笠原拓郎(以下、小笠原):一応、ブルゾンはダウンではなくポリエステルの中綿で、ジャケットタイプはダウンです。シーズンは2021年秋冬のものになるんですが、2022年秋冬コレクションを見て、全体に新しいものが出ていないと思ったので、珍しくセールで購入しました。先日、丸龍さんに会ったら「しっかりアップデートしているんですよ!」と言ってましたが(笑)。でもジャーナリスト視点でみると、やっぱりコロナ禍は継続のデザインがすごく増えている。トレンドがあんまり変わっていかないというか、デザイナーが新しいものを模索するという傾向がちょっと希薄になっている気がしていて、それなら去年のものでもいいかなと。
あと余談になりますが、9月にパリでロストバゲージにあってしまって。メゾン マルジェラや「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」、「キディル(KIDILL)」などのアイテムのほか、2年前この企画にも出した「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のレオパードジャケットも紛失してしまった中、このダウンは搭乗時に着用していたから手元にあるんです(笑)。
F:パリコレ初日で着用分以外がなくなったわけですか......。
小笠原:20アイテムくらい入っていたので、流石に航空会社には文句を言いましたね(笑)。今も探すと言っているけど、果たして本当にまだ探してくれているのかどうか。それで頭を抱えていたんですが、現地でコム デ ギャルソンのスタッフの方に偶然お会いして、お話ししたら、パリのコムデギャルソンの店を通じてヘルプしてくれました。
F:それでなんとかパリコレを乗り切ることができたんですね。話が逸れましたが、フミト ガンリュウのダウンはどのあたりが気に入ったんですか?
小笠原:サイドについているコンシールファスナーを開けると、開きが出てシルエットが変化し、さらにドローコードを引っ張るとシェイプが変わる。青い方はおそらく、昔のウィメンズジャケットのパターンから着想しているのでしょう。これまでダウンはあんまりオシャレ着として認めていないところがあったんですが、これはクチュールライクなシルエットが他にない感じで気に入りました。ショーでは2枚重ねたスタイリングを披露していて、それもいいなと。実際重ねて着たりしていますね。
F:2枚重ねは東京で着るには暑そうですが。
小笠原:確かにそうかもしれない。でも「ダブレット(doublet)」が栃木でショーをした時に着ていったんですがちょうど良かったですよ。まあ、あの日がとても寒かったからかもだけど(笑)。
FUMITO GANRYU スウェット3種
F:続いてもフミト ガンリュウですね。スウェットのセットアップとパンツは色違いを購入されたんですね。
小笠原:去年からジムに再び通い始めたんです。ランニングはしていましたが、流石に体型を維持できなくなってきていて、ちゃんと鍛えないとなと(笑)。それでジムの行き来にこのスウェットはちょうどいいなと思って購入しました。もちろん普段着としても着用しています。
F:パンツはフミト ガンリュウらしいサルエルシルエットですね。
小笠原:そうですね。サルエルパンツは好きで良く穿いています。あとこのパーカはフードの形も綺麗なんですよ。
F:以前のようにショーではなく展示会での発表が続いているフミト ガンリュウについてはどんな印象を持っていますか?
小笠原:以前よりシンプルになりましたよね。その分、物作りにコンセプトがしっかりあって、そのストーリーを読み解かないと本当の良さが見えてこないなと。あと「アキラナカ(AKIRANAKA)」のナカアキラさんと話しても思ったことですが、今パリコレに出てショーで新作を発表することに本当に意味があるのか、ということは考えるようになりました。今はクリエイションの新しさを競い合うことよりも、ブラックピンク(BLACKPINK)などのインフルエンサーを呼んで、ブランドの新作を着てもらい、SNSで発信してもらう。これが今のラグジュアリーブランドのやり方ですが、こことインディペンデントデザイナーが同じ土俵で見せる必要があるのか。パリコレクションが陳腐化していっているって思います。「トーガ(TOGA)」なんかまさにそうですが、新しい見せ方を模索していかないととみんな思い始めている。だから別にショーに固執する必要はないと思います。
F:正直、そういったインフルエンサーマーケティングには飽きましたよね(笑)。
小笠原:コロナも落ち着いてきたので、来年は動きがあると期待しています。クリエイションで勝負しようと思っているデザイナーたちは皆さんそう思っていますから。
COMME des GARÇONS HOMME PLUS ショートパンツ
F:続いては「コム デ ギャルソン オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)」の2022年春夏コレクションのパンツですね。ズバリ決め手は?
小笠原:これくらいのサイズのハーフパンツは春夏の季節に使い勝手がいいなと前から思っていたのと、ハーフパンツの買い替え需要にハマったというのもあります。あと不織布の感じがちょっと今までのと違って良いんですよ。
F:紙のような素材ですね。もちろん洗濯はできないですよね?
小笠原:できませんね(笑)。あとこれバリバリなので、穿いて車を運転したら座席に粉みたいなのが付着するんです。なので穿いて車に乗った後はいつも掃除をしています(笑)。
F:(笑)。どういう合わせ方をされているんですか?
小笠原:Tシャツや半袖のスウェットなどシンプルなアイテムに合わせることが多いですね。そういえばこのパンツ、米国のファッションコンサルタントであるニック・ウースター(Nick Wooster)と丸かぶりで(笑)。せっかくなので記念撮影しましたよ。
F:ギャルソンの話で言うと、コロナ後初めてパリでショーを行いましたね。約2年半ぶりのパリコレ参加でした。
小笠原:2023年春夏コレクションは、やっぱり川久保さんがこの間ずっとやってきたアブストラクトな概念の服がやっぱり軸なんだけど、不思議だなと思ったのがやっぱりそれが従来の怒りみたいなものを秘めているものもあれば、今回はすごい優しさみたいなものを感じました。それがなんだか不思議だなと思いました。
F:川久保さんの中で心境の変化があったんですかね?
小笠原:戦争が起きている今の世界情勢下で、ものを作ることでなんとかしてあげたいというか、支えたいみたいな気持ちがあったとは言っていましたけど。そういった思いがアイテムに落とし込まれて、見る側に伝わったのかもしれません。
Maison Margiela×MACKINTOSH ゴム引きコート
F:こちらは「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」と「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」のコラボレーションによるゴム引きコートですが、これはいつ頃購入したんですか?
小笠原:これはパリでロストバーゲージしたあと、現地で買い足したアイテムです(笑)。
F:金額もすごそうですね(笑)。
小笠原:やばかった(笑)。3000ユーロ以上したと思う。
F:内部構造もすごいですね。前身頃裏に付いているこれはなんですか?
小笠原:これはチンストラップです。前を閉じて襟を立てた時に、風が入ってこないようにこうやって付けるものなのかなと。
F:なるほど。いいですね、しっかり収納できるので無くすこともなさそうです。
小笠原:そうそう。古いトレンチコートにはよく付いてますよね。
F:同じく前身頃裏にあるベルトはなんですかね?
小笠原:マッキントッシュっていろんな形がありますが、多分ガリアーノがそれらのアイテムのディテールを拝借したんだろうなと。マッキントッシュにバイカーコートがあるけど、それには外側に大きなポケットがついているんです。郵便配達する人に向けたディテールで、手紙をそこに入れられるという。で、このベルトのディテールは何かと言うと、バイクに乗る時に脚に巻き付けて濡れないようにするためのディテールなんですよ。
F:ガリアーノのデザインって一見大味に見えてしまいますけど、しっかり細部を詰めているのが魅力ですね。ゴム引きは結構持っているんですか?
小笠原:ゴム引きは持っていなかったんですよ。妻が持っていて、それを着たことはありますが。正直ゴム引きって日本の気候にあんまり合わないんですよね。梅雨の時期だと蒸れてしまって汗ダラダラですし。ヨーロッパなどでは活躍すると思うんですが。
F:ポケットのフラップ裏のチェック柄も可愛いですね。
小笠原:いいですよね。一見ベーシックなんだけど存在感があって、合わせやすさもある。
F:ただしかし、海外ブランドの価格高騰は今凄まじいですよね。
小笠原:高いですよね。もうしょうがねぇなと思って買っています(笑)。
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