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【インタビュー】デザイナーの「思考の核心」にいかに迫れるか Aマガジン編集長が説くメディアの在り方

ブレイク・アビー

Image by: ©JFWO / MAYUMI NAKANO

ブレイク・アビー

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ブレイク・アビー

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 カルト的人気ファションマガジン「システム(System)」でキャリアを積み、現在は「Aマガジン(A Magazine Curated By)」の編集長として、ファッションを独自の文化的な文脈で捉えてきたブレイク・アビー(Blake Abbie)。自身を「ファッションエディターだとは思わない」と語るブレイクの、独自の編集哲学とは。

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自分をファッションエディターだとは思わない

──ブレイクさんが携わってきたシステムでは批評的な記事に定評があり、Aマガジンではブランドを主観的にフィーチャーするスタイルが軸にあると思います。現代のファッション業界において客観性と主観性のどちらが必要だと考えますか?

 答えから逸れてしまいますが、私にとっては、システムもAマガジンも根本的なアプローチは同じです。だから回答としては片方に優位性があるとは思いませんね。ただ、この問いは現代のファッションメディアが抱えるジレンマとして非常に理解できます。

──“ジレンマ”で言えば、SNSの台頭による“個人のメディア化”で専門誌や媒体の発信方法も変化が求められています。

 僕も一人のユーザーとしてSNSは楽しく利用するし、誰もが意見を持てるのは素晴らしいことだと思います。とはいえ、これは個人の考えですが、すべての人が主観的意見を発信すべきかというと、少し違うのかなと。ファッションが開かれたものである事に越したことはありませんが、十分な知識や文脈理解を持ち、明確な根拠に基づいて批評を行うことと、単なる個人の好き嫌いでジャッジメントは似て非なるものです。読者にとって、これらの区分がないまま発信され続けてしまう昨今の潮流には思うところがありますね。

──ブレイクさんは長年ファッションメディアの最前線にいらっしゃいます。編集者として、ファッションという対象にどのようなスタンスで向き合っているのでしょうか。

 僕らの中で一貫しているのは、ファッションとカルチャーの「接続性」です。システムを始めた当時、ファッションを純粋にカルチャーとして語る媒体はほとんどありませんでした。多くのメディアにとっての主題は「スタイル」や「デザイン」そのものだった。でも僕らは、デザイナーという存在を、もっと広義の「文化的な人物」として捉えたかったんです。

──では、2誌のアプローチの違いは

 本質的には同じですが、視点の向きが異なります。システムが「ファッションをカルチャーとして見る」ものだとしたら、Aマガジンは「ファッションという視点からカルチャーを覗き込む」もの。伝わりますかね?ファッションをどうインテグレート(統合)するかの手法が違うだけで、根底にあるカルチャー観は共通しています。

 ただ、こうして編集者としての話をしていますが、実は自分のことを「ファッションエディター」だとは思っていないんです。

──意外ですね。それはなぜでしょうか。

 僕の友人には、「ヴォーグ(VOGUE)」や「ハーパーズバザー(Harpers BAZAAR)」、ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」といったメディアで筆を執る“本物の”ファッションエディターやジャーナリストたちがいます。彼らの仕事は誌面でのエディトリアルもありますが、ショーや業界の動向といった「ニュース」を正確に報道すること。起こった出来事を社会に「反映(リフレクト)」する、非常に重要な役割です。

 一方で、僕がやってきたアプローチは少し異なります。僕らがマガジンで作っているのは、ニュースではなく「瞬間」の記録なんです。

──「瞬間の記録」ですか。

  感情の揺らぎや、時代の一瞬を切り取ることと言えるかもしれません。例えばシステムでは、今まさに影響を与えている人物にフォーカスし、半年間その人と向き合い、彼らが何を伝えようとしているのかを深く掘り下げてきました。川久保玲さんに約30年ぶりのロングインタビューを行ったとき、僕らが聞きたかったのは、最新コレクションの話ではなかった。彼女がファッションカルチャーに与える絶大な影響、つまり「ストーリー」を記録したかったんです。

──Aマガジンで扱う内容も「ニュース」ではない。

 Aマガジンではよりニュースとは距離を置いているかもしれません。一冊作るのに半年から一年、オファーやその前段階のコミュニケーションを含めればもっと長い期間が必要です。僕らはデザイナーに対して何かのトピックを「取材」するのではなく、彼らのインスピレーションや夢、希望、あるいは個人的な感情を辿りながら、「一緒に新しいものをつくる」ことを目指しています。

 こうして話してみて思ったのは、やはり自分の役割は起きたことを反映するようなジャーナリストではなく、共創のためのアートディレクター、スタイリストに近い立場なのかなと。

──情報のスピードも極限まで上がっています。その中で、「時間をかけたメディア」を維持することに難しさを感じることは?

 プレッシャーはありますよ。ブランドや広告主からは、自分たちにとって良い形とタイミングになるよう、よりクイックな露出が求められますから。でも、先ほどお話ししたように、ファッション業界にはニュースを届けるメディアが既に存在しているので、僕らもそれに倣う必要はない。時代の変化を見極める必要はありますが、それぞれのメディアが持つ「死守すべき本質」を見逃すと存在意義を失います。

 人々がAマガジンに求めているのは、ファッションウィークの速報ではないんです。デザイナーとの深い関係性、彼らの「思考の核心」にどう迫るか、というプロセスそのもの。僕らが「デザイナーのクリエイティブパートナー」であるために、彼らに向き合い制作する時間は必要不可欠なのです。

──デザイナーのクリエイティブパートナーになるために、どんなことをしているのでしょうか。

 時に、心理学者のように彼らの内面や思考プロセスに“潜り込んで”いきます。自分自身がデザイナーになりきってインプットし、考えてみるのです。「セシリー(セシリー・バンセン)はこれは好きだけど、あれは好きじゃないだろうな」とかね。彼らの鏡のような存在になり、アイデアの壁打ち相手になりながら、最初のアイデアをどこまで意外な方向に持っていけるか一緒に考えていくんです。

東コレで見つけた、注目ブランドは?

──東京ファッションウィーク期間中の日本滞在は初めてだそうですね。「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 A/W」(以下、東コレ)でインスピレーションを感じたブランドはありましたか?

 まだウィークの途中なので、他にも発見するかもしれませんが、今まで見た中だと「ヨーク(YOKE)」や「ユウショウコバヤシ(yushokobayashi)」が印象深かったです。

──ヨークはどんなところに惹かれましたか?

 セットも音楽もかなりミニマルなものでしたが、服自体がブランドのコアを語っていた。テキスタイルの使い方が巧みで、テクスチャーも豊富。シルエットの遊びもあり、とても考え抜かれた服だということが伝わりました。そうでありながら、まとまりがあり、「明確」だったからです。

 僕個人の感性ですが、「分かりやすい服」は良い服だと思います。商業的な服ということではなく、着られる服。最近はコマーシャルでもクリエイティブでもない、中途半端なものも見受けられます。そういう明確さに欠いたショーはとても退屈です。

──ユウショウコバヤシのショーも分かりやすかった?

 彼のショーは特に心に響きました。たくさんのアイデアを感じましたが、それらがしっかりと一体化して機能していたと思います。ポエティックで、日本的な情緒があり、夢を見させてくれました。

 日本に限ったことではないのですが、特に若いデザイナーは「テクニックを見せようとしすぎる」傾向があります。ただし、複数の要素が“乱立”すると、途端につまらないものになってしまう。実験的な姿勢は大切ですが、時には機能を絞り、アイデアを次のシーズに温めておく決断が必要でしょうね。

 話を戻しますが、そういう意味で彼(ユウショウコバヤシ)のショーは作り込んでいて情報量が多かったにも関わらず、やりたいことが明確でした。すぐにアトリエに伺うアポをとりましたね。

FASHIONSNAP

FASHIONSNAP(Koji Hirano)

──ブレイクさんはパリ、ミラノだけではなく、上海や台湾などローカルなファッションウィークにも足を運んでいます。東京のファッションウィークに感じたことを率直に教えてください。

 もっと面白くなりそうだなと感じたのは、会場のバリエーション。予算や複雑な理由があると推察しますが、ブランドのクリエイションに適した会場選びが叶えられると、ショーの精度も高まりそうだと感じました。

 実務的な要望を挙げるとすれば、僕のような海外からのゲスト向けに、各会場を回るための「専用車」があると、より多くのショーを見ることができると思います。僕はアジアに慣れているので問題ありませんでしたが、初めて東京を訪れる同業者にとっては、自力での移動は少しハードルが高そうに見えました。……とはいえ、このインタビュー会場には事務局の方々もいらっしゃるので、目の前で言うのは少し気まずいですね(笑)。でも、次回もぜひ来たいと心から思っていますよ!

──(笑)。東コレを盛り上げるためのアイデアがあれば、教えてもらえませんか?

 運営全体ではなく、ブランドごとにもスポンサーをつけられると、ショーの表現の幅がさらに広がるのではないかと思いました。ニューヨークではどんな若手のブランドでも、2、3社のスポンサーが入っています。スターバックスもいくつかのショーを協賛していました。事務局として、ブランドとスポンサーのマッチングを仲介する機能があると良いかもしれません。

──では最後に、Aマガジンで今後取り上げたいと考えている日本のデザイナーについて聞かせてください。

 一人には絞れませんね......。川久保さんもまた取材したいです。賢三さん(高田賢三)や一生さん(三宅一生)の特集も検討していたのですが、残念ながら機会を得られませんでした。「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」といえば、近藤さん(近藤悟史)のデザイン美学にとても興味があります。「アンブッシュ(AMBUSH®)」のYOONさんも独自のカルチャーを持っていて面白い。

 千登勢(サカイ デザイナーの阿部千登勢)さんや盾さん(アンダーカバー デザイナーの髙橋盾)とも、また一緒に作りたいです。

 コム デ ギャルソン社は全員とやりたいくらい興味があります。啓さん(ノワール ケイ ニノミヤ デザイナーの二宮啓)や、淳弥さん(ジュンヤ ワタナベ デザイナーの渡辺淳弥)のクリエイションが大好きなので特に気になっています。

 この記事を見ている関係者の方がいたら、ぜひ実現させたいので連絡してください!

最終更新日:

公式サイト

FASHIONSNAP 編集記者

平原麻菜実

Manami Hirahara

埼玉県出身。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程卒業後、レコオーランドに入社。国内若手ブランド、国内メーカー、百貨店などの担当を経て、2020年にビューティチームの立ち上げに携わる。ポッドキャストやシューティング、海外コスメレビュー、フレグランス、トップ取材など幅広い観点でファッションとビューティの親和性を探る企画を進行。2025年9月より再びファッションチームに所属。映画、お笑い、ドラマ、K-POP......エンタメ中毒で万年寝不足気味。ラジオはANN派。

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