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【香水連載 vol.40】「サロン ド パルファン 2026」に来場するファビオ・ルイージって誰?

文・木津由美子

Image by: Naoto Usami

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 フレグランスの魅力とは、単に“匂い”だけじゃない。どんな思いがどのような香料やボトルに託されているのか…そんな奥深さを解き明かすフレグランス連載。
 
 今回は、伊勢丹新宿店で開催中の「サロン ド パルファン 2026」にて、「ラニュイ パルファン(La Nuit parfum)」主催のトーク&サイン会に来場するファビオ・ルイージ(Fabio Luisi)への特別インタビュー。

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NHK交響楽団高輪演奏所でリハーサル後のファビオ・ルイージ

Image by: Naoto Usami

 ファビオ・ルイージをご存じだろうか? 現在、NHK交響楽団首席指揮者をはじめ、ダラス交響楽団音楽監督、デンマーク国立交響楽団首席指揮者を務める、現代を代表するマエストロである。

 そんな人物がなぜ、伊勢丹新宿店の「サロン ド パルファン 2026」に来場するのか? それは、同サロンに出店している日本発フレグランスブランド ラニュイ パルファンの新作を調香しているから。実は彼は“調香師”としての顔も持ち、自身のフレグランスブランド「FL PARFUMS」(日本未発売)を2013年に立ち上げている。

ファビオ・ルイージ(Fabio Luisi):イタリア・ジェノヴァ出身。これまで数々の著名楽団首席指揮者や音楽監督を歴任し、N響は2022年着任。契約期間満了の2028年9月には「桂冠名誉指揮者」の称号が授与されることが決定している

Image by: Naoto Usami

 「最初に大切なことをお伝えしておきたいのですが、香りや調香は私にとって趣味であり、プロとしてやっているわけではないということです。有名な調香学校に通って調香師になったわけではありません。幼い頃から熱中していたものの一つであり、今なお情熱を捧げ、多くの時間を費やしているものではあります」

 マエストロは静かな語り口で謙虚に語るが、その学びの過程を聞くと、決して「趣味」では収まらない。

「FL PARFUMS」では、原料の調達からパッケージデザインまですべてルイージ自身が手掛け、少量ずつ丁寧にハンドメイドで製造している。品質には最もこだわっており、香料の80%以上は天然のものを使用、世界各国から最高級のものを直接買い付けている。香りによってオーデコロンやオードパルファンがあり、価格帯は130〜190ユーロ。

Image by: Naoto Usami

 「家には香水のコレクションもあるのですが、ある日、香りを作ってみようかというアイデアが生まれました。初めて原料を揃えたり、本を読みながらベースとなるエレメントを考えながら作り始めました。そして数年経った後、その時はニューヨークに住んでいましたが、元々はパリで出会っていたゲランの調香師であるティエリー・ワッサー(Thierry Wasser)に偶然にもお会いすることができまして。彼のアトリエに招待された際に、調香を学ぶサポートを何かいただけないかと相談したところ、それなら私の同僚を紹介するよと言ってくださり、ニューヨークにいたIFF(インターナショナル・フレイバーズ&フレグランシズ)のディレクター、ロン・ウィネグラッド(Ron Winnegrad)氏を紹介され、そこから本格的に香りを学び始めました。週に1、2回通い始め、それを1年間ほど続けました。お会いした頃が80歳前後だったので、彼に学べる最後の時期だったと思います。そこで彼独自の調香メソッドを学ぶことができまして、非常に素晴らしい経験と時間になりました」

長く伸びた指の美しさを引き立てているのが、きちんと手入れされた爪。「最初はピアニストを目指していたので、指は大切にケアしています」とルイージ

Image by: Naoto Usami

 ニューヨーク・ブルックリン出身のロン・ウィネグラッドは、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「カール・ラガーフェルド(KARL LAGERFELD)」、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」などでフレグランスを手掛けた調香師だが、革新的なメソッドの提唱者としても知られている。「DON’T THINK, JUST SMELL」という著書も出しているが、香りは理屈ではなく直感と記憶に委ねることをモットーとし、自身が音痴だったことから“共感覚(シナスタジア)”を用いて香りの理解を深めるワークショップを行っていたという。ワッサーは、まさにうってつけの先生を紹介したといえる。

左から:ラニュイ パルファン「7つの封印の書 オードパルファン」「グレの歌 オードパルファン」(各30mL 1万9800円、ともに伊勢丹新宿店にて先行販売中)

Image by: La Nuit parfum

 ラニュイ パルファンはラヴェルやラフマニノフなど、クラシック音楽をテーマに2021年に誕生したフレグランスブランドである。今回ルイージが手掛けたのは、「7つの封印の書」「グレの歌」の2作品だ。

 「先ほどお話ししたように、プロの調香師ではないのにもかかわらず、こういった形でご協力できたことを非常に光栄に感じています。楽曲をベースに作り上げる香りというのは、ある意味、作曲家の美意識を抽出して作り上げるような感覚を覚えます。前回日本に来た時に作り始め、そこから数ヶ月試行錯誤して完成したのがこの2つです。ひとつはオーストリアの作曲家フランツ・シュミット(Franz Schmidt)の晩年の代表作である『7つの封印の書』、もうひとつは同じくオーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg)の初期の作品『グレの歌』をテーマにしています。『7つの封印の書』では宗教的荘厳さと知性、そして人間的な温もりが共存するシュミットの音楽世界をクラシカルなフゼアを再構築して表現し、一方の『グレの歌』は後期ロマン派の作品ですので、アールデコの耽美なイメージでシトラスからウードへと香調を柔らかく展開させています」

2027年1月7日、10日、11日にはN響ニューイヤーコンサートでタクトを振る

Image by: Naoto Usami

 香りを試してみて驚かされるのは、何ひとつとして香料が際立つことのない、見事なバランス。これはやはり、名指揮者ならではの技量と思わざるを得ない。

 「香りと音楽には確かに共通用語がありますが、あえて共通点を見つける必要はないかなと思っています。シンプルな共通点があるとすれば、バランスですね。香りにおいては原料のバランスが必要になってきますし、音楽でいえば、楽器のバランスですね。そしてもうひとつ、効果においていえば、音楽も香りも直接脳に届くものであること。例えば記憶や思考、人、環境、場所、そういったものを自ら覚えよう、感じようとせずとも、自然と知覚される。そんなところも共通していると思います」

初めて買ったお気に入りのフレグランスは、ゲランの初期の「ベチバー」。「使用できない原料が増えたことで、従来の香りを作れなくなっていることがとても残念」

Image by: Naoto Usami

 ルイージの公式サイトには、バイオグラフィやプロジェクトのほか「My 4 Ws」というコンテンツがあり、その中には自分が着用するものに対するこだわりを綴ったファッションコラムもあるほど、洒落者でもある。服も身のこなしもとにかくエレガントだ。

 「そうですね、香りを作る上でも、エレガンスというものをとても大切にしています。やはりそれもバランスだと思うんですね。上品なものをまとうということは、ある意味、リスペクトするということだと思うのです。例えばオーケストラの練習でも、上品に洋服をまとうように心がけています。クラシック音楽というもの自体が皆さんのものでありつつ、努力や忍耐を非常に求められるものでもあるので、そういったところでリスペクトを見せながら、同時に自分をどのように見せるかということにも配慮しています」

 エレガントで控えめ、それでいて圧倒的なオーラを放つルイージ。その人柄さながらの香りの世界をぜひ、あなた自身の鼻で味わってほしい。

最終更新日:

◾️サロン ド パルファン イベント情報
・「ラニュイ パルファン」 指揮者ファビオ・ルイージ氏と探究する香りと音楽の世界
日時:2026年10月11日(日) 12:30
会場:伊勢丹新宿店本館6階 催物場 イベントブース
所要時間:約40分
定員:24名
参加費:無料

◾️ファビオ・ルイージ公演情報
・創立100年記念 N響ニューイヤーコンサート 大阪公演
日時:2027年1月7日(木)19:00開演(18:00開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
・創立100年記念 N響ニューイヤーコンサート
日時:2027年1月10日(日)、11日(月・祝)ともに15:00開演(14:00開場)
会場:NHKホール
※各公演の詳細はNHK交響楽団のホームページへ

◾️ラニュイ パルファン:公式サイト

文・木津由美子

ビューティ・ジャーナリスト

大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。

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