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ジャン-ミッシェル・デュリエ

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その道30年以上の調香師 ジャン-ミッシェル・デュリエが思う、フレグランスづくりの面白さとは?

BEAUTYインタビュー・対談

ジャン-ミッシェル・デュリエ

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その道30年以上の調香師 ジャン-ミッシェル・デュリエが思う、フレグランスづくりの面白さとは?

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ジャン-ミッシェル・デュリエ

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 「自分は香水を作っているのではなく、思い出を作っている」。そう語るのは、今年61歳を迎えるフランス人調香師ジャン-ミッシェル・デュリエ(Jean-Michel Duriez)氏。「ジャン・パトゥ(Jean Patou)」で先代調香師ジャン・ケルレオ(Jean Kerléo)氏の後任として、「Enjoy」や「Sira des Indes」といったヒット作を生み出し、「ラコステ(LACOSTE)」や「ロシャス(ROCHAS)」「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」のフレグランスも手がけ、第一線で活躍する調香師だ。そんなデュリエ氏は2020年に本格デビューした日本発のフレグランスブランド「サノマ(çanoma)」にも参画。ファウンダーで香水クリエイターの渡辺裕太氏とタッグを組み、”日本人のための香水”づくりに挑戦している。来日したデュリエ氏に、幼少期の思い出や、印象深いフレグランス、渡辺氏との出会いとサノマが出来るまで、最近のフレグランス業界のトレンドまで聞いた。

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■ジャン-ミッシェル・デュリエ:フレグランスの専門学校「ISIP」(現在のISIPCA)で教育を受けた後、1997年にジャン・パトゥの調香師となる。その後、ロシャスの調香師としても活躍。また、ドルチェ&ガッバーナ、エスカーダ、ラコステ、ヨウジヤマモト等、様々なブランドの香水も担当し、2016年12月、自身の名前を冠したブランド「Jean-Michel Duriez Paris」をスタート。現在はサノマをはじめ、複数のブランドの調香を手がけている。

幼い頃の夢は調香師か料理人

ーフランスはフレグランスの総本山ですが、デュリエさんも幼い頃からフレグランスに興味を持っていましたか?

 もちろん、文化的な背景は今の私に大きく影響していると思います。両親や親戚はみんなフレグランスをつけていましたし、香りは習慣として生活に根付いていましたから、幼少期から自分の中では香りに対して興味を持っていました。それともうひとつ、香りと関係して、「味」にも関心があったんです。将来の夢はいつも料理人か調香師でした。

ー最終的に、調香師の道を選んだんですね。

 調香師を選んだのはいくつか理由がありますが、ひとつ挙げるなら、ボトルの美しさに惹かれたからです。フレグランスにとって香りは最も重要なポイントですが、ボトルも同じくらい創造性に富んでいると思います。

ー印象的な香りのエピソードはありますか?

 家族が海沿いにバカンス用の別荘を持っていて、滞在している間は近くのコートでテニスをするんです。そこの近くの住宅に、イボタノキの花(別名:カワネズミモチ)の垣根があって、花の香りを嗅ぐのがとても幸せな時間でした。自転車でテニスコートと行き来する時は、花の香りを嗅ぎたくていつも遠回りしていたくらいです。実は、1998年にジャン・パトゥで作ったフレグランス「アンアムール ドゥ パトゥ」は、当時の記憶からインスピレーションを得ています。

ーアンアムール ドゥ パトゥはイボタノキの花に金木犀の香りを組み合わせたグリーンでフレッシュな香りが特徴的ですね。金木犀は先代調香師ジャン・ケルレオ氏ともなじみが深いものでしたよね?

 ケルレオさんが1970年代に手がけた「ミル」は、フレグランスの世界で初めて金木犀のエッセンシャルオイルを取り入れた香りです。ふと、そのレガシーと私自身が大切にしていた香りを組み合わせてみようと思ったんです。私の思い出とジャン・パトゥの歴史の融合で生まれたのがアンアムール ドゥ パトゥでした。

「フレグランスを作っているのではなく、思い出を作っている」

ーデュリエさんのクリエイションに影響を与えたフレグランスはあるでしょうか。

 フレグランスと人の生活の密接な関係の美しさを実感したものとしては、「エルメス(HERMÈS)」の「カレーシュ」ですね。メゾン初の女性のためのフレグランスで、私が生まれた同じ年に誕生したものです。私が高校生の時に母にプレゼントしたのですが、実は母は私が生まれたばかりのころに愛用していたそうなんです。私はそうとは知らず、母に似合うと思って選んだので、記憶と香りの神秘的な結びつきを感じたのを覚えています。

 それから、私が調香師になるきっかけになったのは「ゲラン(GUERLAIN)」の歴史的なフレグランスたちです。「ジッキー」や「ミツコ」「シャリマー」「夜間飛行」など今でも根強いファンが多い香りですね。香りの豊かさやそれを実現するテクニック、香料のクオリティのどれをとっても素晴らしいと思います。調香師の学校に入って勉強するうちにより魅了されていきました。

ーでは、デュリエさん自身が愛用しているフレグランスは何ですか?

 調香師はフレグランスを作るのが仕事で、制作時はその香りに集中しないといけませんから日常的にフレグランスをつけるかと言われるとそうでもないんです。ただ、プライベートで愛用しているのは、「ディオール(DIOR)」の「オー ソバージュ」と、エルメスの「オードランジュ ヴェルト」。2つには共通する部分があって、トップノートのシトラス系のフレッシュな部分が際立ち、中心にリッチなウッディーシプレ調が香ります。シンプルですがバランスの取れたコントラストが美しいんですよ。

ーデュリエさんにとって、調香師の面白さとは何でしょうか。

 香りを通じたクリエイティブへの興味関心があるのが大前提ですが、フレグランスを作ることでエモーションを具現化することにやりがいを感じます。エモーションの根源は思い出や記憶です。この2つは深くつながっていて、思い出から香りを生み出し、香りは記憶をかき立ててくれます。ですから、私はフレグランスを作っているのではなく、思い出を作っていると考えているんです。そして、私が作ったフレグランスを将来誰かが手にとり、その人の生活が過ぎ去りまた過去になりますよね。

「サノマ」ファウンダーの渡辺氏の第一印象は”オリジナリティに欠ける”

ー30年以上のキャリアの中で、デュリエさんは日本とも関わりがあると聞きました。

 そうですね。花王のフランスのラボで仕事をしたことがありますし、ヨウジヤマモトのフレグランスを担当させてもらったこともあるので、日本に対しては親しみを持っています。ヨウジでは主にスタッフの皆さんと試作を重ねましたが、山本さん(デザイナー 山本耀司氏)がOKするものを作るのはチャレンジでした。今ではいい思い出のひとつですね。

ーサノマの渡辺さんの第一印象はどうでしたか?

 (サノマの渡辺)裕太とは、彼が私のブランド(「ジャン-ミッシェル・デュリエ パリ」)のインターンに応募してくれて、面接で初めて会いました。当時彼はフレグランス業界に携わりたいと言っていましたが、大学院でMBAを取得していたのでファイナンス寄りの子だと思ったんです。面接にもスーツで来たので、ちょっとオリジナリティに欠けると感じたんです。ブランドのファイナンス部門を担当していたギオンと一緒に働くにはいいかもしれないけれど......という感じで。振り返ってみると、第一印象はあまり良くなかったですね(笑)。

ー実際に、渡辺さんの業務はファイナンス関連からのスタートだったそうですね。渡辺裕太氏のインタビューより

 そこに関しては最初からポテンシャルを感じましたから。ファイナンス関連の業務から派生して、徐々に参考資料の作成やベンチマークの選定など、ブランドのクリエイションに関わることも手伝ってくれました。アトリエで一緒に働くようになってから、裕太が私服で来るようになり、そこでようやくファッションが好きなことや、内に秘めた面白さに気づくことができました。良い香水に対する感性も似ていましたし、良き友人としてブランドを支えてくれました。

インターンから友人、クライアントと調香師の関係へ

ーインターンのスタートから友人になった渡辺さんから「サノマ」の調香師として誘われた時の率直な感想は?

 驚きましたが、フレグランスに関わりたい気持ちは以前から聞いていたので、嬉しかったですね。その反面、私としては調香師としてブランドに携わる責任が伴うと冷静に考えていたところもありました。ただ、コンセプトも素敵だと思ったし、私と裕太の仕事がはっきりしていたこともあって、良いコラボレーションができると可能性も感じ、引き受けることにしました。

ーインターンから友人へと変わった2人の関係性が今度はクライアントと調香師に変わりましたが、意識的な変化もありましたか?

 日本のマーケットについては裕太が熟知しているし、私は自分の精力を注いでリクエストに応えるものを作るという分業的な関係で、一層お互いへのリスペクトが高まったと感じますね。

ー渡辺さんからのリクエストで難しかったことはありますか?

 全くないですね。というのも、私自身もブランドを持っていましたから、クリエイティブと合理的な判断のどちらも理解でき、裕太が目指すところが何か解釈しやすかったんです。今思えば、裕太のインターン時代にフレグランスについて議論を深められたのも良い方向に働いたんじゃないかなと。

ーサノマのフレグランスで、調香のテクニカルな部分で意識したことは?

 サノマに限らず、私がひとつのフレグランスを作る時に最も考えているのは、香料の配合や香りの流れなどすべてがいかにまとまっているかです。簡単に言うとバランスですね。調香はある程度「この香料とこの香料を組み合わせるとこんな香りになる」と言うレシピがありますが、バランスを追求するとなると、時計を組み立てるような、無数のパーツを寸分狂わず配置していくような作業になるんです。サノマでは自分のクリエイションの根底にあるこのバランスと、裕太が考えるコンセプトをどう具現化するかが肝ですね。

ー素人からすると、コンセプトやイメージを香りで具現化する作業はブラックボックスに見えるのですが......。

 抽象的なコンセプトやイメージを具現化することこそが調香師の仕事ですからね。方法は調香師によって色々だと思います。私の場合はイメージを頭の中でヴィジュアル化して、その中の要素をピックアップしてつなぎ合わせ、香料を組み合わせてからハーモニーを整えていくことが多いですね。

 ひとつ例をあげると、私が長年温めている「キュイール(仏:革)ボックス」というアコードがあります。これは私の幼少期の記憶のひとつで、馬小屋の情景がインスピレーションになっています。動物の汗や尿、フン、小屋に使われている木材、土、干し草の香りなどをピックアップして試作が出来たらそこからフレグランスを念頭において修正していきました。こんな風にイメージ、ヴィジュアル、香りを結びつけていくんです。裕太も香りに対して似たようなプロセスを踏むのでお互いに理解しやすいですね。

フレグランス業界の最新トレンド、そして自身の今後は?

ーご自身のブランドは現在休止中ですが、現在の主な仕事はサノマでの調香ですか?

 コロナ禍でブランドを休止してから、最初のクライアントが裕太でした。今はそのほか複数のクライアントがいて、いくつかのフレグランスを同時進行で作っています。

ーひとつのフレグランスを仕上げるだけでも鋭い感覚が必要だと思うのですが、同時進行で複数作っていると言うのは驚きです。

 私からすると、驚かれることが新鮮です(笑)。調香師業界では常に同時進行が当たり前なんですよ。画家は同じ作品を何ヶ月、何年もかけて完成させると思いますが、調香師はどんなプロフェッショナルでもひとつの香りを永遠に作っていると感覚がブレてきてしまう。だから複数のプロジェクトを進める方が、嗅覚が研ぎ澄まされてクリエイションの豊かさにつながるんです。

ーなるほど、それは知りませんでした。同時進行で複数の香りを手がけるのは調香師であれば皆さん身につけているスキルなんでしょうか。

 まさに調香師の学校で一番最初に習うことなんです。いろんな香り嗅いでいって、また最初に戻るのを繰り返す練習で「ジャンカールメソッド」というのがありますが、これは基本中の基本なんですよ。

ーデュリエさんは長年調香師としてフレグランス業界の第一線にいますが、最近の香りのトレンドについてはどうでしょうか?

 フレグランス業界では、グローバルで力を持つようなトレンドは存在しないと感じます。地域やもっと細かいローカルマーケットで人気は散らばっている印象です。さらにここ十数年でニッチフレグランスが台頭していて、彼らの独創的な提案も数多あるので、ひとつの香りがトレンドになるのは難しいと思いますね。元々フレグランス業界はファッション業界などと比べてトレンドのサイクルがとても緩やかというのもあります。あえて最近のを挙げるとするなら、「フローラルフルーティグルマン」でしょうか。

ーフローラルフルーティグルマンは具体的にどんなフレグランスが当てはまりますか?

 「シャネル(CHANEL)」の「ココ マドモアゼル」や「ディオール(DIOR)」の「ミス ディオール」、「ランコム(LANCÔME)」の「ラヴィエベル」などですね。

ーなるほど。日本でも人気のフレグランスですね。

 確かにそうですね。グローバルの大まかなトレンド(本当のトレンドではないものの)だと、それ以前はフローラルでフレッシュなマリンノートが人気で、さらにその前はグルマンノートが一気に売れた時代がありましたが、それ以前はマリンノートが強い時代があったんです。私の感覚からすると、最近のトレンドはグルマンとフレッシュマリンの間をゆっくりと進んでいる印象です。

ーデュリエさん自身はさまざまな大手メゾンを経験されてきましたが、ニッチフレグランスの勢いをどう見ていますか?

 ポジティブに見ていますよ。多様な提案は豊かなマーケットにつながりますし、最終的に消費者の選択の幅が広がりますから。ただ、一方で大手のブランドと比較するとニッチフレグランスはブランド自体の存続時間が短いので、マーケットとしての難しさは間違いなくあると思います。

ー調香師目線で、最近面白いと感じたものはありますか?

 お世辞抜きにサノマはコンセプトが面白いと思いました。名前や世界観もそうですし、香りのイメージも新鮮に感じました。調香師としてはテクニカルな部分を見るのですが、「メゾン フランシス クルジャン(Maison Francis Kurkdjian)」の「バカラ ルージュ 540」は素晴らしいですね。歴史のあるメゾンの香水は良い香料を複雑に絡ませて、オーケストラのように組み立てて香りを作っていきます。でもバカラ ルージュ 540は真反対なアプローチで全く新しい。キャラクターの強い3つの香料を主役にバランスよく調香していて、クルジャン氏の才能を感じました。

ーご自身の今後についてはいかがでしょうか。

 クリエイティブな仕事なので常に良いものを作り、学ぶことも継続していきたいです。それから自分のブランドもどこかのタイミングでもう一度出したいと考えています。調香師として全く新しいことをしたいので、ジャン-ミッシェル・デュリエ パリのとは名前もアプローチも違うものにしたいですね。ものすごくニッチな提案ではないにせよ、大きなくくりではニッチフレグランスになると思います。ぜひ楽しみにしていてください。

ジャン-ミッシェル・デュリエ、渡辺裕太

(企画・編集 平原麻菜実)

■サノマ:公式サイト

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