デザインコンサルティング契約締結時の記者会見の模様(左からファーストリテイリング執行役員の勝田幸宏氏、ジル・サンダー、会長の柳井正氏)※写真は2009年撮影
Image by: FASHIONSNAP
「ユニクロ(UNIQLO)」とデザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏のタッグによる「+J(プラスジェイ)」。2021年春夏コレクションの詳細が発表され、話題を集めています。前回の約9年ぶりに新作を発売した2020年秋冬コレクション発売初日では、公式サイトがアクセス集中によりサーバーダウンし、各地のユニクロ店舗に行列ができるなど注目度の高さを改めて実感させました。それと同時に「そもそもジル・サンダー氏とはどんな人なのか?」、こんな素朴な疑問を持つ人も多いはず。そこでジル・サンダー氏のこれまでのキャリアを振り返ってみましょう。
目次
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1-ジル・サンダーとは何者?これまでのキャリア
・1968年にドイツで会社を設立
ジル・サンダー氏は1943年11月27日、ドイツ北部のシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州ヴェッセルブレン生まれ。ハンブルクのクレフェルト・スクール・オブ・テキスタイル専門学校を卒業後に、渡米しカルフォルニア大学に2年間在籍しました。その後、ファッションエディターとして活動。雑誌の撮影用を通してメーカーに服のデザインを提案するうちに、ファッションデザインの依頼を受けるようになりました。帰国後の1968年にドイツ・ハンブルグにセレクトショップ形態のブティックと、自身の会社を設立。1973年にパリでプレタポルテを発表しましたが、1980年に撤退。ただ、1985年に拠点をミラノへ移し、1987年にミラノコレクションにデビュー。1997年にメンズラインを開始するなどブランドが軌道に乗り始めたところで、プラダグループが株式の75%を取得し傘下に入ります。
・2000年に「ジル サンダー 」のデザイナー退任 ブランドのその後
上手くいくようなタッグでしたが、方向性の違いによりジル・サンダー本人は2000年にデザイナーを退任。2003年にクリエイティブディレクターとして復帰するも、再度経営陣との不和により2004年に同職を辞任しました。後任としてラフ・シモンズ(Raf Simons)をクリエイティブディレクターに起用し、ブランドの若返りを図るも、ブランドはプラダグループが2006年にイギリスの投資会社Change Capital Partnersへ売却。2008年にはオンワードホールディングスが傘下に収め、先日「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」や「マルニ(MARNI)」などを擁するイタリアのOTBグループが買収すると発表しました。現在、クリエイティブディレクターはルーシー・メイヤー(Lucie Meier)&ルーク・メイヤー(Luke Meier)夫妻が務めています。
・「ユニクロ」をファッションアイテムに昇華した デザイナー ジル・サンダー氏
2004年にブランドを離れてからジル・サンダー氏はしばらくファッションの表舞台に姿を現すことはありませんでした。ジル・サンダー氏がデザインした最新アイテムが渇望される状況が続く中、約5年の時を経た2009年3月にジル・サンダー氏が代表を務めるコンサルティング会社とファーストリテイリングのデザインコンサルティング契約締結が発表。「+J」コレクションをスタートさせたほか、ユニクロの商品全体の監修を行い、これまでとは違ったデザインエッセンスを加えることでインナーウェア一辺倒だったユニクロがファッションアイテムをデリバリーしていることを認識させるきっかけとなりました。「+J」コレクションは2009年秋冬コレクションからスタート。ファーストコレクションから完売商品が続出するなど話題を集めましたが、デザインコンサルティング契約の終了に伴い5シーズン目となる2011年秋冬コレクションをもって終了。その後、ラフ・シモンズの後任として2013年春夏シーズンからブランド「ジル サンダー」のクリエイティブディレクターにジル・サンダー本人が復帰しました。しかし、2014年春夏コレクションを最後に再度ブランドから離れ、以降は趣味のガーデニングや美術活動に取り組んでいました。そして2020年秋冬シーズンに約9年ぶりとなるファン待望の「+J」コレクションが登場。11月12日に2021秋冬夏コレクションが発売されます。
2-キーワードは「ミニマル」と「巧みな素材使い」
・隅々までジルサンダーの哲学が行き届くミニマル
ジル・サンダー氏は服作りに取り組む姿勢から、「鉄の女」とも呼ばれるほど妥協を許さないクリエイターとして知られています。特にジル・サンダー氏を理解する上で「ミニマル」というワードは必ず抑えたいところ。シンプルと似て非なるのがミニマル。単調なデザインではなく、細部まで緻密に計算されムダを極力削ぎ落としたデザインが多くのファンを魅了しています。ジル・サンダー氏は「+J」2020年秋冬コレクションの冊子に収録されたインタビューで「私が育った北ドイツは、全てのものが透けて見えそうなくらい太陽の光が透明で明るい。折り目のディテールがはっきりと見えるのでごまかしが通用しません」と語っており、幼少期の体験が色味から素材感、そしてデザインにまで繋がっていることを明かしています。
・天然素材から化学繊維まで網羅する素材使い
素材使いの巧みさも特徴の一つ。伝統的な極上の素材で作られたラグジュアリーなアイテムも人気ですが、実は最先端素材にも積極的なのは意外に知られていない事実。オリジナルで生地作りから関わるなど、サステナブルを意識した素材開発は現在の+Jにも反映されています。最高級素材からナイロンやポリエステルなどの化繊まで幅広い素材を用いているからこそ、ミニマルなデザインでも魅力的なアイテム群を揃えることが可能になっています。
・着た時に発揮されるシルエット
ミニマルと聞くと、平面の無機質なシルエットをイメージするかもしれませんが実はとても構築的なパターンで作られていることが多いのも特徴。着用者にストレスを与えずに、絞るところは絞り可動域を残しながらゆったりと流れるようなスタイルを感じさせてくれます。特に動いた時に起きる揺れや生地のうねりなどフルイドまでを見越してデザインされているところこそが、ミニマルの女王という異名の由来ならではでしょう。
3-ジル・サンダーが手がける「+J」の特徴
そんなジル・サンダー氏のクリエイションをユニクロ価格で提供しているのが「+J」。当時のファーストコレクションを見たファッション業界関係者が「間違いなくジル・サンダーだ」と感嘆するほど「+J」はジル・サンダー氏のデザインが再現されています。現在の「+J」は、「モダン・ユニフォーム」がコンセプト。さまざまな場面やあらゆる気候に対応できるベーシックな服を提案しています。代表的なアイテムはもちろん、ジル・サンダー氏も愛着があるという白のシャツ。ドローイングではなく、身体の上でフィッティングを繰り返すというジル・サンダー氏による緻密に計算されたシルエットで、ミニマルかつアクティブな活動が可能なデザインが特徴になっています。
4-「+J」、のアイテムは?
発売間近。2021年秋冬コレクションの詳細は?>>詳しくはこちら
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