ADVERTISING

【居酒屋鼎談】「ラランド」クリエイティブ談義 “かっこよくて面白い”はどう作る?

聞き手&文橋本知佳子

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

 お笑い芸人「ラランド」のサーヤが社長を務める個人事務所「レモンジャム」が5周年を迎えた。キュートな公式サイトやグッズ、ハードなヘアメイクの単独公演ヴィジュアルなど、ファッショナブルなイメージの強いラランド。川谷絵音らとのバンド「礼賛」で音楽活動にも精力的に取り組み、ステレオタイプな芸人像を日々軽々と飛び越えていくサーヤだが、そのクリエイティビティの原点はどこにあるのだろうか。

ADVERTISING

 相方のニシダをはじめ、マネージャーやYouTubeの作家たちなど、“チーム・ラランド”は大学時代からの友人たちで構成されている。そしてサーヤをデザインや衣装で支えるアートディレクター Shimpei Umedaとスタイリスト 呉屋千紗季も、サーヤのクリエイティビティに惹かれて集まった「友人」だ。サーヤの頭の中を具現化するキーマンたちにクリエイションの裏側を教えてもらうならばと、プライベートのような“飲み会兼インタビュー”を決行。笑顔の溢れる会話からは、友人同士だからこそ生まれる、対等で誠実、かつ健康的なそれぞれの仕事論が垣間見えた。

サーヤ

SAYA

芸人、アーティスト

お笑いコンビ「ラランド」のボケ担当。2014年に上智大学のお笑いサークルで相方ニシダと漫才コンビを結成。M-1グランプリ2019、2020にてアマチュアながら2年連続で準決勝に進出。2021年2月に自身が社長を務めるラランドの個人事務所・株式会社レモンジャムを設立。川谷絵音らと『礼賛』のバンド活動を始め、2022年7月にメジャーデビュー。5周年となる今年は9月にTOYOTA ARENA TOKYO での2DAYS公演も控えている。

Shimpei Umeda

Shimpei Umeda

アートディレクター

1995年生まれ。北海道出身。筑波大学芸術専門学群卒業。アートディレクション、グラフィックデザインを軸に、ブランディングやキャンペーン、ロゴ、キャラクターデザイン、イラストレーション、空間、書籍など仕事は多岐にわたる。

Chisaki Goya

Chisaki Goya

スタイリスト

沖縄県出身。文化服装学院スタイリストコース卒業。小蔵昌子氏に師事。サーヤの個人仕事や礼賛メンバーのスタイリング全般を担当。

個人事務所でも、投資を続けてきた「ヴィジュアル」作り

⎯⎯ 今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。まずは好きなものを注文しましょうか。

サーヤ:最高の仕事だなあ!レモンサワーお願いします。

Shimpei Umeda(以下:梅田):生ビールで!

Chisaki Goya(以下:呉屋):ウーロン茶…いやウーロンハイで!

⎯⎯ では早速ですが、仕事でもプライベートでも一緒にいる時間が長いという3人の出会いから教えてください。

サーヤ:梅ちゃん(梅田)は元々インスタをフォローしてくれていたんだよね。

サーヤ

梅田:サーヤの前職*と僕の前職が取引先だったので、2020年頃にお互い会社員として近いところにいました。そして、ラランドが本格的に始動していくタイミングで公式Webサイトを作りたいという依頼をその前職の会社でいただいて。僕は元々ラランドを知っていたので「やります!」と手を挙げたのがラランドとの最初の仕事になりました。でも、当時は今みたいに仲良しというわけではなかったよね。

*サーヤは大学卒業後、広告代理店で働きながらお笑い芸人をしていた。

サーヤ:その時に梅ちゃんたちが作ってくれたものが今のレモンジャムのオフィシャルサイトです。6年前ですね。私たちのイラストも梅ちゃんに描き下ろしてもらって、イラストをクリックしたらプロフィールに飛ぶなど、面白いギミックを盛り込んでもらいました。

梅田:新卒1年目の時の仕事でした。

「ラランド」公式サイトのトップページから引用

呉屋:仲良くなったのはいつなの?

サーヤ:最初はマネたく*と飲みに行ったんだよね。

*ラランドのマネージャーの橋本さんのこと。レモンジャムの副社長で、サーヤとは大学時代からの友人。

梅田:マネたくと僕の共通の知人が渋谷で飲んでいて、「マネたくいるけど来ない?」と連絡があり。その日、徹夜明けに空きっ腹だったんですけど、行ったら彼とお店の日本酒を全て飲み比べてみようよということになり……。僕はこれまでお酒で記憶を飛ばしたことがないんですが、人生で唯一その日は「楽しかった」ということ以外の記憶があんまりなくて、気がついたらラランドの仕事を引き受けることになってて。

一同:笑。

(ドリンクが到着)

「『一度仕事を振ってくれたら、ラランドに合うものを作れる』と売り込んでくれたのを覚えています」(マネたく)

梅田:それで、フリーになってから初めて一緒にした仕事が単独ライブの「冗談」(2023年)でした。

サーヤ:フリーでやっていたのもあり、それまでの単独ライブはあまりお金をかけられていませんでした。でもだんだんと軌道に乗り始めていた時期だったので「冗談」を機に単独ライブを一気に豪華にしました。「冗談」というテーマに合わせたグッズを作って、VTRを撮って、音楽も全部「冗談」が入っている曲を使って。現在の形になる転機になったタイミングからずっとお願いしています。「冗談」の時も、梅ちゃんが集めてくれたクリエイティブチームがヴィジュアルを作って、グッズも色々提案してくれたよね。

梅田が手掛けた歴代の単独ライブTシャツ。一番右が「冗談」のTシャツ

梅田:冗談がテーマだったので、ニシダ(サーヤの相方)とサーヤがうんこをダンクシュートしているステッカーを作りました。(マイケル・)ジョーダンにかけて……(笑)。

サーヤ:そこから「爆爆」(2024年)、「破」(2025年)、今年の「夢夢夢」(2026年)と毎年作ってもらって。先日の「レモンジャム5周年フェス」のグッズもお願いしました。

梅田:仲良しだし、同い年(1995年生まれ)なので通ってきたカルチャーも近くて。端的なコミュニケーションで意図を理解して、良いものが作れている感じがします。

サーヤ:少ないラリーで120点も出してくれるイメージ。

梅田:「冗談」を機にグッと仲良くなったよね。「冗談」を担当した数ヶ月後には一緒に旅行に行ったくらい。

Shimpei Umeda

サーヤ:呉屋ちゃんは、2024年3月から私が「ZIP!」(日本テレビ系列の朝の情報番組)の月間金曜パーソナリティーになった時からの付き合いです。それまでお世話になっていたスタイリストさんが忙しくなられて「サーヤちゃんに合いそうな人がいます。ギャルです」って紹介されました。呉屋ちゃんから何故か「ギャルなんで(会う前に)Zoomしたいです」と言われ、画面越しに出てきた呉屋ちゃんが「めっちゃギャルなんですけど大丈夫ですか(泣)」って。「全然嫌じゃないですよ」と伝えて、そこから毎週金曜朝5時入りの日テレを一緒に乗り越えてきました。

Image by: レモンジャム

呉屋さんがスタイリングしたZIPの衣装

梅田:なるほどね。そういう出会いだったんだ。

サーヤ:毎朝顔を合わせるようになって、毎回めっちゃ可愛い衣装を組んでくれるので、「礼賛」(サーヤがボーカルと作詞作曲を担当するバンド)や、個人の仕事でラッパーとフィーチャリングするときのMVも呉屋ちゃんに頼むようになりました。次第に仲良くなって、楽屋ではいつもずっと恋バナをしています。

⎯⎯ この3人で集まることも多いですか?

呉屋:よく集まるよね。お互いの誕生日会もするし。

サーヤ:週に2〜3回とか(笑)。この3人のグループLINEのグループ名が「XG」で、XGのライブにも3人で2回行きました。

梅田:エクストラオーディナリー・ギャルズ*ね!

*ガールズグループ「XG」は「Xtraordinary Girls(エクストラオーディナリー・ガールズ)」改め「Xtraordinary Genes(エクストラオーディナリー・ジーンズ)」の略

サーヤ:2人もですし、私の周りは公私共に付き合いがある人が多いですね。相方もマネージャーも、ラランドのYouTubeの作家2人もそうです。

⎯⎯ 友人と仕事をすることに難しさはありませんか?

サーヤ:そう思うじゃないですか。でも、マジでその切り替えが素晴らしくて。どんなに仲が良くても手を抜いたり気を抜いたりが一切ない2人なので、尊敬しています。

呉屋:ラランドに関わるチームのみんながそうかもね。仕事のスイッチが入ったときは、ちゃんと距離感を保った会話の仕方になるし。

⎯⎯ だからこそ信用できる友人にもなれるのかも知れませんね。

サーヤ:それに、プライベートを共有している人の方が、関係値がない人と仕事をするよりも好みを把握しておいてもらいやすいと思います。

梅田:同時に、仲が良いからこそ、良いものを作るために必要だと思った意見は正直に伝えても大丈夫だという安心感があります。

⎯⎯ クリエイティブ制作のプロセスを教えてください。

サーヤ:私のオーダーって、クリエイターの人からしたら多分最悪だと思うんですよ(笑)。テーマや雰囲気をかなりふわっと伝えて、ざっくりしたレファレンスの画像を送って。結構ニュアンスで発注してしまうけど、汲み取ってくれる。

梅田:別のクライアントさんだったらやりづらいかもしれないですが、サーヤの場合は、本来なら難しいその部分が逆におもしろい。表現の幅を狭めない自由度があって、でもなんとなく「この辺りにボールがほしいのかな」というのは分かるようなパスをくれるんです。例えば、2025年の「破」の時は、確か撮影の3日前に、「オープニングは突き破る感じで出てくることだけ決まってて、あとはオーラをまといたい。そんな感じ!」って、「少林サッカー」の画像だけが送られてきて。

サーヤ:意味わかんない(笑)。

梅田:でも、「あ、もう分かりました。完璧に理解しました」って思いました。「こちら側へ突き破って飛び出してくるようなイメージを表現するために、Z軸(奥行き)の動きを極端に強調する、とにかく爪先から頭の先まで長さをつけたヘア・スタイリング・ネイルにしましょう」「広角で撮ってパースをさらにダイナミックにしましょう」「纏わせるオーラは、サーヤは波動のような覇気、ニシダは悶々と立ち込める臭気にしましょう」と翌日に企画提案して、翌々日に準備して、3日後には撮影。翌週に納品するようなスケジュールで、普通ならとても100%の出来のものは作れないような状況なんですが、逆に超やりやすかった。その制限がむしろ新しいものを生んでくれるというか。200点を毎回出せているような感覚があります。

2025年単独ライブ「破」のキーヴィジュアル

Image by: Shimpei Umeda

「破」Tシャツでは、ダメージのあるボディを採用

⎯⎯ 特にお気に入りはいつのライブのものですか?

呉屋:私が単独ライブのスタイリングに参加したのは今年の「夢夢夢」からなんですが、やっぱり「夢夢夢」かな!でも全部好きです。

梅田:僕も毎年最高を更新していると思っているので「夢夢夢」です!

2026年「夢夢夢」のソロヴィジュアル

⎯⎯ 毎年エッジの効いたデザインが特徴的ですが、どういう意図があるんですか?

サーヤ:おしゃれだけどちゃんと面白い、“変”な方がいいねというのはずっと言っていて。でも、服は着づらくなると良くないから、お笑いになりすぎないようにしたいとは思っています。2人はその塩梅のチューニングがとても上手。信頼しているので基本的に任せていますね。街中でライブTシャツを着てくれている人を時々見かけるので嬉しいです。

梅田:来年もっと良いのが出るんで楽しみにしていてください。

⎯⎯ 「レモンジャム5周年フェス」のTシャツはこれまでの単独ライブのものとは少し雰囲気の違うデザインですね。

サーヤ、ニシダをイメージした2種類のデザインを用意。いずれも2000枚が即日完売。

サーヤ:単独ライブのTシャツは私たちの顔面が大きくデザインされているので、普段使いはしづらいんじゃないかとも思っていたんです。なので、私の「スピTシャツ」は、私の目の写真だけを使ってもらってタイダイにしてほしいと伝えたら、普段使いしやすいデザインに仕上げてくれました。

梅田:普段の単独ライブTシャツは、しっかりと2人の顔がデザインされている方がファンの方は嬉しいと思うのですが、サーヤとニシダ本人は着づらいデザインだったことに葛藤がありました。サーヤはこれなら着れるんじゃない? 逆にニシダは本人を主張するデザインにしました。

サーヤの「スピTシャツ」。サーヤのスピリチュアルなイメージをサーヤの目とタイダイ、レモンなどのモチーフで表現。「アブダクションされているようなイメージです」(梅田)「カルマのよう……」(サーヤ)

ニシダの「ベンチ豚Tシャツ」。最近筋トレ動画が話題を集めていることから企画された。

梅田:ぜひルックにも注目して欲しいんですが、サーヤの方は『スピリチュアル、運命、反重力』といった超自然的なイメージ。自然界に存在しない放射状や直線的な要素を多く入れていて、無機的でシンメトリーな神の視点のような神秘的なイメージを表現しています。一方でニシダは『フィジカル、破壊、重力』といった泥臭くダイナミックなイメージ。煽り構図やわざと傾けた構図を多用して、肉体的な躍動感や彼個人の生々しい力強さを切り取るように撮影しました。

5周年Tシャツの本人着用ルック

サーヤ:これを企画したのは、以前梅ちゃんがプライベートで「マネたくTシャツ」を贈ってくれたことがきっかけでした。それが忘れられなくて、その時のオマージュにしたいと思ってお願いしたんです。プライベートでもオリジナルグッズをくれたりするのが嬉しい。

梅田:まず何よりサーヤたちを喜ばせたいと一番に思っているからね。

梅田がレモンジャムの3人(ラランド、マネたく)に贈った「マネたくTシャツ」

Image by: レモンジャム

⎯⎯ 個人事務所でありながら、ヴィジュアル制作に積極的に投資するのはなぜ?

サーヤ:「冗談」の前に「祝電」という単独ライブの頃から、ライブの内容やグッズに一貫性を持たせたいと考えるようになりました。例えばディズニーランドのように、会場に足を踏み入れた瞬間から全てのものにその世界観が一貫して反映されているような体験が好きだったので、そうした表現にライブでも挑戦したくて。

梅田:全てのライブにおいてキーヴィジュアルは最初に発表されるもの。つまりその体験の入り口です。ラランドが考えていることの100%をヴィジュアルで表現する必要があります。

サーヤ:世界観を表現する根幹なので、ヴィジュアルは本当に大事だと思っていて、手を抜きたくありません。大手の事務所所属の芸人だと単独のフライヤーを雑コラのような加工だったり、社内のデザイナーに簡単にお願いしたりしているみたいですが、あまりそれはやりたくありません。他の大手事務所と比べても、ラランドは相当お金をかけているんじゃないかなと思います。こだわっている分、ヴィジュアルを注目していただけることも多くて、私たちが一緒に仕事をしたクリエイターさんが後に他の芸人さんの仕事をするようになったこともあります。認められているということだから素直に嬉しいです。これは絶対自惚れですが、私たちがフライヤーを頑張り出してから、周りの芸人さんも頑張り始めたような気がするんです。

呉屋:衣装のリースのためにブランドさんとやり取りをするとき、他の芸人さんはブランドの方が知らないこともあるんですが、ラランドさんの名前を出すとみんな喜んで貸してくれる。センスも買われているんだなと感じます。

呉屋千紗季

「絵文字のドメインを取る」という考え方、理解者だから選べる衣装

⎯⎯ 梅田さんと呉屋さんは「ラランド」と「礼賛」どちらの仕事にも関わっているんですよね。

サーヤ:そうなんです。だから今年の単独は礼賛のツアーと並行して準備していて、本当に時間がなくて。2人もとても忙しかったと思います。

梅田:(今年の単独ライブ)「夢夢夢」の撮影の前日が礼賛のライブの打ち上げで、3人で朝方まで飲んでたから気持ち悪くてね。

呉屋:顔ぶくぶくに浮腫ませながら撮影に行ったよね。

梅田:呉屋ちゃんは、これまでに一緒になった現場全て、朝まで飲んだ後に来る(笑)。でも仕事に入ると、数時間前まで酒を飲んでいて二日酔いだとは思わせない凄まじいハイパフォーマンスをしてくれる。逆にこの人酒入ってなかったらどれだけハイパフォーマンスなんだろう……。

一同:笑。

「呉屋ちゃんが飲んでくる日は大体私が付き合わせてるからね。日中の仕事で一緒になると、衣装のボタンを閉めてもらいながら、『今日行く?』って。こんな感じで」(サーヤ)

サーヤ:あ、麦のソーダ割りください。

梅田・呉屋:麦ソー3つで!


⎯⎯ ラランドと礼賛の仕事の仕方に違いはありますか?

梅田:そもそもコンセプトが違うという意味では違っていますが、共通する部分もあります。先ほど挙がったように、ラランドの単独ライブTシャツはかっこいいけどおもしろポイントや隙があることで着やすいデザインになっていると思います。礼賛のメンバーも全員が超ラブリーな方々で、良い意味で隙のあるような魅力がもある。その魅力を伝えるためには、かっこいいだけでなく、ちょっと面白さやラブリーさを取り入れたいと考えています。

サーヤ:最近出した礼賛のニューシングルのジャケットも2人にお願いしました。先日の礼賛のツアーファイナルの会場が沖縄だったので、ライブの翌日と翌々日に沖縄で撮影日を設けちゃって。ジャングリアに行ったり、海に行ったりしたところを全部撮ってもらいました。その時はまだ曲名も決まっていなかったんですが、「とりあえず素材をいっぱい撮ろう」って。いつかファンの方への特典映像にできれば良いと思ってたんですが、結果的にABEMA の「シャッフルアイランドSeason7*」とのタイアップが決まったのでちょうどよかったです。

*タイのサムイ島を舞台にした恋愛リアリティショー

梅田:沖縄の旅の間ずっと礼賛メンバーの様子を記録していて、9月に発売になる武道館ライブ映像の完全生産限定盤を買うと、その時の写真をまとめた写真集が付いてくるのでみなさんぜひ買ってください。あと、この「サイさん」ピンバッジも付いてきます。

梅田がデザインした礼賛のオリジナルキャラクター「サイさん」

サーヤ:礼賛のキャラクターの「サイさん」も梅ちゃんが作ってくれたんだよね。

梅田:僕はキャラクターを作るときに絶対に大切にしていることがあって、それは「iPhoneの絵文字にあり」、かつ「その絵文字が有名キャラクターに“ドメイン”を取られてない」ことなんです。例えば、ネズミといえばみんながミッキーマウスを想起するし、猫のキャラクターもいっぱいいるじゃないですか。スマホやSNSが当たり前の時代に、ファンの子たちは好きなものを絵文字で表現してコミュニケーションを取るので、その絵文字のドメインが取れるとファンの子が“使いやすい”キャラクターになるんです。そう考えた時に「サイ」のキャラクターってあまりイメージがないと思い提案しました。最初は、英語でサイは「ライノセラス」なので「礼賛」とも響きが近いし「ライノさん」が良いなと思って。でもマーベルに「ライノ」というヴィランがいるので、権利問題を考慮して最終的に「サイさん」にしました。親しみやすくて結果的によかったと思っています。

梅田がデザインした「礼賛」Tシャツ。右は「サイさん」のデザイン

呉屋:サーちゃん(サーヤ)と梅ちゃんの仲が良いことをファンの方はみんな知っているからだと思うんですが、礼賛のグッズの写真をSNSにアップする時、ファンの方々はみんな梅ちゃんをタグ付けするんです。それってなんだかとても珍しい光景だなって。絵文字のマークがあったらファンが喜ぶと思って設計していることもそうですが、ファンの方々に寄り添うコミュニケーションが生まれるきっかけを作っているなと思います。

梅田:それは、僕が一番の礼賛とラランドのファンだから。Tシャツを作る時も、第一にサーヤたちを驚かせたいし喜ばせたいと思っていて、同時に僕自身がファンでもあるので、ファン目線でも着たくなるものにしたい。「俺たちがこれを着てライブに行って、舞台から客席を見たサーヤたちに気持ちを上げてもらえるように、(ファンの)みんなでこれを着て行こうぜ!」とファンに呼びかける気持ちで作っています。サーヤたちを喜ばせるためのファン同士の“ユニフォーム”として、毎回のライブのムードに合ったものをデザインしてるつもりです。だから、ファンの方たちがタグ付けしてくれた時も、デザイナーとしてリスペクトしてもらえているのも嬉しいけど、ファン同士の密なコミュニケーションに潜り込めたような感じがして、めちゃめちゃうれしいですね。礼賛の野音(日比谷野外音楽堂)ライブのTシャツは、蛍光のインクでプリントしていたんですが、夜になった時にTシャツが光ったらしくて、みんなが感動してくれたのは嬉しかったです。

「泣ける〜〜〜!」(呉屋&サーヤ)

⎯⎯ サーヤさん自身もSNSでスタッフのクレジットを丁寧に明記されているイメージです。

サーヤ:そうですね。例えばライブの写真を上げたときに、カメラマンさんから「タグ付けがないままフリー素材になっていくのが寂しい」って話を聞いたことがあって、本当にそうだなと。映像作品ならスタッフクレジットが必ず出るのに、ヴィジュアルや日々のスタイリングは軽視されがちというか。それは良くないと思うので意識するようにしています。

呉屋:全員がそういう考えじゃないからこそ、その想いが嬉しいなと思います。リスペクトし合えている感じがして。

「ファンの子たちも、呉屋ちゃんがスタイリングしてくれた衣装をSNSで紹介すると喜んでくれます」(サーヤ)

⎯⎯ 呉屋さんがサーヤさんの衣装をスタイリングする際に大切にしていることを教えてください。

呉屋:ファッション業界にいると常に、前へ前へ、「新しいもの」を追い求めようとしすぎてしまうけど、時代って正直そこにまだ追いついていません。礼賛は著名な方々が組んだバンドなので華やかなイメージを持たれがちですが、ライブハウスで1から少しずつ経験を積み上げてきたバンドであるというバックグラウンドがあります。だから、急にラグジュアリーブランドを着せたり、流行っているものを着せても「なんだか違うな」となることがあるんです。

 なので、Tシャツ1枚にしても親和性のあるバックボーンのブランドを選んだり、メンバーの雰囲気に合わせて既製品をリメイクすることが多いです。ありがたいことに飲みの場にもよく呼んでいただくので、本人が興味を持っていることや好きなテイスト、どこで買い物をしてどんなブランドが好きなのか、日々の会話の中でリサーチしています。礼賛は特に服好きな方が多いですし、ドラムのGOTOさんはお友達が手掛けるブランドの服をよく着ていらっしゃるので紹介していただいたり。年齢的にも大人な方々ですし、飛ばしすぎるとファンの方も違和感を覚えるかもしれない。この(ファッション)業界にいると見失いそうになりますが、着る人のプライベートの価値観を理解することを一番大切にしています。

サーヤ:呉屋ちゃんに礼賛のスタイリングに入ってもらったら、(川谷)絵音さんがすごく気に入って、絵音さんのやっている「indigo la End」の方でも呉屋ちゃんを起用することになったんです。そうしたら、絵音さん以外のメンバーにも「一度ご挨拶させてください!」って、自分から話を聞きに行っていたよね。業界の中では「自分の着せたいものを着せる」というスタンスのスタイリストもいる中で、まず肌感でスタイリングする相手のことを理解しようとする姿勢が素敵だなと思っています。

呉屋:自分が着る側だったら怖いじゃないですか、いきなりよくわからないものとかテンションが上がらないものを着せられたりしたら。現場に入る前のフィッティングの段階では良いと思っていても、ライブで着てみたら少し動きづらかった、ということもあり得るので、ツアー中は毎回ステージを見ながら衣装をアップデートしています。

サーヤ:呉屋ちゃんはレモンジャムの5周年フェスではゲスト出演した礼賛メンバー含め全員のスタイリングをお願いしました。「レモンなのでなんとなく黄色で」って伝えたら、全員が真っ黄色ではなくいい感じに引き算した黄色で統一感のあるものを提案してくれて素晴らしかったです。

梅田:テンダーパーソン(TENDER PERSON)」だったね!

5周年フェスの衣装

武道館でのライブの衣装

共通点:偏見のないコンテンツ欲

⎯⎯ 普段の飲み会ではどんな会話をしていますか?

サーヤ:お互いの好きなコンテンツの話とか?

呉屋:そうだね。ここまで美容から服、エンタメ、政治、食、都市伝説まで、全部の話ができて、しかも波長が合う人ってなかなか周りにいないよね。

3人とも、「破」と「夢夢夢」のヴィジュアル撮影時のネイルを担当したネイリストのネイルサロンに通っている。ネイルを新しくしたら写真だけを無言で報告する「爪」というLINEグループがある。

「インスタで回ってきて良いなと思ったリールは大体2人のどちらかが先にいいねしてる」(梅田)、「アルゴリズムが一緒だよね」(サーヤ)

呉屋:あと、流行ってるNetflixのドラマとか、2人は絶対見ているんです。W杯が盛り上がっていたら一旦見よう、とか。話題になっているものに手を出すスピードが早くて、壁を作らずなんでもつまんでみようという気持ちが3人一緒。なので「これ見た?」って聞くと絶対「見た見た!あれヤバくね?」ってリアクションが返ってきて、会話のスピードが速い。

サーヤ:確かに。「にわかを厭わない」というか。とりあえず見てみよう、が多いかも。

呉屋:「ストレンジャー・シングス」にハマっている時は、サーちゃんと2人でケーキを作って一緒に最終話を観て号泣したし。

サーヤ:W杯のブラジル戦も朝方に集まって、一緒に見て号泣。

呉屋:「次がある!!4年後頑張ろうね!!」って。うちらなんも頑張らないのに(笑)。

⎯⎯ みなさん多忙な中でどうやってインプットをしているんですか?

サーヤ:移動中のタクシーはみんなで乗っていてもそれぞれスマホで何かを見ているかも。

呉屋:情報収集が大事な仕事だから、移動中に相手が携帯を触り始めてもお互い相手を邪魔しないようにしようという距離感だよね。

サーヤ:私はクソゲーしてることも多いけど。

呉屋:でもそれもストレス発散だしね。邪魔しないでおこうという時間がある分、こうやって集まって喋る時は絶対スマホ触らずに爆喋りする。そのバランスの価値観が近いのも仲良くできている理由かも。

梅田:飲み会中に誰かがスマホ触り始めたら「ごめん、わかんない話して」って思ってパス出し始めたり。

サーヤ:2人は協調性の鬼ですね。だからサッカーだよね。視野広い。

梅田:イーグルアイだね。

一同:(笑)。あ、麦ソーおかわり!


🍺追加ドリンクを待ちながら:抜き打ち私服チェック💡

「スニーカーは呉屋ちゃんが教えてくれた『イエロ(YELLO)』です。でも本当はいつも呉屋ちゃんがくれたもっと高級な靴を履いてます。身長が低いので厚底が好きです」

リングは最近購入した「パンドラ」。「ピアスは怖くて開けてないからイヤリングです。いつか大河ドラマに出たいのでこれからも穴は開けません!」(サーヤ)

呉屋:え!私も最近パンドラめちゃ気になってる。代官山に「ユニジェム(unigem)」っていうジュエリーのセレクトショップがあるんだけど。そこに今度連れて行きたい!

サーヤ:ブランドやお店は全部呉屋ちゃんが教えてくれます。

「バングルは私が学生の頃からお世話になっているD.asaさんという方がいて、原宿の古着屋の『PIN NAP』から独立されて今『BOW CITY』というお店をやっていて、そこで買いました」

「今日のテーマはサッカーです!Tシャツは『ゴーシャ・ラブチンスキー」、靴は『アディダス オリジナルス』と『ブレインデッド』とディズニーのコラボ。サッカースパイクとして登場したプレデターというモデルがベースになっています」

梅田:このスニーカーはディズニーキャラクターのピンズがセットになっていたんですが、自分がデザインした礼賛の「サイさん」のピンズや共通の友人のdeepwebのピンズをつけています。

サーヤ:普段どこで服を見てるの?

梅田:U-NEXTに入ってるとサブスクで雑誌が読めるから、メンズからウィメンズまで全部一旦目を通して流行りを調べてる。物欲がほぼないからそれで服が欲しくなることはないけど、トレンドをインプットした上で友達のお店とかに行くと自分に似合いそうなものがわかるようになる気がする。

呉屋:私も店員さんに話しかけて流行りとか教えてもらってる。クラブとか音楽イベントにいるおしゃれなキッズにも話しかけてブランド教えてもらうし。

「サーヤらしさ」はどこから来るのか

⎯⎯ 2人は「サーヤさんらしさ」をどう解釈して、表現に落とし込んでいますか?

呉屋:サーちゃん自身が、「他の人が見たことないものを作ろう」という考え方というか、誰かの真似はしない、新しい発信源になるような人だと思います。みんなが好きなものはもちろん大切にしつつ、そこに変化球を加えるようなイメージが好きなんだろうなと思って、そのイメージを表現できるようにしたいと考えています。

梅田:僕は、サーヤの良さを一番に引き出すには、「コントラスト」をつけるのがいいと思ってて。ラランドの魅力って、サーヤとニシダがめちゃくちゃアンバランスなところだと思うんですよ。スピリチュアルとフィジカルだし。対外的なサーヤと内省的なニシダ。だから、サーヤの良さを引き出すには、ニシダらしさをめちゃくちゃ表現してあげる。すると、結果的にサーヤらしさもより引き出されるんだと思います。漫才やコントで見られる2人の魅力もきっとコントラストから生まれていると思うので、そこをしっかり見せてあげることを意識していますね。礼賛においてもそうかもしれないです。いろんな方向に素晴らしい魅力があるメンバーそれぞれの個性を全部それぞれ引き立てたら、全員の魅力が際立つと思います。

これまでのグラフィックも全てサーヤとニシダが対比になっている。「冗談」では曲線と直線のヘアスタイル、「爆爆」ではサーヤは興奮、ニシダは緊張を表現。「破」はパンチとキック。「夢夢夢」ではサーヤが夢を見せてニシダが夢を見せられている。

⎯⎯ 今後やってみたいことはありますか?

サーヤ:Perfumeみたいに衣装だけの展示をしたいな。

呉屋:10周年になったら10年分のTシャツを集めてドレスかセットアップにしちゃお!それかいっそ糸にして編んじゃう?

梅田:礼賛では細長いマフラータオルを毎年出していて、「オーバーキル」という曲に合わせてライブで振り回すんですが、あのタオルも10周年の時に10年分繋ぎ合わせて大きくして会場の全員で振り回したい。

サーヤ:大縄跳びみたいにしたいよね。本当に普段からこういう普通の会話からアイデアが生まれているんです。話していた時は笑っていたけど、本当にやっちゃった!みたいな。

梅田:(W杯期間中の取材だったこともあり3人は「ゴール決めるぞ!」と意気込んでインタビューに臨んでくれた)……ゴール、決められましたかね?

⎯⎯ もちろんです!ありがとうございました!

一同:おつかれさまでした〜!


photography: Katsutoshi Morimoto, direction: Riko Miyake(FASHIONSNAP)
撮影協力:辰乃家(新宿思い出横丁)

最終更新日:

◾️株式会社レモンジャム設立5周年記念「レモンジャム5周年Fes」
アーカイヴ配信チケット購入サイト※視聴期限は2026年7月27日(月)23:59まで

聞き手&文・橋本知佳子

Chikako Hashimoto

FASHIONSNAP 編集記者

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、武蔵野美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント