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Fashionインタビュー・対談

【インタビュー】"ワードローブの視点を変える" 2年越しの大型コラボ「TOGA ARCHIVES × H&M」が実現するまで

 「H&M」と「トーガ(TOGA)」がコラボレーションした「TOGA ARCHIVES × H&M」が、9月2日グローバルで発売される。世界的にも注目度が高い恒例のコラボレーションで日本のブランドが選ばれるのは、2008年の「コム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)」以来。コレクションを通じてデザイナーの古田泰子が伝えたいトーガのスピリットとは。

TOGA
デザイナー古田泰子が1997年にスタートさせた東京を拠点とするインディペンデント・ラグジュアリー・レーベル。2004年にTOGA PULLA、2011年にメンズラインTOGA VIRILISを立ち上げ、フランス国立モード芸術開発協会主催のANDAM賞(2007年)や毎日ファッション大賞(2009年)を受賞。2014年秋冬シーズンよりロンドンでコレクションを発表。ブランド名は古代ローマの一枚布で作られた"聖なる衣"「トーガ」に由来する。

古田泰子

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「TOGA」デザイナー古田泰子とは?

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恒例のH&Mデザイナーコラボレーションですが、これまでH&Mやデザイナーコラボに対してどんなイメージを持っていましたか?

 H&Mは日本に上陸する前から知っていました。ヨーロッパに出張をするたびにお店に足を運んでいて、今のファッションをどう捉えているのかを一目で知る上で訪れるたびに学びが多かったんです。

 一番最初のカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)とのコラボレーションは驚きでしたね。今でこそ当たり前ですが、当時(2004年)は企業とデザイナーズブランドとのコラボレーションというのは珍しく、先駆け的な存在だったので「こういった組み合わせってあり得るんだ!」と。その驚きを2回目に感じたのが「コム デ ギャルソン」とのコラボレーションでした。発表された時(2008年)は、スイスのチューリッヒで水玉のキャンペーンポスターを見かけたんですが、それが街並みに全く合っていなくて(笑)。でもそういった違和感が逆に印象に残っていたりするじゃないですか。まさしくそれで私は覚えていて、コム デ ギャルソンが取り組もうと決めた背景がすごく気になりましたね。

ーこれまでのコラボデザイナーやブランドの系譜を踏まえると、トーガはビッグサプライズでした。

 私たちもです(笑)。今まで、よりスタイルを確立していたりブランドネームが世界的に大きいコラボレーション相手が多いことは知っていたので、ロンドンで発表してはいますが、私たちのようなインディペンデントな規模感の会社で、いわゆる"カルト"なファンの多いブランドにオファーが来たのは驚きでした。約2年前にH&M側からお声がけがあったのですが、当初はおそらく社内全員が「なぜうち?」といった状態でした。

H&M シモーン・ロシャ

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その中で「やろう」と思った決め手は?

 私たちがいつもコレクションで伝えようと思っていることを自分たちの力だけではなく、グローバルカンパニーを巻き込んで実現できるチャンスということで、社内で前向きに捉えることができたんです。海外のコレクションで発表してきて、オファーが来たことは素直に嬉しかったですし、自信にもなりましたしね。コラボレーションをする上での私たちのコンセプトを全て受け入れていただき、プロジェクトがスタートしました。その中の一つにトーガが捉えるジェンダーに関する考えというところは、なかなか国内のジャーナリストも置き換えることが難しいポイントのように感じていたんですが、H&Mの方たちに話している方が理解が早いような気がしたんです。

ブランドではこれまでにも、ウィメンズラインの「トーガ プルラ」で男性モデルを、メンズラインの「トーガ ビリリース」で女性モデルを起用するなど、ジェンダーフリュイドな見せ方をシーズンルックで提案してきた。トーガ プルラ2021 Pre-Springでは同じ着こなしをウィメンズ・メンズ両方に着せている。 Image by TOGA
ブランドではこれまでにも、ウィメンズラインの「トーガ プルラ」で男性モデルを、メンズラインの「トーガ ビリリース」で女性モデルを起用するなど、ジェンダーフリュイドな見せ方をシーズンルックで提案してきた。トーガ プルラ2021 Pre-Springでは同じ着こなしをウィメンズ・メンズ両方に着せている。 Image by TOGA

大企業と組むが故の不安や懸念点など、ネガティブな意見も社内では出ましたか?

 ありました。トーガの服は決して安いものではないので、これまでずっとブランドを支えてくださったファンの方々をがっかりさせたくない、ということとか。靴はライセンスで作っているのでロンドンのチームにも相談しました。やはりトーガにとってデザインは財産なので、広げるためとはいえ、価格帯が明らかに違うものを売ることに対してどう思うか、という話をしたところ、自分たちはこれまでのデザインだけではなく、これからも新しいデザインを提供していくつもりなので、これまでやってきた評価を受け、世界に広めるということはいいことだと思う、とポジティブな返事が返ってきました。

トーガの主力でもあるシューズの価格帯は通常4万円後半〜7万円ほど。ラムレザーにブランドのアイコニックなスタッズをあしらったコラボシューズは2万4999円で販売する。

 これから発表していくコレクションでもしファンの方が離れてしまうことがあったとしたらそれは私たちが作る服のデザインの弱さであるので、私は「心配しないで!」という気持ちで構えていました。

ーコラボ発表後の社内以外の周囲の反応は?

 圧倒的に肯定的なものが多かったですが、長く付き合っている一部の友人からは大企業との取り組みに対して「どうして?」という声もありました。でも友人には、「ちゃんと言葉で説明するし、インタビューもオープンに答えているから、内容を読んだ上でなにか疑問があれば連絡して!それに対してはいつでも答える!」って言いましたね(笑)。なので今回のプロジェクトに関しては自分たちの言葉が曲げられて伝わることがないように、インタビューや話し合いの機会をたくさん持って、私の口からもしっかり伝えるようにしています。

コロナ禍でのプロジェクト進行となったわけですが、どのようなプロセスでコレクションを作り上げていったのでしょう?

 プロジェクト自体はコロナ禍以前にスタートしていて、一年延期ということになりましたが実際は昨年発表されるはずのコレクションでした。なので、日本でH&M本国のパタンナーやアクセサリー担当者と数日間、集中的にデザインの打ち合わせをし、2020年の2月のロンドンでのコレクション発表の際にもH&Mチームと詳細を詰めたりフィッティングすることが叶ったんです。モノが既にできた状態でリモートでのやりとりに切り替わったので、幸運なことにそこまで支障はありませんでした。

 ヴィジュアル作りにおいてもトーガのロンドンオフィスのスタッフが撮影に同行していたので、私たち日本スタッフはモニター越しに参加という形で進めました。時差があったので私は途中で寝落ちしちゃったんですけど(笑)、ある程度安心して任せられたということですね。リモートの可能性も限界も感じましたが、全て自分たちのコントロール下に置かずに新しいイメージメーキングを楽しめたことは発見がありました。ずっと仕事をしたかったスタイリストに今回初めてスタイリングを依頼したんですが、これもグローバルプロジェクトだったからこそ実現したという部分もありますね。

キャンペーンイメージは「ステラ・マッカートニー」などを長く手掛けるスタイリストのジェーン・ハウ(Jane How)と、フォトグラファーのジョニー・デュフォート(Johnny Dufort)が担当。 ロンドンのバービカン・エステートに建つブルータリズム建築の団地を背景に撮影された。 Image by H&M
キャンペーンイメージは「ステラ・マッカートニー」などを長く手掛けるスタイリストのジェーン・ハウ(Jane How)と、フォトグラファーのジョニー・デュフォート(Johnny Dufort)が担当。 ロンドンのバービカン・エステートに建つブルータリズム建築の団地を背景に撮影された。 Image by H&M

今回のコレクションはアーカイヴをベースにデザインしたとのこと。どの辺をアップデートしたのでしょう?

 ベーシックアイテムである下着やスーツ、ドレスなどのワードローブの象徴的なエッセンシャルウェアにトーガなりのエッセンスを加えて「視点を変える」というコンセプトがベースになっています。透け感であったり、穴から足を見せるといった"自己表現としてのセクシャリティーを自分でコントロールする"というようなトーガのコレクションで長く取り組んできたラインナップで、特に代表的なアイテムをピックアップしました。わかりやすいものであれば、スーツのポケットからアクセサリーを飛び出させるシリーズなど。大きくアップデートしたというよりは、発表当時のものからインナーのプリントを変えてみたり、肩幅やウエストの位置などを時代性を感じるようなシルエットに調節するといった形です。

メインコレクションでも見受けられる大胆な穴や切れ込みが今回のコラボでも特徴的です。そういったデザインはどういった発想から?

 パンクスピリットの反抗的、ある種の破壊的なアプローチというよりは、意識や視点を変える、ということです。穴や切れ込みによって現れるもう一つの肌だったり、新しい側面を見せるかどうかということを自分で選択・調節できる服。自分を表現する一手段としてそういったテクニックを用いています。

Image by H&M
Image by H&M

そういったアイテムの数々が着る人のワードローブの中でどういった役割を果たして欲しいですか?

 ご自身のワードローブの服と並べてもらえるとわかりやすいと思うのですが、トーガの服は一筋縄ではいかない、簡単に着られるものばかりではないので、着る人が鏡に向かって「これをどう着よう」とか「これとこれを重ねてみよう」という時間を過ごすきっかけになってほしいです。それってとても贅沢な時間だと思うので。今このような時代だからこそ、服と向き合ってファッションを楽しめる時間がもっと増えるような、そんな一着であって欲しいですね。

コレクションのキールックとして登場するスタイリングは、ワンピースにチュールドレスを合わせたもの。

サステナブルな素材を使っているのも、H&Mコラボならではの生産背景です。

 サプライヤーとも直接話して「ここのシャリ感を強くしたい」というような技術的なリクエストをすることは多かったのですが、サステナブルな素材が使われているということは実は私も今の今まで知らず(笑)。でもそれってある意味、理想的ですよね。私たちがリクエストするまでもなく、H&Mにとってはそれが前提というか、ごく当たり前のことなんだと思います。これほどの大企業ですが、アパレルを取り巻く環境問題や社会情勢に対してごまかすのではなく一早く意思表明したり、先進的な取り組みをしていて、スピード感と実行力は見習うところが多い気がします。

ペットボトルや残布を原料としたリサイクルポリエステルを使ったウェアやリサイクル亜鉛や真鍮を使っアクセサリーなど。

このコラボをステップにこれからのトーガの未来図は?

 コラボプロジェクトは規模感の大きさを実感すると同時に、マイノリティ側の自分たちができることはデザインを徹底して突き詰めて、次のコレクションに新しい提案をすることだと、改めて強く思いました。

 またこれからはデザインだけでなく、発信の仕方も重要になってきていると感じます。若い人たちは地球環境などの社会問題にとても敏感で、それをはっきり伝えようと意思表示をする世代。そういった姿を見たりするととても誇らしく感じますし、彼ら・彼女たちが将来コアの消費者となった時に、ちゃんとメッセージを伝えられるブランドでありたい。デザインの可能性やファッションの楽しさ、私たちのコンセプトに共感し、トーガの一着をずっとアーカイブスとしてとっておきたいと思ってもらえるように、これからも服を作り続けていきたいです。

H&M トーガ コラボ

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(聞き手:今井 祐衣)

■TOGA ARCHIVES×H&M
発売日:9月2日(木)
展開店舗:梅田店、沖縄・浦添 PARCO CITY店、京都店、神戸ハーバーランドウミエ店、コクーンシティ店、札幌店、渋谷店、心斎橋店、新宿店、テラスモール湘南店、天神店、名古屋松坂屋店、原宿店、二子玉川ライズ店、ららぽーと横浜店、ランドマークプラザ横浜店(全国16店舗で10:00〜H&Mメンバー先行で販売開始予定)
公式オンラインストア(8:00〜発売予定)

※記載価格すべて税込

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