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グローバル展開・機能開発・使用感の追求 国内大手3社の日やけ止め戦略

 ここ数年、ビューティ業界において各社が力を入れているカテゴリーが日やけ止めだ。地球温暖化による気温上昇や紫外線量の変化を背景に、国内外で需要が拡大。高い技術力を採用した新製品や、定番品のリニューアルも相次ぎ、日本国内のみならず、グローバルを視野にシェア拡大を狙う、資生堂、花王、コーセーの化粧品大手3社に、日やけ止め戦略を聞いた。

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紫外線防御は“当たり前” 塗り心地やテクスチャーなど「快適性」が重要に

 各社の話に入る前に、まず市場全体の概況をおさらいしておきたい。ビジネス フォーチュン インサイトによると、世界のサンケア製品市場規模は、2026年には161億2000万ドル(約2兆5630億円)に達するという。うち、日本市場は4億9000万ドル(約779億円)で、中国市場は米国市場と同規模の24億7000万ドル(約3927億円)まで拡大する見込み。2034年までにグローバルでは256億3000万ドル(約4兆751億円)まで成長するとされている。拡大カテゴリーに、各社の世界を見据えた動きが欠かせない。

 この数字の背景には、消費者ニーズの変化も影響する。今や、紫外線対策は夏季やレジャー時に限らず、日常生活のルーティーンに組み込まれており、通年使用が一般化している。健康にも影響を及ぼすことから、幼少期からのUV対策の推奨などで、老若男女が日やけ止めの使用が当たり前になった。

 そういったことから、機能面においては、SPFやPAといった紫外線防止力は前提条件となり、その上で汗や水、こすれに強いといった、より強固な機能、加えて通勤や買い物といった日常シーンでの使用拡大に伴い、塗り心地の軽さやベタつきにくさといった快適性も重視。さらには、スキンケア効果などもプラスされるなど、UVに止まらない提案も主流となってきている。

資生堂、「アネッサ」ラインナップを拡充

 資生堂は、サンケア領域への集中投資を進めている。中でも「アネッサ(ANESSA)」は2023年時点で売上高500億円超を持つ主力ブランドの1つだ。2024年11月に発表した同社の中期経営戦略「アクションプラン 2025-2026」では、アネッサを「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」、「ナーズ(NARS)」に続く、売上高1000億円を目指す5つのブランドの1つとして定義。合わせて、サンケアカテゴリーを累積300億円規模のマーケティング投資の対象の1つに組み込み、さらなる拡大を目指している。

 同戦略のもと、アネッサは2024年に技術力を軸にしたスキンケアミルクやジェルなどを複数投入。昨年から今年にかけて目立つのが多様化する消費者ニーズへに応えるラインナップの拡充だ。昨年には、メイクの上から使用できるUVカットパウダーを企業限定品としてリリース。「塗り直しのしづらさ」という課題に対応した製品で、発売から2ヶ月で年間目標の32万個(本体・リフィル合算)を出荷達成するなど大きな話題を集め、今年2月には全国展開を開始した。また、スキンケア機能や湿度変化に対応するテクスチャーを目指し刷新したUVジェルや、初のメンズ向けUVケアアイテム、持ち運び需要に応えるミニサイズ、紫外線ダメージを受けた全身のケアを叶える薬用ナイトセラムなどを発売している。

メイクの上から使用できるUVカットパウダー「アネッサ パーフェクトUV ブラッシュオンパウダー」

 2025年12月期のアネッサの売上高は、1〜6月の中国市場やトラベルリテールの苦戦が足を引っ張り前期比9%減だったが、下期以降は盛り返し、7〜12月で見ると前年同期比6%増で着地。2026年12月期は5〜9%前後増を見込んでいる。近年海外市場が停滞している同社にとって、中国、アジアパシフィック地域で伸び代が大きく見込めるサンケア領域は、重要な成長ドライバーの1つだ。

花王、「ビオレ」で韓国市場に参入

 花王も日やけ止めカテゴリーをグローバル成長の中心に据えて強化している。同社は2027年12月期に向けた中期経営計画「K27」の中で、「ビオレ(Bioré)」UVケアの欧州・ブラジルでの販売や、セルフタンニング・日やけ止め領域に強みを持つBondi Sands社の買収などを通じて、スキンプロテクション事業のグローバル拡大の道筋を作った。今年3月には、日本だけでなくアジアや欧米など66の国と地域で事業を運営するビオレで韓国市場にも進出。美容大国として高い注目を集める韓国への参入を通じて、技術力やグローバルブランドとしての信頼性の向上を目指す。韓国市場を足掛かりに、アジア全域およびその他の海外市場での事業拡大を加速させる狙いだ。

 グローバルでの拡大を進める一方で、国内も依然として重要な市場だ。花王 スキンケア事業部 ブランドダイレクター 小林達郎氏によると、2022年比で1.5倍以上にまで拡大する2025年の日やけ止め市場において、「ビオレUV」シリーズの2025年売上高は、同2.2倍と市場スピードを遥かに上回り大きく伸長したという。

 この伸長を紐解くと、「近年では、汗やムレなどの不快感から、日やけ止めの使用量を抑えてしまい、結果として十分に肌を守り切れていない」(小林氏)ケースに対応したことが奏功。今年2月に湿度に合わせて塗膜の厚みが変化する“呼吸感ベールUV”を全国販売し、出荷本数が165万本を突破(2026年4月時点)。スフレ状の軽いテクスチャーに仕上げ、「ベタつき」や「ヌルヌル」といった不快感を抑えたことが好調につながったという。

“呼吸感ベールUV”こと「ビオレUV アクアリッチ エアリーホールドクリーム」

 さらに安定供給を支える仕組みも見逃せない。同社では、近年の需要の通年化や気候変動に対応するため、過去実績と気象情報を元にした予測を立てることで需要制度を高めたほか、流通店と連携し需要期前から店頭在庫を用意するなどをして、売り逃しを防ぐ体制を強化している。

コーセー、“スキンケア発想”と“維持機能”を訴求

 コーセーは、日やけ止めを「スキンケアの延長として捉えるアプローチ」と、塗り直しせずに一日中快適に過ごせるといった「維持機能」の特化で使用シーンの広がりに対応している。

 スキンケア発想を代表するのは、大谷翔平のプロモーション効果も奏功する雪肌精だ。日やけ止めを単に「紫外線を防ぐもの」から、「毎日心地よく使えるスキンケア」として定義。うるおいによる透明感といった機能に加え、香りや使用感など、肌だけでなく気持ちにも寄り添う設計の製品が目立つ。今年2月には、紫外線の強い日常シーンや、アクティブな場面に対応できるようにUVジェルとミルクを刷新。紫外線を防ぐだけでなく、快適な日常に寄り添うための要素として香りにもこだわったという。また、近年では外出先での塗り直しや持ち運びといったニーズが高まっていることから、手軽に塗り直しができるミストや、手を汚さずに塗布できるスティックといった携帯性の高いアイテムをリリースしている。

新CMに大谷翔平選手を起用した「雪肌精 スキンケア UV エッセンス ジェル N」

 一方で、メイクアップ維持と紫外線防御を組み合わせ、その機能に特化して打ち出しているのが「メイクキープ」シリーズだ。昨年2月に発売された日やけ止めミルクは、汗・水・皮脂・身体の動き・こすれなどさまざまな要因からメイク崩れを防ぐ設計にし、塗り直しが前提とされてきた日やけ止めの使用ハードルに対して機能面からアプローチ。長時間の持続性を訴求することで、塗り直しの必要性を軽減し人気を集めた。今年1月にはメイクキープ効果にUVを組み合わせた化粧下地を発売したほか、花粉ブロック機能を備えた備えたメイクキープ ミストの無香料タイプなども展開し、メイク崩れや紫外線防御に止まらない機能性を訴求し、激化する日やけ止め市場で差別化を図っている。

“売る”だけじゃない、啓発活動にも力

 各社の日やけ止め戦略で、特筆すべきは、単に“売る”ことに注力しているわけではないということだ。地球温暖化が進む中、紫外線の肌への影響は計り知れず、一方で適切に紫外線対策を行うことで、太陽から多くの恩恵を受けられると考え、さまざまな啓発活動を実施。UVケアを通して紫外線との“付き合い方”を伝える啓発活動を学生や子どもを対象に実施している

 資生堂のアネッサは、2018年から全国の小学校や幼稚園と連携した「日やけ予防教育授業」を開催。昨年7月時点で累計16万6000人の子どもたちの紫外線対策を支援してきた。2024年からは紫外線ダメージへの向き合い方を伝えるプロジェクト「ANESSA Sunshine Project」をスタート。2030年までに、アジアの12の国と地域を含めた合計30万人の子どもたちへのサポートを目標に掲げている。

 花王 ビオレはこれまでに、「太陽と輝く、高校生テニスプロジェクト」のほか、正しい紫外線対策を啓発するイベント「太陽の教室」を実施。ショッピングモールやレジャー施設などで、子どもたちへの紫外線対策の習慣化を提唱している。日本・香港を皮切りに今後は近隣のアジア各国にも拡大していく予定だ。

 コーセーの雪肌精も、野球チームに所属する子どもたちを中心に日やけ止めの重要性を発信するプロジェクトを行ってきた。今年も日やけ止めの新CMにロサンゼルス・ドジャース所属の大谷翔平選手を起用。今年は紫外線が肌トラブルの原因だけではなく、運動のパフォーマンスにも影響を及ぼすという点に着目し、スポーツを楽しむための紫外線対策の必要性も訴えている。

最終更新日:

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FASHIONSNAP 編集記者

平松将

Sho Hiramatsu

青山学院大学経営学部卒業後、大手事業会社を経て文化服装学院に入学。服作りを学んだ後にレコオーランドに入社。
ファッション、アート、カルチャーに加え、人々の暮らしや都市の現実といったテーマにも関心を持つ。日課としてジャーナルとメモをつける記録愛好家兼トレーニー。

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