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短い春、長い夏、読めない寒暖差......アパレル20社アンケートから見えた「猛暑対策」最前線

展示会の様子

三陽商会が開催した2026年盛夏・猛暑展の様子

Image by: 三陽商会

展示会の様子

三陽商会が開催した2026年盛夏・猛暑展の様子

Image by: 三陽商会

展示会の様子

三陽商会が開催した2026年盛夏・猛暑展の様子

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 暦の上では春本番の4月だが、各地ですでに夏日が記録されるなど、暦と実際の気候との乖離が広がっている。こうした気候変化を背景に、近年アパレル各社では従来のMDカレンダーを見直し、春商材の投入期間を短縮しているほか、早期から接触冷感素材や通気性に優れた素材を取り入れるなど、気温の上昇にも対応できるアイテムを拡充している。今記事では主要アパレル関連会社にアンケート調査を実施し、20社から回答を得た。猛暑を見据えたMD戦略の最前線をまとめる。

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アパレルMDカレンダーとは?

 春夏・秋冬のシーズンを軸に、アパレルメーカーは販売の半年前から商品企画や展示会を行い、需要予測に基づいて生産や投入時期を決定する。いわば「長期前提」の運用が基本とされてきた。計画的な生産と在庫管理を可能にする一方で、気温や需要の変化に対応しにくい側面も課題とされている。

従来のアパレルMDカレンダー(イメージ)
時期取り組み
1〜3月秋冬商品の企画・展示会(受注)/春商品の販売
4〜6月秋冬商品の生産/夏商品の販売
7〜9月翌年春夏商品の企画・展示会(受注)/秋商品の販売
10〜12月春夏商品の生産/冬商品の販売

「短い春」見越してすでに夏物が店頭に

 通常、夏商品の投入は4〜5月ごろから行われるが、今回のアンケートでは20社のうち半数以上が「短い春」を見越して、何かしらのブランドで「前倒しする」と回答。「スナイデル(SNIDEL)」などを手掛けるマッシュホールディングスは、暑さ・UV対策アイテムの展開を例年より1ヶ月早め、3月下旬からスタートし、順調に売り上げを伸ばしているという。

 TSIホールディングスが運営する「ナノ・ユニバース(NANO universe)」でも3月末から4月上旬にかけての1週間で、すでにシャツ・カットソーで半袖の売り上げが長袖の売り上げを上回って推移。初夏アイテムは昨年よりも2〜4週ほど展開を早めるという。ワールドや青山商事でも盛夏向け商品のピークを例年より前倒しする。ナノ・ユニバース、ワールド、青山商事はいずれもゴールデンウィーク前には初夏または盛夏向けのラインナップが揃うよう計画している。

着画

ビームスボーイ(左)では半袖Tシャツの納期を例年の3月上旬から2月中旬に前倒し。デミルクス ビームス(右)では前年度より夏対応品番を4月上旬に前倒して展開し、奏功しているという。

Image by: ビームス

 一部の企業およびブランドでは前倒しは行わないものの、たとえばリトルリーグの「ロンハーマン(Ron Herman)」では、「エブール(Ebure)」への別注Tシャツとタンクトップを4月上旬に発売したのち、6月にリオーダーして再販するなど、夏の時期に着用するアイテムを実需に合わせて8月頃まで展開を伸ばし、「猛暑の長期化」への対策を講じる。

 一方で、「ユニクロ(UNIQLO)」は、従来から年間定番、シーズン定番商品として販売しているため、MDカレンダーの前倒し・後ろ倒しといった、猛暑対策向けの特別な施策は今季は特に行っていないのが特長。長年販売してきたコア商品を今のトレンドのシルエットや素材にアップデートした商品の販売が好調で、気温に左右されにくい構造ができつつあり、上期の通年商品の売上構成比も高まっているという。2026年3月度の既存店売上高においても、前年同月比9.2%増を記録した。前年3月も同11.5%増と大きく伸ばしていた上でさらに積み上げている。今夏も主力アイテムである「エアリズム(Airism)」やUVカット、ドライEX(DRY-EX)、リネンなどのシリーズを継続的に販売していく方針だ。

<主な回答>(一部抜粋)

ワールド(オぺーク ドット クリップ/インデックス):盛夏に向けた機能アイテムは例年より早めに準備に入り、ゴールデンウィークには店頭の品揃えも一気に盛夏向け商品に変えていく。

オンワード樫山:全社で前倒し傾向。アンフィーロは1ヶ月前倒し、23区は盛夏商品の展開を2週程度前倒しを計画。

TSIホールディングス(ナノ・ユニバース):昨年よりも初夏の展開を2〜4週早め、ゴールデンウィーク前には初夏ものへの入れ替えが完了する予定。

青山商事:盛夏向け商品のピークを例年より2週間〜1ヶ月前倒しし、ゴールデンウィーク前には夏本番のラインナップが揃うよう計画。また、夏が長期化していることから、一気に夏物を展開するのではなく、継続的に新規アイテムを投入することで売り場の鮮度を高める。

ジュン:長い夏を見据え、4月から盛夏ものを約1ヶ月前倒しで投入。

ビームス メンズ(ドレス):4月上旬から半袖商材を販売。

ワークマン:今春夏は通常の大規模展示会とは別に、UV&酷暑対策新製品発表会を実施。昨年の同様の発表会からさらに規模を拡大した。

カーディガン、シャツ、ジレ、半袖ジャケット......レイヤードアイテムが拡充

 ただし、長期化する夏に“息切れ”しないような工夫も求められる。ビームスが手掛ける「レイ ビームス(Ray BEAMS)」では初夏アイテムの投入を例年通り3月末からスタートしているが、盛夏は販売期間を9月中旬まで見込み、4〜6月に毎月新規アイテムを投入。ベイクルーズが展開する「ジャーナル スタンダード レリューム(JOURNAL STANDARD relume)」でもTシャツの着用期間が長期化していることを受け、ジレやベストなど、スタイリングに変化を加えられるプラスワンアイテムのラインナップを拡充したほか、猛暑の長期化にも対応するため、7月にもリネンシャツを販売するなど、従来よりも遅い時期まで夏素材の商品投入の継続を計画する。「無印良品」は、創業以来の強みである天然素材を強化することで酷暑にも対応。リネンやヘンプ素材のアイテムのバリエーションを広げている。

着画
パンツ
キャミソール
パンツ

レイ ビームスの初夏商品のルック

Image by: ビームス

 ウィメンズでは直近数年でジレが流行しているが、今年は新たな選択肢として半袖ジャケットの提案が増えている。三陽商会では前年比約9倍に大幅増産。昨年は「エポカ(EPOCA)」や「ラブレス(LOVELESS)」といったトレンドを取り入れるブランドで販売したところ、動きが良かったため、今年はよりマス向けアイテムになると見込み、「ポール・スチュアート(Paul Stuart)」を加えて展開ブランドを拡大している。青山商事も昨年から半袖ジャケットの取り扱いを開始したところ、一部店舗では完売するなど、想定以上の反響があったという。同社広報は半袖ジャケットについて、「ジレよりフォーマル感がありながら、コーディネートに悩まないアイテムとして人気」「冷房対策としてのカーディガンだとカジュアルすぎる、商談や会議ではジャケットを着たいといったニーズに対応」と分析。今年は生産量を前年の1.5倍に増やした。なお、両社ともにメンズの半袖ジャケットの展開は予定していない。

プロダクト
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着用画像
プロダクト
着用画像

エポカの半袖ジャケット

Image by: 三陽商会

 猛暑やUV対策グッズの需要の高まりから、非アパレル商材の拡充にも注力する企業も多い。三陽商会は「メンズ日傘」の生産数を2.2倍に。ナノ・ユニバースも「晴雨兼用傘などの商材のアイテム数を拡げていきたい」と検討している。アンドエスティHDの雑貨ブランド「ラコレ(LAKOLE)」は、4月10日から猛暑対策の「クールアイテムシリーズ」を順次発売。昨年2週間で1万点が完売した「ボトル型氷のう」は、3サイズに拡大した。

<主な回答>(一部抜粋)

オンワード樫山:春秋を共通の気温帯(シーズンレス)と捉えて企画し、春の立ち上がり(もしくは秋立ち上がり)で芽が出た商品を秋にブラッシュアップし展開するスキームを新たに構築。春立ち上がり好調商品は、秋のシーズンレスアイテムとしてもレイヤード提案で稼働が見込めるため、新色の差し込み等で対応していく計画。また、猛暑の長期化に対応し、8、9月の需要喚起策として、“秋色×夏ディティール×夏素材アイテム”の拡充する予定。

クロスプラス:猛暑の早期化・長期化を見据え、月ごとの気温に合わせた商品提案をしている。これまでに奏功した施策としては、接触冷感・吸水速乾など機能素材を用いた長期間販売可能な定番商品の強化盛夏商材の型数を絞り、早期投入+追加生産対応とした点が挙げられ、猛暑・残暑下でも消化の安定につながっている。また、気温に合った商品提案を強化する一方で、夏から初秋まで着用可能な、天候変動に左右されにくい商品も企画。特に機能性・ベーシック商材で展開している。

ビームス メンズ(カジュアル):販売期間が長くなった分、お客様に「飽き」を感じられないよう、各月様々な仕掛けを行っており、過去の実績品番に頼りすぎない体制を目指している。

ファーイーストカンパニー(アナイ):撥水と速乾性のある機能性素材として、高密度タフタを使用したアイテムを投入。

ベイクルーズ:ジャーナルスタンダードのウィメンズは、以前は7、8月の秋の立ち上がり時期に長袖のウールハイゲージニットなども揃えていたが、現在はカラーリングだけ秋色にした夏物や、ベロアのTシャツ、シアーカットソー、ニットなら化繊の接触冷感タイプなどを中心にしている。スピック&スパンは、先物の動きが鈍化していることから、売れる商品を見極めるための商品開発会議を増やしている。

秋の立ち上がりの後ろ倒しも 中東情勢に懸念

 「長期化する夏」は秋冬商戦にも影響を及ぼしている。青山商事では、昨年は10月まで半袖の需要が続いたという。重厚なウールコートやダウンの店頭立ち上がりを10月以降に後ろ倒しし、代わりに9月ごろはジレやシャツジャケットといったシーズンレス商材を拡充する。

 晩夏では、夏向けの薄手素材に色柄で秋らしさを加えた“秋色+夏素材アイテム”が市場全体で登場するが、ジュンでは同商品の供給量が過多となり、「売れ残りが発生するとともに、消費者の夏物への飽和感が見られた」という。今年は“秋色+夏素材アイテム”の展開を過度に拡大せず、購入済みの夏物に秋色・秋ディテールの夏素材1点を取り入れて完成するコーディネートを提案し、市場動向を見極めながら、秋物を適切なタイミングで柔軟に投入できる体制を整える。

<主な回答>(一部抜粋)

ワールド:秋の立ち上がりについては、まさに今、ラインナップを精査しているところ。昨年の成功要因をしっかりと踏まえつつ進化。高気温に対応する機能性素材と秋のトレンドカラーを掛け合わせることで、お客さまに新鮮さを感じていただける商品を提案する。

ビームス メンズ(カジュアル):2025年度は記録的な残暑の影響により、初秋・秋物の動き出しが遅延。盛夏商品の販売延長が余儀なくされたことで、シーズンを通して販売時期の「後ろ倒し」が発生した。今年は「晩夏・初秋商品の販売期間の設定」と、それに応じたバイイングを実行する。

パルグループホールディングス:→昨年は9月に夏物を販売したが、息切れしてしまったので、今年は9月は秋物を販売する方針に変更。暑い秋に着ることができる素材の採用や、秋色の商品の展開、バッグや小物などの雑貨販売の強化などで9月の残暑に対応する方針。

リトルリーグ(ロンハーマン):7月にプレフォールの立ち上がりとして、秋を感じるアイテムと実需のアイテムをあわせて品揃えしてきたが、今年は同時期にドメスティックブランドに依頼して1ラック程、夏に着られるコレクションを初めて展開する予定。それに伴い、今まで秋冬プレコレクションで展開していた商品を8月の立ち上がりに後ろ倒ししている。冬のアウターに関しては、昨年と発売時期は変えず販売期間を延ばし、12月まで分散させて用意。

ベイクルーズ(ドゥーズィエム クラス):猛暑の長期化を踏まえ、「暑い中でもすぐに着られて、色選びやスタイリング次第で秋らしく見える」提案を行い、晩夏から初秋にかけてもお客さまにファッションを楽しんでいただく。
一方で、定番アイテムやシーズンの打ち出しアイテムは、秋冬の魅力を感じられるよう、ブランドが提案したいタイミングで投入する。

ユナイテッドアローズ:2024年、25年はECサイトの羽織物に関連したコンテンツの掲載時期を、従来の9月中旬から10月上旬に変更。軽めアウターのコンテンツも9月中旬から10月中旬に変えるなど、より気候に合ったタイミングとなるように後ろ倒しした。買ってすぐに着られるタイムリーな販促の実施で需要を喚起し、一定の効果はあった。

 秋冬シーズンのもっとも大きな懸念は、中東情勢悪化に伴う納期遅延や価格転嫁だ。今回のアンケートの中東情勢の影響に関する設問で、多くの企業は2026年春夏の立ち上がり時点で「影響はない」としたが、秋冬シーズンへの影響を警戒する。ビームス・メンズでは「すでに減便による遅延は徐々に発生し出している」、ロンハーマンでも「素材高騰が出てきており、定番品のリオーダーを通常より早めに行った」と回答。ナノ・ユニバースは「2026-27年秋冬シーズンの服作りについては為替や原油の高騰がコストに影響しているほか、納品時に商品を包装するOPP袋なども値上げのインフォメーションが出てきており、石油由来原料に依存しないサステナブル原料のOPPへの切り替えなどを進めている」と述べた。

 価格の見直しについても、複数の企業で「改定を行う(または検討する)」という回答が見られた。ビームス・ウィメンズでは「2026年秋冬シーズンから物流ルートの減少や配送料の値上げ、ポリエステル素材の高騰及びそれに伴う綿など他素材転嫁により、全ての原料の値上げが価格に添加され、10〜15%の平均上代アップが予測される」とコメント。納期遅延も予想されるため、全ての企画生産を前倒しで実施していくという。

 ワールドではサプライチェーンの見直しに着手。同グループでは国内6社・9工場の自社工場を保有しており、臨機応変に対応するクイックレスポンス体制を構築している。今後の情勢次第で生産拠点の分散化を図るとともに、国内の自社工場を最大限に活用していくとしている。

<主な回答>(一部抜粋)

ユニクロ:中東情勢の緊迫化に伴い、一部の国・地域では輸送費の上昇などの影響を想定しているが、2026-27年秋冬物の生産はすでに進行しており、あわせて輸送面でも対策を講じていることから、生産や物流面で事業全体に大きな支障が生じる状況ではないと考えている。一方で、原油価格を含むエネルギー価格の動向については引き続き注視が必要であり、特に東南アジアを中心に影響が出やすい状況であると認識。商品価格については、市場環境の変化を踏まえながら検討していく必要があるが、お客さまにお買い求めいただくため、可能な限り企業努力を重ねていく。

オンワード樫山:現状は各ブランド共に早期の調達発注が実施できており、投入済の “夏物” への納期等の影響は出ていない。

バロックジャパンリミテッド(スライ):中東情勢の面からポリエステル素材の原価高騰などが懸念されており、実際のコスト増になっている。

マッシュホールディングス:生産背景が中国中心であるため、輸送に対しての物理的な懸念は今のところ存在しない。原油調達に関する懸念が、原材料の高騰、副資材の高騰、手配不足につながる可能性は大いにあるが、実質的に影響として現れるのはこれからの仕掛分(秋冬商材)となると想定している。

ジュン:現時点では影響なし。少し遅れて顕在化すると予測。7月後半〜懸念される製品原価率の上昇を最小限に抑えるため、価格設定の見直しを行う。

■アンケート協力企業一覧(記名企業のみ)
青山商事、アンドエスティHD、オンワード樫山、クロスプラス、三陽商会、ジュン、TSIホールディングス、パルグループホールディングス、バロックジャパンリミテッド、ビームス、ファーイーストカンパニー、ベイクルーズ、マッシュホールディングス、ユナイテッドアローズ、ユニクロ、リトルリーグ、良品計画、ワークマン、ワールド

最終更新日:

FASHIONSNAP 編集記者

伊藤真帆

Maho Ito

東京都出身。高校時代に編集者を志し、デザインもわかる編集者を目指して美術系専門学校でグラフィックおよびウェブデザインを学ぶ。ウェブメディア「ORICON STYLE(現・ORICON NEWS)」で編集を経験後、カナダでのワーキングホリデーを経て、2014年にレコオーランドに入社。ライフスタイル領域をメインに担当後、現在はシニアエディターとしてデスク業務のほか、セレクトショップや百貨店・商業施設、ECといった小売関連企業を中心に取材。企業のトップに取材する連載「トップに聞く」を担当している。一児の母。趣味はボードゲームと謎解き。

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