「ミュウミュウ(Miu Miu)」の2027年春夏コレクションは、「HERE AND NOW」のテーマの通り、「今、ここ」にある現代の日常着を出発点に据えた。単に再解釈するのではなく、服に結びついた機能や着こなしを文脈から組み替える試みだ。スポーツとクラシック、テーラリングとクチュールといった異なる要素が交差し、装いの調和をあえて崩す。不均衡や余白からエレガンスを見出し、見慣れた服に異なる表情と、新たな魅力を与えている。
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ワードローブとジェンダーの変容
ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)が今シーズン見つめたのは、スポーツウェアやニット、レザー、ヴィンテージアイテムなど、現代のワードローブを形づくる服。スポーツウェアは機能を担う、テーラリングは端正に着こなす、デニムやジャージーはカジュアルに——そうした概念を固定せず、ルールを取り払う。相反する要素の対話が摩擦と緊張を生み、見慣れたアイテムは磨かれ、変容していくという考えだ。
またショーでは、先シーズンに引き続きメンズモデルを起用し、ジェンダーの境界を曖昧に。さらに、ジェイミー・ベル(Jamie Bell)、オリヴィア・コールマン(Olivia Colman)といった俳優をはじめ、ダンサーやミュージシャンなどを起用し、多様な人間像を映し出した。




スポーツとクラシックが共存
ファーストルックは、スキューバ素材のインナーに英国調のジャケットを重ねた。続くルックでは、インナーの裾がカーブしたクロップ丈に変化していく。ボトムにはメンズのスイムウェアを採用。スカートやパンツの下に重ねるインナーとしても機能し、衣服としての役割を曖昧にする。



幾何学模様のプリントは1970〜80年代を想起させると同時に、ポピュラーカルチャーのイメージを呼び起こす。素材の加工にも、視点の変化が与えられた。スエードにはワックスを重ねてひび割れや経年変化を思わせ、トップスとしても用いられるスカーフには、折り目のようなしわが残る。エキゾチックレザーのセットアップやスカートと、気負いのないジャージー素材のトラックスーツが並び、特別な服と日常着の序列を揺さぶった。






ビジューとクロスド・レーシングで装飾
ショーの後半はビジューやナイトガウンを思わせる刺繍が煌めき、スポーツウェアを豪華に装飾したデザインも。今季を象徴するクロスド・レーシング(ひもを交差させた留め具)は、デニムやプリーツスカート、ドレス、シューズに施した。機能と装飾性を併せ持ち、紐の交差と結び方によって服の形を変え、身体の動きに応じた余白を生む。また、シルクのリボンは衣服の一部としてではなく、アクセサリーとしても登場。構成要素を解体し、別の役割を与えることで、服の見方や着る行為そのものに変化を促している。





ラングラー、ニューバランスとコラボ
デニムは「ラングラー(Wrangler)」とコラボレーション。「Miu Miu Upcycled」の一環で、ヴィンテージのスペシャリストが調達した20世紀末のジーンズを再構築し、クロスド・レーシングの仕様を取り入れた。既存の服に、異なる価値を与えている。


足元は、「ニューバランス(New Balance)」との協業5年目となる新作シューズが登場。「RC150」をベースに、機能性を保ちながらシューズのあり方にひとひねりを加えた。150グラムという軽量のレーシングスニーカーをテクニカルメッシュで構成し、外側のループに通したコントラストカラーのシューレースを、つま先でゆるく結ぶ。競技用シューズの機能性に、意図的な未完成さが際立った。




「今」を見つめ、捉え直すことの意味
デザイナー交代が相次ぐ現在のファッション界では、歴史やアーカイヴを手がかりに、再解釈や再構築するデザインアプローチが目立っている。そのなかで1993年のブランド創設以来、ブランドを率いてきたミウッチャ・プラダが見つめるのは、「今」の服と、その変化だ。過去を反復するのではなく、常に問いかけ、視点を変える。根本から捉え直すことで価値を引き出し、アイデアが生まれ続ける可能性を示した。

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