
DRIES VAN NOTEN 2027年春夏ウィメンズコレクション
Image by: GoRunway

DRIES VAN NOTEN 2027年春夏ウィメンズコレクション
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「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」というブランドを、一言で定義するのは難しい。象徴的なモノグラムがあるわけでも、誰もが思い浮かべる厳格なフォルムがあるわけでもない。そこにあるのは、予期せぬ色彩と柄の衝突であり、知性と叙情性が交差する「ムード」そのものである。
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しかし、ブランドアイデンティティが極めて抽象的であることこそが、現在の同メゾンにおける最大の武器となっている。メンズ、ウィメンズを通算して7度目の発表となるジュリアン・クロスナー(Julian Klausner)による2027年春夏ウィメンズコレクションは、頻発するデザイナー交代の影響でアーカイヴの参照がテンプレート化しているなか、抽象性がもたらす自由度を最大限に活かし、新しいエレガンスの形を鮮やかに提示してみせた。
「グラマー」という感情の抽出
今季のテーマに据えられたのは「グラマー(魅惑、華やかさ)」という概念。「ただ、そうありたいという理由だけで、美しく着飾ろうとする願望について」とクロスナーが語るように、それは特権階級の非日常ではなく、日常の中でふと華やぎを求める無邪気な感情への讃歌である。
ベルトでウエストをきつく締め上げる感覚や、赤いリップ、古い衣服に眩いブローチを添える瞬間の高揚感。ジュリアンはそうしたパーソナルな喜びを、撮影現場での1日を終え、現実の世界へと戻る女優の情景と重ね合わせた。


ホワイトキューブの会場に響き渡ったのは、多くの映画音楽を手掛けたイタリアの作曲家、ピエロ・ウミリアーニ(Piero Umiliani)による壮麗な音楽と、街の喧騒や行き交う人々の足音、車の走行音が入り混じるサウンドスケープ。スクリーン上の完璧な姿と、スクリーン外の現実の狭間を浮遊する女性像を通して、クロスナーは服そのものだけでなく着飾る歓びというエモーショナルな体験をデザインした。
映画ポスターを「ロックT」に変換する知性
特定のアーカイヴピースを持たないからこそ、デザイナーは自由な発想をメゾンの文脈に落とし込むことができる。その最たる例が、今季の象徴である架空の映画ポスターのグラフィックだ。 一枚の図画に物語の最高潮が凝縮された映画ポスターを世界共通の言語として捉え、クロスナーは色鮮やかなテクニカラーのポスターを創作した。それをドレスやコートだけでなく、あえて「ヴィンテージのロックバンドTシャツ」のようなユースカルチャーの文脈で日常着のTシャツやポロシャツにプリントし、豪奢なアイテムと組み合わせた。


さらに、エアキャノンを駆使したスプレープリントもコレクションに瑞々しい活力を与えている。華美を象徴するフラミンゴ、宵の宴を暗示するマティーニグラス、星影、魅惑的なアイラインを施した目元の図案などが、衣服の表面に無邪気に散りばめられた。ブランドが持つ知的なエレガンスの中に、クロスナー自身の同時代的なストリートのエネルギーが溶け合っている。


余白を孕んだ「積み重ねる」スタイリング
スタイリストのロビー・スペンサー(Robbie Spencer)が手掛けたスタイリングも、コレクションのテーマを巧みに補完している。透けるオーガンザなどの素材をレイヤードして意図的に輪郭をぼやけさせ、アニマルプリントを重ねたテーラードジャケットや、胸元を深く開けたVネックのニットが、寛ぎの中に官能を忍ばせる。


また、装いの完成を着る者の主体性へと委ねる心地よいルーズさも、今季を象徴する要素だ。袖を無造作に捲り上げ、コスチュームジュエリーを合わせるというより積み重ねるように幾重にも飾る手法。ウッドヒールの古典的なパンプスやブロックヒールのモカシンに並び、パイソン柄のヒールが鋭い美意識を突きつける。片手のみに嵌められたドライビンググローブや大ぶりのハンドバッグなど、ちぐはぐとも言える小物使いは、完璧なトータルコーディネートの押し付けではなく、着る人が自身のために役柄を作り上げる遊び心の余白として機能している。


明確な「型」を持たないからこそ、時代に合わせてあらゆる要素を咀嚼し、ドリス ヴァン ノッテンの服へと発展させることができる。ブランドの核は、物質的なアーカイヴの形ではなく、着飾る歓びという感情の動きにこそあるのだ。クロスナーが今季見せた着飾りすぎることの肯定と、未完成なリアリティの共存は、まさにその本質を捉えた証明と言える。着る者の感情に真っ直ぐに寄り添い、衣服を通してパーソナルな歓びを引き出すという彼の自由な思考は、ブランドの抽象性を広大なキャンバスに見立て、次なる黄金期へと確かな歩みを進めている。
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