
Image by: Dior
パリ市民の憩いの場、チュイルリー庭園。その八角形の池が、先シーズンに続いて「ディオール(Dior)」のショー会場となった。同じ場所に再び戻る演出は、今回の2027年サマー ウィメンズコレクションのシームレスな発想と響き合う。フルー(ドレス専門アトリエ)とタイユール(仕立て服専門アトリエ)、オートクチュールとプレタポルテ、メンズウェアとウィメンズウェア。従来の境界を軽やかに行き来し、異なる要素を溶け合わせるジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)ならではの自由なクリエイションが、そこに表れていた。
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姿を変えていくショー会場
池を囲むようにプロムナードを設けた会場は、一見すると前回と同じ構成だ。しかし、骨組みとベンチはグリーンからホワイトへと塗り替えられ、池には蓮の花に代わってクスノキが枝を伸ばす。古びた椅子は、6月に開催したメンズコレクションのショーで使われたもの。過去の要素を受け継ぎながら姿を変えていく会場は、伝統を更新し続けるクチュールメゾンのあり方を映し出していた。





衣服はどこまで軽くなれるのか?
今回ジョナサンが探求したのは、軽やかさだ。コレクションノートに「空気さえも素材のひとつに」とあるように、風をはらみ、重力を感じさせない衣服が軸となった。レースやシルクモスリン、オーガンザといったフルーのアトリエで用いられることの多い素材を、タイユールの技術で仕立てる。極薄のシャツやテーラードジャケット、スカートを重ねることで、透けるストライプやチェック、千鳥格子が交差し、奥行きのある表情を生み出した。




フォルムには、創設者ムッシュ ディオールのドレスを思わせる立体的なスカートのラインや、花弁のように広がるシルエットが息づく。先シーズンを印象づけたクロップド丈を引き継ぎつつ、サファリジャケットを「バー」スーツへと転換するなど、異なる要素を自在に掛け合わせた。




自然界の非対称性
ムッシュが愛した花々は、コレクションを彩る重要なモチーフ。アーカイヴの「ジュノン」ドレスを思わせる、シルクジョーゼットの花弁をあしらったジャケットをはじめ、水彩画のようなスカートや、プリーツ加工の上からプリントを施したドレスが登場。スクエアトゥのパイピングサンダルには、花のフォトプリントを施した。




自然界の摂理に通じる非対称性も、コレクションを形づくる要素のひとつ。片耳だけに着けるカスケードイヤリングには、花弁のモチーフやビジューがあしらわれ、歩みに合わせて繊細に揺れた。


メンズとウィメンズの呼応
5月にメゾン初の男女混合ランウェイを披露したクルーズコレクションに続き、今シーズンも性差にとらわれない表現が見られた。6月発表の2027年サマーメンズコレクションと呼応するショールカラーのジャケットや、1979年のオートクチュールから着想を得て、トロンプルイユ(だまし絵)のスカーフをビーズ刺繍で表現したブラウスなどが登場した。




メタリックカラーのパイソンレザーは、メンズと同様のパンツに加え、バッグやシューズなどのアクセサリーにも用いられた。ひとつの素材やモチーフを共有し展開することで、メンズとウィメンズの世界を結び、互いに響き合う表現へと広げている。

クルミやスワンがバッグに
バッグは「ディオール ダブル」と「ディオール イニシャル」ホーボーの新作に加え、バイカーに着想を得たモデルも登場。メッシュバッグは、フリンジ付きのシルクスカーフや花弁モチーフのパーツでカスタマイズすることができる。


ショーの招待状としてゲストに贈られた中国の文玩核桃は、シルバー仕上げのミノディエールに姿を変えた。スワン型のミノディエールも、コレクションに遊び心を添えている。

伝統をほどくそよ風
全65ルックのコレクションは、ラストルックでファーストルックのデザインへと回帰。始まりと終わりが呼応し、円環を描く構成となった。1947年の「ニュールック」に始まるメゾンの歴史を受け継ぎ、アーカイヴのコードを未来へとつないでいくという伝統を背負いながらも、その重みを感じさせない。そよ風が吹き抜けるような軽やかさが、ジョナサンの真骨頂を物語っている。

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