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上海のスターゲイザー|コラム連載 - ニイハオ、ザイチェン vol.12

上海滞在生活の日々を綴るコラム連載「ニイハオ、ザイチェン」。東コレデザイナー、海外での企画生産を経てアパレルメーカーのアジア展開を担当する佐藤秀昭氏の視点から中国でいま起こっていることをお届けする。第12回は中国で注目を集める日本の芸能人を紹介。オーディション番組から発掘された若き日本人のスターには日本と中国の芸能界の違いを語ってもらった。

(文・佐藤秀昭)

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 上海の隔離の季節は進み、気が付けば小学校の夏休みと同じ40日間もロックダウンされている。毎日ラジオ体操のように部屋で自ら抗原検査をし、2日に1回は学校のプールに行くようにPCR検査を受けにホテルのロビーに出る。

 土日や週末は外へ出ることは出来ないため、部屋で古い映画を見ている。中国語の字幕の上のオードリー・ヘップバーンや三船敏郎は新鮮に目に映る。ロックダウンになる前、上海で何度も映画館を訪れたことを遠い昔のように感じる。

1930年に設立された24時間営業の国泰電影院
1930年に設立された24時間営業の国泰電影院

 映画を見たい気持ちももちろんあったが、中国ではすぐに新作映画がネットで拡散されてしまう。映画館に行かずとも新作映画を楽しめてしまう中で、わざわざチケットを買ってまで映画館に来るのはどんな人なのか、僕はそこに興味があった。特に日本映画であればなおさらだ。

◇ ◇ ◇

 まだコロナウイルスの影が射す前の梅の花咲く2月の終わり、上海の街中にある映画館に、有村架純と菅田将暉主演の「花束みたいな恋をした」を観に行った。チケット代は1200円ほど。席数は80席ほどで、我が青春の早稲田松竹を思わせる小箱だった。ソーシャルディスタンスのため数席ごとに黄色いビニールテープが貼られていたが、8割くらいの集客で、20代前後のカップル、女性同士、男性同士のお客さんなど、イマ風のファッションをしている若い観客が多く見られた。

 昨年秋には2008年の作品である本木雅弘、広末涼子出演の「おくりびと」が中国で初めて公開され話題になっていたが、中国で日本映画が公開されることはそこまで多くはないようだ。

 中国の若い友人たちと話すとき、日本の芸能界や映画、ドラマの話をすることがある。石原さとみ、新垣結衣、綾瀬はるかなどの主演女優たちは認知度が高かったが、最も有名な女性芸能人は水原希子のようだ。そして最近では中国の広告にも出ているKōki,もよく知られていた。

 男性では中国版Twitterと呼ばれているWeiboのアカウントもある福山雅治、木村拓哉、山下智久、嵐などは人気も知名度も高い。特に若手俳優では菅田将暉が注目されており、小松菜奈との結婚も大きなニュースとなっていた。

 中国国内での活動で認知度を高めたのは、2019年に中華圏で絶大な人気を誇るジェイ・チョウ(周杰伦)のミュージックビデオに出演した三吉彩花、2013年に実写ドラマ「イタズラなKiss~Love in TOKYO」が日本と同時に中国で配信され大ヒットを記録した古川雄輝などが挙げられた。

 ただ、僕の周りに限った話かもしれないが、特にZ世代、かつ日本語を話せない中国人の間では、我々がよく知っている日本の芸能人の認知度は決して著しく高いとは言い切れないと感じた。

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 中国が掲げる「共同富裕(※)」という概念のもと最近は規制が厳しくなったが、昨年までは韓国の「PRODUCE101」のもとに製作された「创造101(CHUANG)」や「青春有你(Youth With You)」などのオーディション番組が人気で、その中では若き日本人のスターも多く誕生していた。

※共同富裕:中国共産党政権が掲げる貧富の格差を縮小して社会全体が豊かになるというスローガン

 現在、中国の芸能界で活躍をする羽生田挙武(はにゅうだ・あむ)さんもその一人だ。彼はTOKYOBASE出身で現在は日本ブランドの中国進出に携わる、“上海一のかぶき者”のファッションプロデューサーの西山和希さんに紹介してもらった。

 日本ではジャニーズ事務所に所属していた彼が退所後、スーツケース1つで中国に渡ったのは1年半ほど前。オーディション番組のファイナリストとなり、その後「VOGUE Hong Kong」や「时尚Cosmo」などの多くの雑誌やメディアに取り上げられ、「LuckinCoffee(瑞幸咖啡)」や「PRADA 」「dunhill」など、多くの広告やタイアップなどでもその凛とした姿を見せた。そして今年3月、中国語の楽曲でソロデビューし、上海の野外音楽フェスにも参加を果たした。

 ジャニーズ事務所に所属していた頃から世界で活躍するアーティストを目指していた彼は学校と芸能活動の傍ら、英語を本格的に学び、現在は中国語も勉強している。しかし、中国の芸能界では同世代でのトリリンガルも珍しくはなく、彼ですらそのグローバルスタンダードに驚くこともあるそうだ。そして、日中の芸能界の違いを聞いたところ、圧倒的な意思決定スピードの速さ、新しいアイデアへのチャレンジ精神などが中国は桁違いとのことだった。

 家族の影響で子どもの頃にブルース・リーの映画に夢中になり、すでに一流の表現者となった彼が次世代にその熱を与えることが夢だと語る真っ直ぐな眼差しは、とてもキラキラと光っていて眩しかった。もちろん、業界や規模、年齢やヴィジョンも違うが、中国の一線で戦う彼の言葉には重みがあり学ぶところがあった。

 そして、僕はすぐ彼のファンになった。

スピッツ「スターゲイザー」

次回は5月23日(月)公開予定です。

佐藤 秀昭(Hideaki Sato)

群馬県桐生市出身。早稲田大学第一文学部卒業。在学中に、友人とブランド「トウキョウリッパー(TOKYO RIPPER)」を設立し、卒業と同年に東京コレクションにデビュー。ブランド休止後、下町のOEMメーカー、雇われ社長、繊維商社のM&A部門を経て、現在はレディースアパレルメーカーの海外事業本部に勤務。主に中国、アジアでの自社ブランド展開に従事。家族と猫を日本に残し、2021年9月からしばらくの間、上海長期出張中。

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