

東コレデザイナー、海外での企画生産を経てアパレルメーカーのアジア展開を担当する佐藤秀昭氏の視点から、中国でいま起こっていることを週1回更新でお届けするコラム連載「ニイハオ、ザイチェン」が期間限定で復活。2ヶ月ぶりに舞い降りた上海の地で待ち受けていたのは––。
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(文・佐藤秀昭)
「ニッポン、ザイチェン。」
天気予報士が「真夏のピークは去った」と言っていた8月の終わりのことだ。僕は満員御礼の飛行機で再び上海に向かっていた。今回は1ヶ月ほどの出張となる。飛行機の窓に映る中国の地図の端っこはオレンジ色の夕闇に包まれていた。聞き間違えであって欲しかったが、現地の気温は35℃とアナウンスされた。
2ヶ月ぶりの浦東空港は漢方と埃が入り混じったような乾いた匂いがした。しかし、その余韻を噛みしめる間もなく、白い防護服の職員からPCR検査を受けるように促される。一歩空港の外に出ると小籠包の蓋を開けたときのような熱気で額に汗が滲んだ。

検査が終わり、バス停の前のパイプ椅子に座る。キリンジの「エイリアンズ」を両耳に突っ込む。いつまで経っても慣れない痛みには、聞き慣れたメロディが一番の処方箋だ。
キリンジ「エイリアンズ」
黒い夜の帳が下りる頃に修学旅行のようなバスに乗り込む。そしてバイパスをぐるぐると回り、ようやくホテルに到着した。ふと腕時計に目をやると、日付が今日か明日で迷っていた。

バスの前に並んだスーツケースは目の前にシャチが飛びこんだのかというくらい消毒液で濡れていて、鼻をつく臭いがした。指定された部屋に入りドアを閉じる。ここから出られるのは10日後だ。市民はいまだ毎日のようにPCR検査を受け、部分的に封鎖されている地域やマンションもある。
そう。中国のゼロコロナ政策は今なお続いている。あのロックダウンから5ヶ月ぶり3回目となる僕の隔離生活がこうして始まった。
◇ ◇ ◇
荷解きが終わると、中国の草木も眠る丑三つ時になっていた。前回の隔離生活では、隔離シェフの料理をあるがまま堪能したが、今回は日本から少しの食材と調味料を持ち込んだ。
星も月も見えない窓の外の闇を前に、小さなポータブルのスピーカーから「エイリアンズ」のイントロがまた流れる。蕎麦を手繰りながら、そういえば映画「エイリアン」に出てきた猫のジョーンズは無事に地球に戻れたんだっけ、とふと気になった。
またここで上海の日々を綴っていこう。
「ニイハオ、上海。」
>>次回は9月19日(月・祝)に公開予定
最終更新日:
■コラム連載「ニイハオ、ザイチェン」バックナンバー
・vol.17:さよなら上海、サヨナラCOLOR
・vol.16:地獄の上海でなぜ悪い
・vol.15:上海の日常の中にあるNIPPON
・vol.14:いまだ見えない上海の隔離からの卒業
・vol.13:上海でトーキョーの洋服を売るという生業
・vol.12:上海のスターゲイザー
・vol.11:上海でラーメンたべたい
・vol.10:上海のペットブームの光と影
・vol.9:上海隔離生活の中の彩り
・vol.8:上海で珈琲いかがでしょう
・vol.7:上海で出会った日本の漫画とアニメ
・vol.6:上海の日常 ときどき アート
・vol.5:上海に吹くサステナブルの優しい風
・vol.4:スメルズ・ライク・ティーン・スピリットな上海Z世代とスワロウテイル
・vol.3:隔離のグルメと上海蟹
・vol.2:書を捨てよ 上海の町へ出よう
・vol.1:上海と原宿をめぐるアイデンティティ
・プロローグ:琥珀色の街より、你好
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