
Kei Ninomiya by Fumihito Ishii

Kei Ninomiya by Fumihito Ishii
「Beautiful Chaos(美しい混沌)」をコンセプトに掲げる「ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)」。2004年、ロンドンを皮切りに世界各地へ拡大し、コム デ ギャルソンブランドを軸に、若手クリエイターのインキュベーションからラグジュアリーブランドとの協業、アートやカルチャーとのタッチポイントの創出まで、独自のキュレーションで現代のファッションシーンに欠かせない役割を担っている。
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20周年を超え、新たに始動したプロジェクトの初代クリエイターに「ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)」の二宮啓が起用された。「DSM Kei Ninomiya」始動から3シーズン目となる今季、イタリア・フィレンツェで開催された「第110回ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo、以下ピッティ)」で初のランウェイショーを披露。ドーバー ストリート マーケットの思想を服としてどう表現するのか——。新たな挑戦の背景を聞いた。
——昨年ローンチした「DSM Kei Ninomiya」ですが、プロジェクトが始まった経緯や、どんな目的のもとに立ち上がったブランドなのでしょう?
明確なゴールが定まっているわけではありません。スタートとしては、ドーバーストリートマーケットのインハウスブランドを作って行くという流れの中で、自分が一つのブランドを任されたと思っています。
ドーバー ストリート マーケットというプラットフォームの上で、いろいろなデザイナーやアーティスト、さまざまな感覚を持った人たちが参加できるようなプロジェクトとして捉えています。
——それは川久保玲さんからのお話だったのでしょうか。
この企画のビジョンとしては川久保とエイドリアン・ジョフィがディスカッションを重ねた中から生まれたものだと認識しています。その上で、川久保から「こういうことに興味はないか」「やってみないか」という形で声をかけてもらいましたが、その時点で全体構想がどこまで決まっていたかは分かりませんし、今後ほかのブランドがどのように走るのかも未知です。
——ドーバー ストリート マーケットの名前がついたプロジェクトです。二宮さんはドーバー ストリート マーケットの本質をどのように捉え、どのように服に落とし込んだのでしょうか。
一言では言い表せません。ドーバー ストリート マーケットには「Beautiful Chaos(美しい混沌)」というコンセプトがあり、ストリートからラグジュアリー、長い歴史を持つブランドからインディペンデントなブランドまで、様々なものが共存しているプラットフォームです。川久保やエイドリアンの目を通し編集された世界観があり、そうしたものづくりや商品、価値観の上に成り立っている場所だと思っています。
——二宮さん自身にとってドーバー ストリート マーケットはどんな場所ですか。
コム デ ギャルソンという会社の中にもたくさんブランドがありますが、ドーバー ストリート マーケットではより多くのブランドを扱っています。国内外の有名無名問わず様々なクリエイターやブランドの商品と並ぶことで刺激を受けますし、自分自身も興味を持つきっかけになります。
インスピレーションという言葉は少し陳腐かもしれませんが、お互いに見たり感じたりすることで、新しい発見が生まれる場所です。お客様にとっても、それぞれ目的や感じ方は違うと思います。いろいろな価値観が共存しているからこそ、人によって違う面白さを発見できる、そんな場所なのではないでしょうか。
——今回の「DSM Kei Ninomiya」は、ご自身の「noir kei ninomiya」と比べると、より日常に近いデザインアプローチに見えます。意識的に変えた部分はありますか。
逆をやろうとか、あえて離れようという感覚はありません。ノワールの場合は抽象的なキーワードからコレクションの構想が始まることが多いです。そのためゴールも抽象的な表現に向かいます。
一方で「DSM Kei Ninomiya」は、ドーバー ストリート マーケットに集まるコミュニティからスタートしています。より人に近いところが起点になっているので、結果的にリアルクローズに近いアウトプットになっているのだと思います。
——「DSM Kei Ninomiya」には、具体的な顧客像があるのでしょうか。
お客様そのものを見ているということではないです。むしろ、そこに集まる多様なカルチャーやバックグラウンドを見ています。そうしたカルチャーに対して新しい解釈を加えられないか。普通の服を作るだけではなく、その周辺にある意味や背景も含めてデザインすることで、新しい提案ができないかと考えています。
——制作はどのように進めているのでしょうか。
「DSM Kei Ninomiya」は、海外での生産となるため、より細かいコミュニケーションが必要です。前シーズンのコレクションには、「フットボール」というキーワードがあります。ただユニフォームそのものを作るわけではなく、フーリガンカルチャーやフットボールを取り巻くカルチャー全体からアイデアを拾っています。今回は音楽からインスピレーションを得ています。パンク的な世界観の中で新しい表現ができないかと考えました。
——そういったアイデアはご自身の興味から来るのでしょうか。
まだ3シーズン目ですが、自分の興味が中心です。もちろん今後はディスカッションを重ねながら進化していくと思いますが、現段階では自分が面白いと思うことからスタートしています。
——今回ならではの新しい試みはありますか。
デザイン面ではメンズウェアのパターンワークです。それに加えて、グラフィックなどアーティストとのコラボレーションも行っています。
*ジェイミー・リード(Jamie Reid)、ジュディ・ブレイム(Judy Blame)。シューズでは「ヴァンズ(VANS)」「ジョージコックス(GEORGE COX)」とのコラボレーション。ウェアでは「ショット(Schott)」がショーで登場した。

Image by: Photograph courtesy of John Marchant Gallery – Reading Festival 1975 by Jamie Reid
——生産体制も普段と違うそうですね。
「DSM Kei Ninomiya」は、ドーバー ストリート マーケット パリのブランドデベロップメント部門*が主導しています。東京でデザインをして、パリのチームが生産をする形になります。時差も距離もありますし、生産のタイムラインも違います。すぐ変更がきくわけでもありません。まだ良し悪しは判断できませんが、日本とは違う面白さがあります。
*これまで「イー アール エル(ERL)」や「ヴァケラ(Vaquera)」などの若手ブランドをサポートし、DSMの生産背景を提供している。「DSM Kei Ninomiya」はその部門による初の本格的なインハウスブランドとなる。
——今回ピッティで発表することになった理由を教えてください。
ご招待いただいたというのが大きな理由ではあるんですが、せっかくブランドも始まったタイミングでしたし、新しいチャレンジをする良い機会だと思って参加を決めました。もう一つは、東京やパリではない場所で発表するということです。ドーバー ストリート マーケットの新しいプロジェクトを、ドーバーの店舗がない都市で発表するというのも面白い取り組みだと考えました。いつもと違う場所で発表することで新しい見え方があるのではないかと思っています。
——ショーの作り方も普段とは違う?
今回はショーを行うスタッフもパリチームを中心に組んでおり、実際にヨーロッパへ行ってから最終の準備などを行いました。パリでのショー作りとはスタッフも環境も異なっていたので、苦労したところもありますが、最終的にうまくまとまったと思います。パリチームもこのブランドでショーをやるのは初めてなので、やってみないと分からない部分もありましたが、現地でやる以上、日本から人を連れて行くよりも現地の人たちとセッションした方が面白いと思っています。そこでしか生まれないものがあると思うので。
——今回初めてショー形式で発表されますが、どんな期待をしていますか?
服は人が着ている姿が一番魅力的だと思っています。歩いている姿や動いている姿には写真とは違う強さがあります。そういう意味では、これまでとは違う角度でコレクションを見てもらえると思っています。
——ご自身が考えるファッションにおける「新しさ」とは?
自分自身が見たことのないものを発見することでもあります。時代がどう変わっても、誰かがそういう挑戦をし続けなければ業界は前に進まないと思います。だから新しさは探し続けたいです。
——一方で「変わらない価値」とは何でしょうか。
「自由さ」だと考えます。好きなものを選べること。好きな服を着られること。それは本当に幸せなことだと思います。いろいろな制約が増えていく時代ですが、作り手も着る人も自由に選択できること。それがファッションの本質的な価値だと思います。
——新プロジェクトを担う立場として、社内外からのプレッシャーも大きいと思います。
プレッシャーはあります。ただ、周りにはもっと大きなプレッシャーの中で仕事をしている人たちがいます。川久保もそうですし、渡辺(淳弥)もそうです。そういう方たちを見ていると、自分はまだまだだなと思います。
——先輩方から学ぶことはありますか。
ものづくりに対する真摯さです。「人生を懸けている」という言葉は大袈裟に聞こえるかもしれませんが、本当に100%ものづくりに向き合っています。川久保とは普段多く言葉を交わすわけではないですが、仕事の判断がとにかく速く、迷う時間がほとんどないというその決断力や、そのような姿勢を見ていると、自分ももっと頑張らなければと思います。
——「DSM Kei Ninomiya」と「noir kei ninomiya」の二足の草鞋を経験されてますが、今後どのように影響し合っていくと思いますか。
2つのブランドは全く違うものです。お互いに影響を与える可能性はあると思いますが、今の段階ではそれぞれ別の方向に面白く発展していけばいいと思っています。どちらかがどちらに寄るという感覚ではありません。制作スケジュール上はウィメンズとメンズがきれいに繋がったので、ずっと走り続けることになると思います。
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