
「Village PM」のブラム・デ・クリーンとバジル・ラプレイ
Image by: FASHIONSNAP

「Village PM」のブラム・デ・クリーンとバジル・ラプレイ
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スケートシーンとファッションシーンの双方で存在感を高めている、パリ発のフットウェアブランド「ヴィレッジピーエム(Village PM)」。2025年のローンチからわずか1年足らずで、ヨーロッパのみならず日本へも展開を拡大。日本ではドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)をはじめとするセレクトショップで取り扱われるなど、感度の高いスケーターの間で支持を広げている。
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ブランドを手掛けるのは、生粋のスケートボーダーであるバジル・ラプレイ(Basile Lapray)とブラム・デ・クリーン(Bram De Cleen)の二人。ラプレイは「サロモン(SALOMON)」やフットウェア開発会社「All Triangles」でアウトドアシューズの研究・開発に携わり、デ・クリーンはスケートパークの構造やデジタルクリエイティブの分野でキャリアを積んできた。それぞれの経験を持ち寄り、「自分たちが本当に履きたいスケートシューズを作る」というシンプルな思いからヴィレッジピーエムを立ち上げた。


ブランドを象徴するモデル「1PM」は、クライミングシューズから着想を得た左右非対称のレースシステムや独自構造「Rubber Glove Construction」を採用。木型からラバーコンパウンド、アウトソールに至るまでゼロから設計し、スケートシューズに求められる耐久性と繊細なボードフィールを高次元で両立している。現在は「1PM」を軸に、「1.30PM」「1PM Mid」、さらに新たなシルエット「2PM」までラインアップを広げている。



1PM
そのプロダクトと同様に話題を呼んでいるのが、毎シーズン展開している"トラックショールーム"だ。パリ・マレ地区の路上に停めたトラックをショールームに仕立て、世界中のバイヤーを迎え入れるというユニークなスタイルは、インディペンデントブランドらしい姿勢を体現する試みとして、多くの関係者の注目を集めている。

今回は2027年春夏パリ・メンズ・ファッションウィークに合わせて行われたトラックショールームを訪れ、デ・クリーンにインタビュー。ブランド誕生の背景から、スケートシューズに対する哲学、そしてファッションシーンから支持を集める理由まで話を聞いた。
── まずブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。
僕たちは二人ともスケートボーダーです。そして、長い間スケートシューズの世界では新しいことが何も起きていないと感じていました。市場全体が停滞していて、ラインアップにも物足りなさを感じていたんです。
僕たちだけでなく、友人たちもスケートをするときだけスケートシューズを履いて、終わったらすぐ別の靴に履き替える。まるでテニスラケットのように、スポーツをするときだけ使う道具になっていたんです。でも、昔のスケートボードはそうではありませんでした。スケートシューズは一日中履くものであり、カルチャーの一部だったんです。そこで、「今のスケートシューズには何かが欠けているんじゃないか」と思ったことがヴィレッジピーエムを始めた理由のひとつです。
── 20年前のスケートシューズはファッションアイテムとしても存在感がありました。何が変わったと思いますか?
20年ほど前のスケートシューズ業界には、スケーター自身が手掛けるブランドが数多くありました。それぞれが独自の視点を持ち、毎シーズン新しいアイデアや機能、デザインを提案していたんです。
でも、その後「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(adidas)」といった大手スポーツブランドが市場を席巻しました。参入当初は開発やイノベーションも積極的でしたが、市場を獲得すると、スケートシューズは数あるカテゴリーの一つになりました。もちろん今もランニングやサッカーでは革新を続けていますが、スケートシューズでは以前のような大胆な提案は少なくなり、市場全体が予測可能なものになっていったと思います。
僕自身が最後に「本当に新しい」と感じたのは、Nike SBの「ステファン・ジャノスキー(Stefan Janoski)」です。それ以降も細かな進化はありましたが、業界全体を変えるようなラディカルなイノベーションはなかった。だからこそヴィレッジピーエムでは、最初から根本的に違うものを目指しました。そのためには既存のものを流用するのではなく、自分たちですべてを開発する必要があると考えたんです。
── ナイキやアディダスといった巨大ブランドが存在する中でヴィレッジピーエムを立ち上げました。当時、周囲の反応はどうでしたか?
思っていた以上にポジティブな反応でした。リテーラーや友人、スケーターなど、僕たちの周りにいる人たちは、「久しぶりにスケートボードから生まれたブランドが出てきた」と歓迎してくれたんです。スケートボードコミュニティには、自分たちのカルチャーから生まれる新しいブランドを受け入れる準備ができていたように感じました。
── スケートシューズをデザインするうえで、重視するのはどういったポイントですか?
一番大切なのはフィット感です。足とスケートボードの間に余計なものを介在させず、できるだけダイレクトな感覚を得られることを重視しています。次に耐久性。そして、僕たちが大切にしているのが“ブレイクインタイム”です。スケートボードでは、新しいシューズを履き始めてから「ようやく気持ちよく滑れる」と感じるまでの期間をそう呼びます。その時間をできるだけ短くして、箱から出した瞬間から快適に滑れるシューズを目指しています。
そして最後に、見た目も欠かせません。スケートが終わった瞬間に履き替えたくなる靴ではなく、そのまま街でも履き続けたいと思えるデザインであること。パフォーマンスを追求した結果として生まれる美しさも、ヴィレッジピーエムにとって大切な要素です。


── ヴィレッジピーエムはクライミングシューズやアウトドアフットウェアから着想を得ていますが、スケートシューズとしてのアイデンティティのバランスはどのように考えていますか?
クライミングシューズとスケートシューズには共通点があります。どちらも足との一体感が求められ、摩耗が激しい環境で使われるので、高い耐久性も必要です。そうした機能面には、スケートシューズに応用できる要素が多くありました。
一方で、僕たちがアウトドアから影響を受けたのは、カルチャーではありません。影響を受けたのは、プロダクトに対する向き合い方です。アウトドアシューズは、素材や構造、数ミリ単位のディテールまで徹底的に考え抜かれています。その細部へのこだわりや開発姿勢には大きな影響を受けました。
でも、ブランドとしてのルーツは100%スケートボードです。僕たちはクライマーではありませんし、スケートとクライミングを融合させたいわけでもない。あくまでもスケートボーダーとして、スケートシューズをより良くするために必要な要素だけを取り入れているんです。
── 木型、ラバー配合、アウトソール、インソールまでゼロから開発されています。そうしたアイデアを実際のプロダクトに落とし込むうえで、最も難しかったことは何でしたか?
一番難しかったのは、ラスト(木型)を作ることです。ラスト作りは、とても専門性の高い仕事で、細かなディテールの積み重ねなんです。そして、一度ラストを作ると、その形をベースに作られるすべてのシューズが、その影響を受けることになります。

つまり、まだシューズのデザインが決まっていない段階で、まずボリュームを決めなければならない。上から見たときのシルエットや、遠くから見たときのプロポーションをどうするか。その判断が一番難しかったですね。
── トラックショールームはすでにヴィレッジピーエムを象徴する一面になっています。振り返ってみて、従来のショールームよりもブランドらしさを表現できたと思いますか?
そう思います。最初は本当に予算の問題でした。パリファッションウィーク期間に発表するならマレ地区が一番いい。でも、あそこでショールームを借りるのは僕たちには到底無理だったんです。とはいえ、予算を理由に別の場所へ行くのも違うと思っていました。そこで、「この場所にいながら、自分たちにもできる方法はないか」と考えた結果が、このトラックでした。
正直、最初は「本当にうまくいくのかな?」という不安もありました。でも実際に設営してみると、僕たち自身が「これで十分じゃないか」と思えたんです。通りかかった人が気軽に立ち寄れるし、友人もふらっと遊びに来られる。従来のショールームのような堅苦しさがなくて、バイヤーもブランドを初めて知る人も自然に入ってこられる空間になりました。
最初のシーズンが終わった頃には、「これ、すごくいいね」と思うようになっていました。もちろん今でも豪華なショールームを借りられるわけではありません。でも、もうそれ以上に、このやり方が好きなんです。巨大ブランドが何百万ユーロもかけてショールームを作る世界の中で、僕たちは小さなブランドです。このトラックは、そんな僕たちらしさをそのまま表していると思います。

── 現在はドーバー ストリート マーケットなどの有力店で展開されています。ファッション業界からの反応は予想していましたか?
予想していたかと言われると、そうではありません。でも、期待はしていました。僕たちはスケートボーダーですが、それだけに興味があるわけではありません。いろいろなプロダクトを見るのが好きですし、ジャンルで物事を分けて考えるタイプでもありません。
そして、機能やパフォーマンスを突き詰めたプロダクトには、その結果として独自のデザインが生まれると考えています。見た目のためのデザインではなく、機能に理由があるからこそ、その形になる。そういうプロダクトは、ファッションの文脈でも評価されることが多いと思うんです。だから、そうした価値観を持つ人たちに届いたらいいなという期待はありました。
── なぜ日本を初期の海外展開先のひとつに選んだのでしょうか?
日本にはすでに素晴らしいスケートボードカルチャーがありますし、レベルの高いスケーターもたくさんいます。また、新しいものや新しい美意識に対してオープンで、機能や純粋さを感じられるプロダクトに興味を持ってくれる人が多いという印象がありました。
実際、ブランドを立ち上げた最初のシーズンから、日本のバイヤーから多くの問い合わせをいただきましたし、Instagramでも日本からの反応がとても多かったんです。その時点で、日本では何かしら共感してもらえていると感じました。だから、日本進出は戦略的に決めたというよりも、ごく自然な流れだったんです。ブランドの方が日本に引き寄せられていったような感覚でした。

── 現在はヨーロッパ、日本へと展開を広げていますが、今後のヴィレッジピーエムにとって次のチャレンジは何になるのでしょうか?
まずは、ブランドとして存在し続けることです。成長し、しっかりとしたブランドになり、「始まったばかりのブランド」から「ちゃんと存在するブランド」へと少しずつ変わっていくことが、今の大きな課題です。
9月からはアメリカでの展開も始まります。スケートボード発祥の地であり、巨大なマーケットでもあるので、大きなチャレンジになると思います。同時に、チーム作りも新しいフェーズに入っています。昨年3月に日本を訪れたとき、ある人に「ヴィレッジピーエムは25〜50人くらいの会社だと思っていた」と言われたんです。でも実際には、当時ブランドを日々動かしていたコアメンバーは3〜4人だけでした。もちろん、周囲には手を貸してくれる才能ある人たちがたくさんいて、そこには本当に恵まれています。
でもこれからは新しいメンバーを迎え、ブランドらしさを保ちながら、人に任せることやチームとして働くことを学んでいかなければなりません。存在し続けること、そしてチームになっていくこと。それが今のヴィレッジピーエムにとっての次のチャレンジです。

photography: Hiroyuki Ozawa
最終更新日:
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