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【トップに聞く 2022】三陽商会 大江伸治社長 「美しい価値あるものに対する需要は絶対になくならない」

三陽商会 大江伸治社長

Video by: FASHIONSNAP

2022年は攻めの年 プロモーションで思い切った投資も視野に

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―コロナなどの影響からサプライチェーンの乱れが深刻化しています。御社にとっても大きな打撃となっていますか?

 実際には全然ないですよ。例えば、ベトナムのロックダウンの影響で一部納期遅れが発生したんですが、そもそもベトナム生産は5%もないくらい。だから多少の納期遅延はあっても大事にはなっていません。逆に納入が遅れたことによって、シーズンジャストインになって旨味もありましたし(笑)。

三陽商会 大江伸治

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―依然コロナ禍で先行きが不透明ですが、2022年のアパレル業界についてはどのように見据えていますか?

 それはもう「神のみぞ知る」じゃないですか(笑)。希望を言えば、正常化してもらいたいと思っているけれども。

―経営方針としては「ウィズコロナ」「アフターコロナ」どちらの想定ですか?

 ウィズコロナでしょうね。ワーストシナリオをベースにボトムラインを抑えつつ、正常化した時に上積みを取っていく。それが一番正しいやり方なんでしょうね。

―2022年に主に何に取り組んでいきますか?

 この2年で様々な施策をほぼ思い通りに実行できて、ある意味で基盤を確保できたと考えていますが、そうは言っても事業構造改革を継続推進しつつ、売上トップラインをいかに確保するか、それに尽きると思いますね。

 売上のトップラインを拡張する方策については、例えばプロモーションで思い切った投資もしたいと考えてます。デジタル戦略については既に着手してることを粛々と実行することによってスペックを高めていく。そんなところでしょうか。

―来春から東証の市場区分が変更されます。三陽商会ではプライム市場を選択していますが、上場基準に対して流通株式時価総額が未達(12月27日時点)で、これも喫緊の課題かと思います。

 株価を上げる方法は、業績が改善して企業価値を上げることしかないわけで、マジックはないですから。ただ、三井物産にCB(無担保転換社債型新株予約権付社債)を引き受けてもらったり、銀行との関係も良くなっていると思うので、信用は積み上げているつもりです。

三陽商会 大江伸治

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―通期業績にも期待がかかっています。

 中身が良くなっていることは、投資家や株主の皆さまはわかっておられるのだけど、結果を出しているわけではなく、上半期も良くなったと言っても赤字です。株価というのは他律的に決まることですから、僕自身はメーキャップして実態を隠すとか、そんなことは一切やりたくないと思っている。小手先のテクニックで作為をせずに堂々と、真正面からの評価を受け止めたいと考えています。

「リサイクル」だけではプレミアムバリューにならない

―2022年春夏から新疆綿の使用を中止されます。一部のブランド商品での使用を明らかにしていましたが、どのような経緯で決定されたのでしょうか?

 本当に新疆綿を使用することがウイグル族の人権問題に繋がっているのか、商社の方たちを通じて情報収集に努めたのですが、「わからない」というのが結論で。わからないけども、疑念はある。少しでも疑念がある以上は、扱うべきではないという判断に転じたということです。ただ扱い量はそんなに多くはないし、ビジネスへの大きな支障もありませんね。

―サステナビリティへの取り組みは上場企業に求められる必須項目となっていますね。

 当社でも最重要経営課題として組み入れていく方針で、社内でサステナビリティ委員会を作り、方針についてきっちりとまとめている最中です。

―経営とサステナビリティの両立は難しいところがあるかと思います。

 慈善事業として本来の事業と離れたことをやるというのは、営利企業としてだめだと思っていまして。大まかな基準としては、活動そのものに合理性があるか、あとは直接収益につながらなかったとしても企業価値を高める上で意義があるのか。そして、我々の事業戦略との相関関係があるのかをしっかりと見極めていきたいですね。

―いま推進していることは?

 「廃棄ゼロ」には具体的に取り組んでいます。以前はどうにもならない商品の量を廃棄していましたけど、この3年間で劇的に在庫を減らしたことで、温室効果ガスの削減にも大きく寄与しています。

 あとは「エコアルフ(ECOALF)」事業ではリサイクルや環境負荷の低い素材を使った商品を作っています。それも単にペットボトルのリサイクルだけではなく、海洋ゴミやコーヒーの豆、タイヤなど多様なリサイクル素材を実際にビジネスとして展開しているのは、他社ではあまりやってないようなことではないでしょうか。

「エコアルフ」のリサイクル商品

―再生素材を打ち出すだけでは消費者の心を掴むのは難しい気がしますが、実際のところどうなのでしょうか?

 おっしゃる通りでね。リサイクルは標準装備に近いスペックになりつつあり、汎用化してしまったと感じています。商品としての魅力がなければ、リサイクルであるというだけで消費者はプレミアムバリューを認めない。差別化要素にならないんですよ。だからエコアルフについては日本企画商品をコアにするようなラインナップへの変更を協議しているところです。基本的には我々が企画をして、商品力を徹底してブラッシュアップする。それがまず先決かなと。将来的には日本企画商品をグローバルに供給するくらいのことをしないとだめだと、僕は思ってます。

「日本のアパレルはもう終わり」は決めつけだ

―アパレル業界は淘汰が進み、激動の時代を迎えています。その中で、大江社長にとって必要な人材とは?

 「クリエイティビティが高い人」、そして「チャレンジングスピリットを持った人」。リスクの高いビジネスですので、リスクに対して臆病な人は難しいかなと。あとは「モラルの高い人」ですね。もちろん、能力レベルが高いことも大事ですよ。英語ができるとか、知能指数が高いとか。でも僕が考える必要な人材はこの3つです。

―「モラルの高い人」とは具体的に?

 これは結構重要な要素で、物事に対して真正面からぶつかり、堂々と結果責任を負える。そういう潔さを持った人、と個人的には考えています。

―2年という短いスパンで三陽商会の構造改革を断行したことは、痛みも伴ったと思います。大江社長はいま74歳でいらっしゃいますが、そのアグレッシブなエネルギーの源はどういったところから?

 まあ、年の割に頑張っているな、っていう感じかな(笑)。僕自身はそんなに努力してるつもりはないんだけどね。目の前にミッションがあってなんとか遂行したい、そういう気持ちを僕はものすごく持っていてね。引き受けた以上は義務を果たす。なんとかしたいという気持ちで毎日やっています。

三陽商会 大江伸治

Imaged by FASHIONSNAP

―トップに就任された時期がまさにコロナが流行り始めた時でした。社会が落ち込む中、心が折れそうになったりしませんでしたか?(笑)

 そういうことはあまりないんだよね(笑)。仕事が大変だって思ったこともそんなにないかな。ストレスをあまり感じないんだよ。サラリーマンを何年やっているのかな......もう50年やっているのか。この歳になっても皆さんから期待されて仕事ができているのは幸福だと思っていて。この幸福感をもう少し味わいたいなと。

「日本のアパレル業界は衰退の一途をたどるしかない」といった論評もある中で、その心持に敬服します。

 そんなことを言う人がいたら根拠を聞きたいよね。消費が減ったとはいえ、現に7兆円以上の市場がまだある。我々がターゲットとするミドルアッパー市場だけで最低でも5000億円ありますから。それでアパレルビジネスはだめだって、そんなの理屈になっていない。なんで悲観的になるのかなと思っちゃいますね。仮に市場規模5000億円の中で1割でも取れたら500億円ですよね。そういう風に考えれば、多少市場が縮小したとしても島をしっかりと確保することは十分可能だし、我々にとってはそれが義務。「日本のアパレルはもう終わりだ」とかそう言う人は、決めつけることによって責任回避をしたいんでしょう。そういうことは僕はやらない。

―業界の第一線に立ち続ける大江社長から、業界へのメッセージがあればお願いします。

 我々が扱っている商品は嗜好品である。人間が地球に存在する以上、美しい価値のあるものに対する需要は絶対になくなることはない。需要というのは社会や文明が進むにつれてレベルが高くなっていく。我々もそのレベルアップに対して追いつけるようにクリエイティビティをもっと磨いてより高いレベルの商品を供給する、それだけのことです。

(聞き手:伊藤真帆、長岡史織)

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