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現代にもマッチする「アラヤ」のウエスタンシャツ【連載:sushiのB面コラム】

青いシャツ
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現代にもマッチする「アラヤ」のウエスタンシャツ【連載:sushiのB面コラム】

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ファッションライターsushiが独自の視点で、定番アイテムの裏に隠れた“B面的名品”について語るコラム連載「sushiのB面コラム」。今月フィーチャーするのは、日本人デザイナーの齋藤英樹が手掛ける「アラヤ」のウエスタンシャツ。現代にもマッチしたデザインで芸能人からも衣装で着用されるなど支持を集めるこのウエスタンシャツは、ヴィンテージにはない魅力も備えているという。

 生産者の顔写真がラベルされた野菜を買ったことがあるだろうか。僕は正直これまで気にしたことがない。その作り手が自分も共感できるような人間なのかはそれだけではわからないからだ。もしかしたらとてもいい人かもしれないが、全然気が合わない人かもしれない。そもそも顔が見えたところでこちらが一方的に向こうを認識するだけで、向こうはこちらを認識しない。その一方的な状態は、自分と生産者の関係の信頼度を高めることにおいて何ら意味がない、と思う。人間は勝手なので、生産者の写真を見て「いい人そうだな~」と勝手に判断し、いざその人が悪事を働いたと耳にすれば「そんな人だと思っていなかった!もうここの野菜は買わない!」と勝手に幻滅するのだ。もともと悪人だったかもしれないのに。なので僕は、消費物に関しては作り手がアノニマスな存在な方が心置きなく消費できるので、わざわざ生産者の顔なぞ見えなくてよい、と思っていた。

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 いきなりひねくれた導入になった。

 服に関してもそうだ。特にここ数年は、自分が心から共感しきっている特定のデザイナーやブランドの服以外に関しては、むしろ作り手が誰なのか、どこのブランドなのか、まったくわからないくらいの距離感の服が良いと思っている。作り手、デザイナーのパーソナリティが想像できてしまうと、悪い意味で本人の思念が乗ったプロダクトを着用している、という意識になる。故に、そのブランドやデザイナーのスタイルに一度共感できなくなったり、ましてやデザイナー本人が差別発言などでメディアに取り沙汰されると、そのプロダクトに対するリスペクトが失われ、一気に着る気が失せたりする。だから、変に作り手のことを分かったような気分になり、勝手に裏切られたような気持ちになるくらいなら、という考えから、出自が全く不明なモノや、そもそもファッションを目的に作られていないジャンルの古着だけに傾倒した。

 裏を返せば、信頼のおける作り手が存在し、しかもその人が生み出すプロダクトに共感できる、という経験は尊いという事だ。仮にプロダクトを手に取るなら、個人的にはそのデザイナーとの距離感はゼロに近ければ近いほど良いと思う。そのデザイナーの人間性やバックグラウンドに深く共感できるという前提の上で、プロダクトも自分好みのものをアウトプットしている、そんな形が理想ではないかと思う。

 作り手との距離はゼロに近ければ近いほど良いとすると、ファッションで言えば、究極は自分自身で作った服が一番心地よいのかもしれない。ただし、それはなかなか現実的ではないこともよくわかっているので、消費者としての立場を前提とすると、理想的なのは「近しい人が作った服で自分も気に入った服」を着ることではないか。もっとも、近しい存在にそういったモノづくりをしている人がいるとは限らないし、その人の感性に自分が共感できるか、信頼できるかなんてことはわからない。だからこそそういったプロダクトとの出会いは尊い。

 今回は、僕のワードローブの中でも、特に作り手の感性に共感し、デザイン的にも非常に気に入って買い続けている「アラヤ(ALAYA)」のウエスタンシャツを紹介したい。

* * *

 ウエスタンシャツの魅力といえば、やはりその特徴的な意匠だろう。ウエスタンヨークやフラップ、三日月のような形状のクレッセントポケットなどのデザインが引用されれば、一目で「ウエスタンのノリだな」とわかるインパクトがある。

 特に、僕はいわゆるアメリカ西部が開拓された時代の“本気モノのウエスタンシャツ”より、ウエスタンカルチャーが文化として根付き、後に文化の語り手として登場するカントリー歌手や西部劇の役者が着用するために生地にサテンを用いたり、派手な色遣いや豪華な刺繍を施すようになった、よりファッション性に重きを置いた舞台衣装としてのウエスタンシャツのノリがとても好きだ。

 ヴィンテージで探すなら、カウボーイものなら老舗ワークウェアブランドの「ブルーベル(BLUE BELL)」がウエスタンウェアブランドして立ち上げた「ラングラー(Wrangler)」や、アメリカ・コロラドで生まれ、パールボタンやのこぎりポケットなどのウエスタンシャツの典型的なディテールを生み出し、数々のセレブリティに愛された「ロックマウント・ランチウェア(Rockmount Ranch Wear)」、さらにブルックリンのテーラーがウエスタンカルチャーに目を付け、シックでセクシーなウェアを打ち出し、多くの舞台や映画衣装として採用されている「エイチバーシー(H bar C)」などが王道になるだろう。本来であればこれらのブランドのヴィンテージなどを手に入れたいところだが、このあたりのアイテムをピックするにおいて非常に難しいのがサイズ感である。

 ウエスタンシャツはもとはと言えば作業着としての背景を併せ持ち、機能性の観点から基本的にタックインを前提とするため、着丈が長い。また1950年代以降の物においては衣装性が高まる為、シルエットも極端にシェイプされたものなどが増え、非常に時代感のあるものが多く、現代でいい塩梅で着用できるものはほとんどない。

 一方でアラヤのウエスタンシャツは、シルエットをより現代的にアップデートし、リラックスしたサイズ感で着用することができる。ただ、ヴィンテージのウエスタンシャツをデザインソースに現代的なシルエットにアップデートしただけのアイテムは正直に言えばいくらでも存在はする。では個人的にアラヤのウエスタンシャツの何が特に良いと思うかというと、そのサイズ感の計算されようである。

 そもそも、ウエスタンシャツ特有のサイズ感は確かに時代感・コスチューム感を感じさせる決定的な原因の一つであると同時に、ウエスタンシャツのそれらしさを構成する重要な要素であると思うのだ。だからこそ、単純にヨークやスナップボタンなどの見た目的なウエスタンシャツの要素を現代的なカジュアルシャツに落とし込むと“コレジャナイ”感が半端ではない。

 リアルなウエスタンシャツで現代的に着用できるものを探すとなれば、相当恰幅(かっぷく)がある人向けに作られたビッグサイズで、結果として丈の長さと身幅の長さの差が小さくなり、よりボックスシルエットに近い形で自然に着地できている特質な個体を探すしかなくなってくるのだが、アラヤのシャツはまさにそのシルエットに近く、シルエット的な“ウエスタンシャツ感”を損なうことなくバランスしているのが見事なのだ。「きっとヴィンテージのウエスタンシャツを探したときに、現代でもかっこよく着こなせる条件がそろった理想的な個体はこんな感じだろう」と思わせる、本物感とモダンさを両立する逸品だ。

* * *

 アラヤのシャツとの出会いは2年ほど前、ブランドデザイナーとの共通の知人に展示会に誘われたのがきっかけだった。展示が行われた恵比寿のとある真っ白なギャラリースペースに並ぶアラヤの服は、どちらかと言えば繊細でアンニュイな色使いで、ぱっと見の全体感としてはクリーンな印象の物が多い。一方でウエスタンシャツはもちろん、フリンジやダメージ加工など、一般論としてはクリーンな印象とは対称にあるような要素が目に付く。僕のコラムを読んでくれている人は良く分かると思うが、クリーンなアイテムとフリンジやダメージなどのようなロック・パンクテイスト、これは僕が一番好きな組み合わせである。スタッズやシルバーなんかも僕の好きなテイストの一つだが、展示会に在廊していたデザイナーが「スタッズとフリンジは多ければ多いほどいい」と語りながら、接客の合間を縫って古着のフリンジ付き革ジャンに数百発のスタッズを手打ちしていたのが印象深い。

 聞けば、もともと本人のルーツになっているのはそういったパンクロック的な面も大きいそうだ。それをまた別のバックグラウンドで培ったクリーンな雰囲気づくりの技と調和させたデザインと、デザイナー本人のスタイル人柄に勝手に共感し、僕はウエスタンシャツをすぐ注文した。普段は展示会などに行っても普通の買い物と変わらず気に入ったものがなければ付き合いでの注文はほとんどしないタイプだが、アラヤのウエスタンシャツについてはここ数年続けて数型をシーズンごとに購入している、自分の中での定番品だ。表面的なデザインに共感するブランドはあれど、デザイナー本人のスタイルやスタンスにも同時に共感できる一着に出会えたのは稀有な経験であるし、そういったアイテムこそが、今の自分には着ていて一番気持ちのいい服である。

 ちなみにアラヤのデザイナーの齋藤英樹氏は、展示会の際は基本的にギャラリーにいるので、機会があればぜひ話してみてほしい。思った以上に気さくなのもそうだが、クリーンな世界観の根底には実はパンクロックが潜んでいることを感じられるトークが聞けると思う。

>>次回は12月31日(日)に公開予定

15歳で不登校になるものの、ファッションとの出会いで人生が変貌し社会復帰。2018年に大学を卒業後、不動産デベロッパーに入社。商業施設の開発に携わる傍、副業制度を利用し2020年よりフリーランスのファッションライターとしても活動。noteマガジン「落ちていた寿司」でも執筆活動中。3月よりYouTubeチャンネル「着道楽による備忘録」配信開始。

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