
早いもので、2026年も折り返し地点を迎えました。この上半期を振り返ると、年明け早々の米国によるベネズエラ攻撃、そして2月のイラン攻撃と緊迫した国際情勢が続き、海運の要所であるホルムズ海峡が封鎖されたことで、私たちの日常生活にも影響が及んでいます。一方で、そんな重苦しい空気を吹き飛ばすようなスポーツの熱狂もありました。2月に開催されたミラノ・コルティナ冬季五輪では、日本勢が過去最多となる24個のメダルを獲得。そして現在は、アメリカ・カナダ・メキシコを舞台にサッカーワールドカップが開催されています。世界が激動と熱狂に包まれたこの半年間。ファッションの世界では、一体どのような変化が起こっていたのでしょうか。上半期の重大ニュースを5つの切り口から紐解きます。
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HUMAN MADEがアンダーカバー買収へ

NIGO(左)と高橋盾、盟友が再びタッグ
Image by: FASHIONSNAP
6月15日に、HUMAN MADEがアンダーカバーの全株式取得に向けた基本合意書を締結することを決議しました。株式取得が実行された場合、アンダーカバーは2028年1月期第1四半期からHUMAN MADEの連結子会社となります。「A BATHING APE®(ア ベイシング エイプ®」の創設者であるNIGO®と、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のデザイナー 高橋盾という、世界のストリートカルチャーに大きな影響を与えた伝説のショップ「ノーウェア(NOWHERE)」を生み出したふたりの再タッグに胸を熱くした往年の裏原宿ファンも少なくないはず。松沼礼 CEOを筆頭としたHUMAN MADEの経営陣と、高橋の唯一無二のクリエイションがどのような化学変化を起こすのでしょうか。
拡大するコンビニアパレル

ファミリーマートによる「コンビニエンスウェア」のヴィジュアル
Image by: ファミリーマート
2025年2月にNIGO®が「ファミリーマート」のクリエイティブディレクターに就任したことは大きな話題になりましたが、2026年に入ってもコンビニエンスストアが展開するファッションアイテムの人気は拡大を続けています。落合宏理がディレクションする「コンビニエンスウェア(Convenience Wear)」で先行するファミリーマートは、3月にシチズンと協業して初の腕時計を発売。5月にはリカバリーサンダルと機能Tシャツ、6月にはサコッシュと、扱う商品の幅を広げています。
これに対し、コンビニ業界の売り上げ首位を独走するセブン-イレブンは、「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」や「ニコアンド(niko and…)」などを運営するアパレル大手 アンドエスティHDと協業してアパレル商品の販売を9月から開始することを発表し、本格的な追撃の狼煙をあげました。
ファミリーマートと業界2位を争うローソンでは「コールマン(Coleman)」とコラボレーションした晴雨兼用折り畳み傘が大ヒット。「プティマイン(petit main)」と協業して実験販売を行った子ども服は好評のために全国発売を開始するなど、コンビニアパレルの可能性はまだまだ広がりそうです。
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明暗分かれるラグジュアリーブランド業績

マチュー・ブレイジーが手掛けたシャネル2026年春夏コレクション
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
有力ラグジュアリーブランドのディレクター職の大シャッフルはひと段落し、各ブランドが新体制のもとでコレクションを発表するなか、大きな話題になっているのが「シャネル(CHANEL)」です。5月に発表した2025年12月期の通期連結業績は、プレタポルテや新作バッグの好調が寄与し、前期の中国市場の不振による苦戦から回復。新たにアーティスティックディレクターに就任したマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)が打ち出したコレクションに対する評価は高く、デビューコレクションの先行発売日にはパリの店舗に行列ができるなど、滑り出しは極めて好調のようです。マチューのクリエイションが本格的に売り上げに反映される2026年12月期決算に注目が集まります。
その他のラグジュアリーグループの業績は、明暗が分かれています。プラダグループ(PRADA GROUP)は、2025年12月期も売上高が前期比8%増と好調を維持。主力の「ミュウミュウ(MIU MIU)」の売上高は同35%増と、破竹の勢いが続きます。ラルフ ローレン コーポレーション(Ralph Lauren Corporation)の2026年3月期の売上高は前年比15%増。アジアでの売上高が同比23%増と、業績をけん引しました。
一方で中東情勢の影響を受けて、苦境に陥っているラグジュアリーブランドも少なくありません。これまで好調を維持していたエルメス・インターナショナル(Hermes International SCA)の2026年1〜3月期は、中東を含むその他の地域での売り上げが前年同期比5.9%減。ケリング(Kering)は、以前から落ち込んでいた主力の「グッチ(GUCCI)」の苦戦が続いたことに加え、2026年1〜3月期の中東地域における売上高は同11%減と低迷。LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンの2026年1~3月期では、中東情勢の悪化が為替変動の影響を除いた成長率を約1%押し下げる要因となりました。まだ混迷が続く中東情勢は、今後もラグジュアリー需要に影響を与えそうです。
苦境に立つサステナブランド

AI事業へ方向転換した「オールバーズ」
Image by: FASHIONSNAP
2010年代には「サステナビリティ」や「透明性」をテーマに掲げたファッションブランドが多数誕生しましたが、その答え合わせとも言えるニュースがこの上半期に続けて飛び込んできました。2016年にサンフランシスコで創業し、自然由来の素材にこだわってサステナブルなものづくりを打ち出していたフットウェアブランド「オールバーズ(Allbirds)」が、今年4月に事業と資産を売却を発表。そのわずか2週間後にファッションとは全くの異業種となるAI事業への方向転換するとともに、社名を「ニューバードAI(NewBird AI)」に変更。さらに6月には「スマートバード(Smartbird)」に再変更しました。
また、「徹底した透明性」をコンセプトに掲げ、D2Cブランドとして2010年に創業した「エバーレーン(EVERLANE)」は、5月に「シーイン(SHEIN)」へ売却されました。サステナビリティを標榜してきたブランドが、ウルトラファストファッションの代表格であるシーインの傘下に入るという結末は、時代の皮肉を感じさせずにはいられません。この背景には、第二次トランプ政権によるサステナビリティに対するバックラッシュ(揺り戻し)の影響も指摘されますが、サステナビリティを掲げる多くのブランドが採っていた、D2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)というビジネスモデルの限界を指摘する声もあります。
しかし、エバーレーンを買収したシーインにも大きな逆風が吹き荒れています。フランスでは繊維産業の環境負荷を軽減することを目的とした「ウルトラファストファッション規制法」が6月29日に可決。ウルトラファストファッションブランドに対し、メディア広告の禁止や、商品1点ごとに事実上の罰則金となる環境貢献金の支払いが科せられることになりました。今夏のパリは猛暑によって1000人規模での死者が報道されるなど、気候変動の影響はますます深刻になっています。サステナビリティを組み込んだ、D2Cに代わる新しいビジネスモデルのブランドに期待がかかります。
アパレルを襲う原料高騰

「Tokyo Textile Scope 2027S/S」の東レのブース
Image by: FASHIONSNAP
中東情勢の緊迫化に伴う原油や石油化学製品の価格急騰は、原料費やエネルギー・物流費の増加を通じて繊維・ファッション業界にも大きな打撃を与えています。素材メーカー大手の東レは、5月に開催した2026年3月期の決算会見で「価格転嫁遅れによるコスト増などで、3月の1ヶ月だけで約20億円の損失が発生した」と発表。2027年3月期は繊維事業を中心に年間130億円の損失を見込んでいます。また、東レや帝人フロンティアは、4月出荷分からポリエステルやナイロン等の繊維・テキスタイル素材を15〜20%以上値上げする緊急措置を相次いで実施しました。帝人はコスト削減や在庫確保で影響最小化を模索しつつ、他社との事業統合による基盤強化を進めています。
川上での価格改定の影響は、川中・川下にももちろん波及。ファーストリテイリングは4月時点で、「2026年8月期中の影響は限定的」とコメントし、アンドエスティHDも4月に、「2027年2月期は5〜10%の原価上昇を見込みつつも、上昇分は経営努力で吸収する」としていましたが、不安定な中東情勢が長期化する中で、秋冬以降には値上げやむなしという可能性があります。
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